第94話
マハリクさんにもSP依頼が出ていたので、トリアちゃんで同行することにした。
アルトはアルトちゃん操作だ。護衛するぞーい。
依頼内容をみるに、なんでも盗賊の討伐及び依頼人の娘の救助らしい。
また盗賊か……そして今度は場所を探すところからだった。
「山ってことは、植物に話を聞くロクちゃんの出番だぉね?」
「そうだな! 早速活躍しそうだぜ」
「ふむ。では試しにそこの若木に話を聞いてみましょうか。ロクちゃん」
「はい、かしこまりましたマハリク様」
丁度そこは襲撃のあった現場だった。であれば、目撃者ならぬ目撃植物が生えている。
背丈ほどの木に話しかけるロクちゃん。
「もしもし、ここらで人間が襲われたのを見ていませんか? どちらへ行ったかとか」
『……』
「ふむふむ」
「ロクちゃん、なんて言って――」
げし!! と、まだ細い幹をロクちゃんは蹴りつけた。
そして、葉っぱをつまんで軽く枝を引っ張る。
「交渉できる立場だと思っているんですか? 正直に話さなければ葉を一枚一枚毟っていきますからね?」
『……!……!』
「ええ、最初から眠たい事を言わず、協力的に話せばよかったのです」
そう言ってロクちゃんはつまんだ葉っぱから指を放した。
「……葉を毟るのって、爪剥ぎに相当する拷問ってことかな」
「植物って痛みあるんかぉ?」
「ありますよ、プラプラした抜ける寸前の歯を抜くときくらいのショックが。ただ、それ以上に『食料が減る』のがキツイんです」
食料が減る。確かに言われてみれば植物は光合成。根っこで栄養を吸い上げる他、光合成によるエネルギー生成も大事だという。
「なるほど。『お前の収入10%カットな』を強制するようなもんかぉ」
「ええ。これが効かなかったら次は枝を折り、そして幹を切ります。お前の一族でログハウス作ってやろうか、というのは素晴らしい脅し文句になりますね」
「植物の価値観……いや擬人化で考えると怖いな」
「確かにアレだぉねー。植物がログハウスみたら整列した死体の山かぉ」
「ふふ、というわけで快く情報を教えていただけました。痕跡を隠しつつ、あちらの方に行ったそうです」
「でかしたわロクちゃん」
マハリクさんが頭を撫でると、ロクちゃんは「えへへ」と笑った。
ロクちゃんだけアウトローモード続行してらっしゃる?
「……一応、情報報酬として植物栄養剤を少し上げときましょうか」
「そんなもったいない! あいつら自然に生きてるんだから現状で十分なんですよ!」
「正当な対価は払うべきよ。それが優れた商売人の心得なの」
「! 差し出がましいことを言って申し訳ありません!」
あ、好感度上がったな。
そしてマハリクさんが「脅しちゃってごめんなさいね」と根本に栄養剤を垂らしていた。
俺知ってる。これ良い警官悪い警官ってやつだ。コンビの片方が悪役することで味方役に情報提供してもらいやすくするメソッド。
これを見ていたほかの植物たちは、間違いなくマハリクさんの質問に答えやすくなっただろう。報酬も貰えるみたいだし。
「……ちなみに選択肢3はなんでしたかぉ?」
「『あなたのケツに栄養剤ブチ込んであげるから這いつくばりなさい』だったわ」
「ぉっぉっぉ、好感度爆上がり選択肢しか残ってなさそうですぉね!」
「これで上がったらもはや狂信者レベルじゃないかしら。ねぇトリア?」
「今更だけど、精霊憑きの子みんなそんな感じじゃね?」
ミーティちゃんとか間違いなく上がるよね。俺はエロスキップで見れないだろうけど。
その後2、3本の木に情報を確認して盗賊の住処を発見。
寝静まるまでスキップし、痺れ火炎瓶で殲滅した。
今回は毒ではなく麻痺なので捕虜が居ようと関係なく、洞窟内の殲滅が済んでから無事救助もした。依頼主の娘さんも確保だ。
今回の火炎瓶はミーティちゃん作である。俺もクラフト経験値積んでるんだぜ……!
「そういや。盗賊マスターんときもこれで良かったんじゃ?」
「あの時は拠点が大きかったから救助の探索が面倒だったのよね。あと痺れ火炎瓶の方が高いじゃない?」
なるほど。
なんにせよ、簡単なお仕事でSP依頼は片付いた。
俺達も協力者として1ポイント貰えた。
……なんもしてねぇのに貰っていいのかな? と思ったが、マハリクさんが「護衛は戦闘が無い場合でも同行しているだけで仕事を果たしているでしょう?」とのことなので、遠慮なく貰った。
うーん、報酬をちゃんと分配するの好感度上がるわぁ。
「良い雇い主だなぁ」
「ぉっぉっぉ、普段も割と無茶聞いてくれるいい上司だぉ」
「アルトはもっと自重というものを……いえ、あなたはそれが持ち味だから、存分に生かす場を整えるのが上司の仕事よね。はぁ」
苦労してそうだなぁリアルのマハリクさん。がんばえー。




