第100話
さて、食べ歩きも楽しんで、王都冒険者ギルドへやってきた。
建物は普段使っているツードンの冒険者ギルドより立派で、外まで喧騒が聞こえてくるくらいに活気がある。
「だぉーっ! ボク、参・上!」
アルトがそう言って冒険者ギルドの扉を蹴り開くようにして入ると、スッとギルドの喧騒が止んだ。
皆、小声になっている。
……やっぱりプレイヤーが話しやすいように静かになる仕様なんだろうな。
「アルト氏、なんか無茶苦茶触ってはいけないモノ扱いされてないっすか?」
「え? ギルドってこんなもんじゃねーかぉ?」
うん、アルトが怖がられているだけだね。分かってたよ、うん。
「いやマジで何したんだよアルト」
「フツーに冒険者登録して、フツーに依頼こなしただけだぉ? 屋台のトコもそうだけど、トリアと合流するために長居してなかったしぉ」
「その割に恐怖の象徴として刻み込まれてるじゃんかよ」
バシバシ、とアルトの背中を叩くと、周囲から小さな悲鳴が上がった。
なんだよドラゴンか何かの背中でも叩いたかのような反応しおってからに。
「あ、思い出したぉ! 確かこんな感じで絡んできたDランク冒険者をぶん殴ったんだぉ!」
「あー。冒険者ギルドのド定番、新人に絡んでくる自称ベテランのチンピラ冒険者ってやつか?」
「だぉだぉ。確か『アニキを呼びに行ってくるからな!』とか言って出て、そのアニキにボコボコにされて帰ってきて、勘弁してやってくださいって頭下げてきたんだぉね。アニキさんに」
「ふむふむ。それで寛大に許してやったと」
「だぉ、アニキぶん殴ってチャラにしてやったぉ!」
なるほど……どこもおかしくないな。
一体アルトの何が問題だったんだろうか?
「え? アルト氏、そのアニキさんをぶん殴ったんっすか?」
「そりゃそうだぉ? だってボクが徹底的にボコすはずだったチンピラをアニキがボコボコにした、すなわち横殴りだぉ?」
「だな。横殴りは良くないよな」
「いやそれ身内のケジメってやつじゃないっすかね?」
「それはそれでアニキが責任を取ってボクに殴られるのでチャラで正解だぉ?」
「そうだぞペンペン。身内のヌルい罰ごときで片がつくなら、極論強盗殺人犯も親にお尻叩かれたら許されちゃうって事だろ? 最低限、責任者が責任を取る。これが社会人の基本だぞ?」
「うーん、筋が通ってるような通ってないような……?」
うむむ? と首をかしげるペンペン。
むしろ責任者に一発ガツンだけで済ませてやったんなら大分優しいだろう。
「ま、とりあえず到着した報告をしようぜ。王族イベントなんだっけ?」
「あ、だぉね。おーいエルフさーん! ボクだぉ、アルトだぉー!」
「……アルト様、おかえりなさいませ。ご無事で何よりです」
あ、今一瞬だけ顔がひきつったけどすぐに戻ったな。プロだプロ。
「ところで、ツードンギルドからの連絡では依頼を受領してからアルト様だけ向かってこられたとのことでしたが」
「んぉ? 3人で指名依頼なんだから3人で来たんだけど、まずかったかぉ?」
「……そうですか。いえ、何も悪いことなどありませんですとも、はい」
ニッコリ笑うエルフさん。うーん。ベテラン。
「それでは依頼人の王族の方をお呼びするので、お手数ですが部屋でお待ちいただけますか? 特に何もすることが無いなら、待機時間のすきっぷ、が可能です。また、休むなり身なりを整えておくことをおススメします」
なんでも、職員が使えるシャワー室とかもあるらしい。
今回のように冒険者がお偉いさんと会う前に使わせたりするのも良くある話だそうな。
「お、じゃあ部屋で王族とやらが来るまでスキップするとするかぉ」
「だなー。さっさと話進めたいし。身なりは、まぁ整えとこうか。一応王族相手だし」
「っすね。特に理由もないしスキップするっす」
「王族の方がいらっしゃいました」
「お、早かったぉね!」
「だな!」
「体感一瞬だったっすねー。太陽の位置的には1時間経ってないっすよ」
尚、スキップ中にトリアちゃんが身体を綺麗にしておいてくれたのだろう、ちゃんと綺麗になっていた。
さて、そんじゃ依頼主の王族さん、そのご尊顔を拝むとしましょうかね。
(祝・百話!!!!!!)




