第98話
王都。そういうものがある。
あるらしい。
そして王都には王族、そして王様がいるらしく……
「……ええと、そういうわけで王族案件の依頼がありまして。王都ダンジョンの奥深くにあるダンジョンコアまでの護衛、となります」
「王族案件かぁ」
ツードンの冒険者ギルドで依頼の報告をしていると、そういう話があった。つまり指名依頼である。
しかし。
「SP依頼じゃないっすね。パスっす」
「だぉねー。今はボクらSP依頼しか受ける気ねぇぉ」
「……そうですかー。ええと、それでは気が向いたときにいつでもお声がけくださいね」
そう、それは別にSP依頼ではなく、普通の報酬の依頼だったのである。
じゃあいいか。今はSP依頼こなしたいもんな。と、そんな感じ。
「まぁメインシナリオっぽい依頼だから気が向いたら受けるかぉ」
「こういうのって受けるまでずっと残ってるからなぁ」
そう言うと、受付嬢さんが恐る恐ると小さく手を上げて「すみません、言い忘れていました」と口を開く。
「……あ、あのー。こちら、き、『期間限定いべんと』となっておりまして、受注できる期間には限りがあります」
「む!? 期間限定っすか!」
「流れ変わったな。話を聞こう」
「そうだぉね。ちなみにいつまでやらなくても大丈夫なやつだぉ?」
アルト、お前さては夏休みの宿題をギリギリまでやらなかったタイプだな?
「おいおいアルト。こういうのは依頼自体にどれくらい時間がかかるか分からないから、先に片づけておいた方が安心だろ?」
「……それもそうだぉね! 依頼自体の時間を忘れてたぉ!」
「というかそもそも王都ってトコへ行かないといけないんじゃないっすか?」
……確かに! スキップしても移動時間が日数経過にかかるこのゲームだと致命的なタイムロスだぞ!?
そもそも移動も行ったことのない場所だとまた馬車に揺られて行かないといかないわけで。
「ええと。王都フリレーンという場所がありまして」
「あ、それなら場所分かるぉ。ボクがファストトラベル使えるぉ」
「お、よかった。そんなら移動は一瞬だな。……体感では」
「ファストトラベルでも時間経過はするっすからねー。要注意要注意」
ゲーム内時間の時間経過はどのくらいだろう。
「あ、なんならボクだけでいってくるぉ。ホームとったし、連結できるぉ!」
「お、そりゃいい、じゃあその間こっちはそのほかの依頼を適当にオートモードで片しておくか」
「時空の乱れがあるっすからねぇ。その間の稼ぎは山分けっすよー」
「ぉっぉっぉ、助かるぉ。んじゃ、状況開始だぉ――」
「――はい、リザルトだぉー! ホーム連結してファストトラベル完了だぉ!」
「えーっと? 時間経過は1カ月、収入は金貨120枚か。一人頭金貨40枚ね」
「あ。ペンペンミルクの分も分けるっすか?」
「そっちはいいよ、牧場のパッシブ収入だしそれを分けるのは筋違いってなもんだ」
というわけで、無事状況が整った。
いやー、体感一瞬!
ちなみにSP依頼についてはリアル時間に準拠しているようで、ゲーム内で1カ月スキップしても復活しないが1日経過すれば復活する。と、ペンペンの怒涛のSP依頼ラッシュで判明した。
尚、そのペンペンの1日が俺らにとっては3時間だったのはいつもの話である。
……もう頭こんがらがり過ぎるので考えない方が良いな。
「でもなんもしないのも悪いっすから、ここは『美味しいステーキ』をおすそ分けっす! あ、もちゲーム内の方っすけど」
「ぐほぉ!? ペンペン氏、ボクらの好感度を上げてどうしようってんだぉ!?」
「そうだそうだ! ペンペンの好感度はもはや天上天下唯我独尊だぞ!?」
「え、いらないっすか?」
「いるに決まってるぉ!!」
「そうだぞ、抗えるかよッ! ありがとうございますっ!」
「っすよねー」
と、譲渡されたステーキを大事にインベントリに仕舞っておく。
あとでゆっくり食べよう! わーい!
「いやー、プレイヤーの好感度はステータスに表示されないマスクデータっすからねぇ。上げといて損はないっすよー」
「じゃせめてこの金貨120枚は全部ペンペン氏のってコトでいいかぉ?」
「そうだな。SPアイテムとゲーム内通貨だとこっちが貰いすぎなくらいだけど、せめてな」
「お、そんなら頂くっす。牧場も拡張できそうっすねぇ!」
そういうことになった。
さーて、そんじゃ準備も整ったし、期間限定イベントの王族依頼ってやつをやってやろうじゃんかね!




