第83話
盗賊マスター。それがマハリクさんが目星をつけた敵だった。
盗賊マスターは山中に拠点を備えており、そこはちょっとした村になっているほどで。
以前サンちゃんが盗賊になって働いていたのも、この村に潜入するために実績を積んでいるところだったという。
なにせ頭にハイロゥがあり『何でも屋』の一員として知られていて警戒もされていたのだ。
しかし今の『何でも屋』は名声もさることながら、悪名が非常に高い。
ましてや実質スリアドにおける盗賊の支援者といってもいい。
このため、盗賊マスターの拠点にあっさりと潜入することが叶ったのである。
とはいえフルメンバーでは入れない。俺とマハリクさんだけだ。
俺は今回トリアちゃんを操作中。
他の面々は外から狙撃ポジションについている。
社員の面々はハンドガンなのでメイン狙撃手はアルトだけど。
「っていうか盗賊マスターってあからさまな名前だなぁ」
「さすがに本名じゃないわよ、通り名ね」
「そりゃそうだろうけども」
本名で盗賊とかマスターとか言ってたら頭おかしいって。
「……マッチポンプで盗賊を削っているのはコイツら的にどうなんだろう?」
「悪名値は上がってるから、お仲間判定じゃない?」
「なんてあくどい社長なんだ……」
ま、それはさておき盗賊マスターの拠点である。
洞窟が中心にあり、その入り口から展開して村ができていた。おそらく洞窟が最初に拠点としてあり、そこから人が集まって発展していったのだろう。
洞窟はともかく周囲は木の塀や木造建築だ。ちゃんと木材の板に加工されているあたり、そういう技能持ちが居るか、木材を仕入れたか。
……ちゃんとした建物だし、大工が居る方かな?
「いやフツーにゲームだし整った建物で当り前じゃないの。わざわざプリセットの小屋とかあるのを崩す必要ないでしょう? むしろ崩す方が手間よ」
「それもそうか」
あらかじめちゃんとできてるセットを崩すほうがデザイン的に手間か。
つまり……このご丁寧な村はむしろゲーム的には手抜きの産物!
それほど重要じゃない単発イベントの証!
実は盗賊マスター、強くないな!? 見切ったぜ!!
……
いやまぁ、ミーティちゃんやマハリクさんも戦闘職じゃないから強くはない方ではあるんだけどね。
ミーティちゃんも奇襲や不意打ちなら得意だけど、それは相手もそうだろうし。盗賊だから。
そして俺達がこの拠点に何をしにやってきたかというと、まぁ普通に取引なわけだが……
その商材は、人間である。
俺が運んでいる木箱に、注文の「メス奴隷1人」が入っているのだ。
そう、ここの盗賊共、女に飢えているのだ。
この拠点に女は居ない。なぜかって? そりゃあ……なんでだろう?
「女は盗賊にならないように手厚くサポートしておいたのよ。というか、盗賊になってもこいつらに飼われる未来しかないから職を斡旋とかしておいたの」
そして商人も女商人はこの地域に近づかないようにしていたらしい、ギルドにも徹底させて。
だからこそ、怪しい立場であるサンちゃんが盗賊として潜り込めたし、俺達を襲った盗賊も男だらけだったというわけだ。
……俺達、その通知? 知らなかったけど?
あ、俺達は商人扱いじゃなくてそもそも商人ギルドで忠告とか聞いてないか。
尚、当然ながら俺達にもいやらしい視線が投げかけられている。拠点入口の身体検査ではぽんぽん触られていた。……マハリクさんだけ。
俺? チラッと見られてハァとため息で「通っていいぞ」だった。
は? 貧乳は希少価値なんだが? お前らこの良さが分からんのか。
いいもんね、トリアちゃんの可愛いボディがお前らに触られなくてむしろ良かったよ! けっ!!
盗賊の視線を浴びつつ、俺達は盗賊マスターの拠点の中核、洞窟へと案内された。
「『荷物』を届けに来たわよ」
「……ああ、待ってたぞ!」
「ちなみに私達に手を出したら、二度と女は手に入らないと思いなさい?」
「わ、分かってる。お前らには手を出さない」
戦闘タイプではないマハリクさんだが、ステータスは当然一般人を越えている。
それだけでなく、マハリクさんには素の戦闘力・格闘技技能があった。下手に手を出せば痛い目に合い、そして死ぬだろう。
「それで荷物は?」
「可愛い猫獣人が手に入ったの。ゴー、見せてあげなさい」
「あいよ」
トリア改めゴーですよっと。と、箱をあけて中身を見せる。そこには猫獣人のミーティちゃんが猿轡を噛んで、怯えた瞳で震えていた。
また、その胸は不自然なほどにおっぱいであった。
事前にペンペンに作ってもらった偽乳を装備……ではなく、食べて学習しておっぱいを出せるようになったのだ。
これには満足そうに、ニンマリといやらしい下品な笑みを浮かべる盗賊。
「うん、これなら盗賊マスター様にもご満足いただけるだろう」
「じゃ、通るわね」
そして俺達は盗賊マスターのいる洞窟へと、囮を連れて入り込んだ。




