第82話
スリアドの町は、日に日に治安が悪くなっていった。
理由は明白だ、『何でも屋』がそう動いて荒稼ぎしているから。
町には入れないような悪人達に物資を流し、武器も売り、「仕事」をさせて横から殴って奪い取る。
盗賊たちを倒したらその持ち物は討伐者の物、というルールを積極的に悪用する悪行のマッチポンプ。
「ていうか普通に犯罪幇助罪でつかまるヤツじゃないかぉ?」
「あら。私達も襲われて物資を奪われているのよ」
「なるほどっす、道中でたまたま落ちてるお金を拾えて運が良いだけっすか」
「うふふ、そういう事。ペンペンちゃんごめんなさいね、作ってもらった剣も取り返すたびに奪われちゃって」
犯罪の片棒を担がされているなぁ俺ら。
ちなみにペンペンが作ったのは『斬コンニャク剣』というアイテム。
見た目は宝石が飾られていていかにも強そうな宝剣だが、攻撃力は最低レベルの詐欺装備でコンニャクしか切れない。剣術練習用の武器で、こん棒で殴る方が痛いというむしろ盗賊達の戦力を削ぐ品だ。
……ただ、脅しに使う分には十分有効ではある。
そしてこの『斬コンニャク剣』には失せ物通知魔術を付与しており、GPS機能のようにマップ上にアイテムを示す点表示されるため、アジトの位置もバレバレになるのである。
「まー、それはいいんすけど、実際使える剣も流してるっすよね?」
「ええ、使える剣も無いと怪しすぎるし」
「被害者には悪い事してるっすねぇ」
「そうねぇ。さすがに悪いから、盗賊収益の半分はギルドを通して返還してるほどよ」
ギルドは買収済み、と。なるほどー。
「ぉっぉっぉ。この町がモヒカン肩パットの巣窟になる日も遠くなさそうだぉね」
「紙幣をぶちまけて『ケツを拭く紙にもなりゃしねぇ!』っていうヤツね」
「生憎この世界に紙幣はないですぉね。……あ。ちなみにマハリクさんは荒稼ぎした大量のお金をどこに仕舞ってますかぉ?」
「え、メニューに現在の所持金額が表示されてるけど?」
銀行等に預けず、貨幣を個人で溜め込んでいる、と。
流通する貨幣が減って商売もやりにくくなりそうだなぁ。
「なぜか盗賊も尽きないから、もうしばらく回せそうよね」
「そりゃ治安が……うん、スリアドの町の人、ホントご愁傷様だぉね」
「あんまり治安悪くなってお気に入りのラーメン屋が潰れても困るし、もう少しだけにするわよ。ええ」
うーん、悪の組織だなぁ『何でも屋』。討伐依頼とか出されてもおかしくないね。
というか。そう、というかね。
「マハリクさん。実は俺達『スリアドの危機を救え』ってミッションが表示されてるんだけど」
「……それ、私達が悪の黒幕なのかしらね? 私達を討伐する気?」
「状況からして、他に考えられないというかね? いや、なんか盗賊を統べるボスとかいれば別なんだけどさ」
そんな都合のいい存在、そうそういないだろう。現実には。
つまり、俺達の討伐対象は――
「そいつの居場所なら把握してるわ。……ミッションなら仕方ない、稼ぎを切り上げて協力しましょう」
あ、ゲームだったわ。
よかった。悪に落ちた精霊を討つ系のシナリオじゃなかったっぽい。
「マハリクさん。そいつの討伐が『2人目』の鍵になってる可能性は無茶苦茶高いぉ?」
「やっぱり? でも戦闘力に不安があって手が出せなかったのよね。ほら、ウチの面子って個々の火力は低いから」
「マハリクさんの腕前なら、それでも討伐できるんじゃないですかぉ」
「……誰かを犠牲にするならね」
正直もっと後々に挑むコンテンツだと認識していたらしい。
なるほど、1つの町にずっといると、そいつがラスボスに見えるもんな。ウチも別の町に繰り出していなかったら大亀が因縁のラスボスだと思って、まだ討伐は先延ばしにしてたかも。
「自分たちの力だけで倒すべき相手だと思ってたけど、そっちにもミッションが出てるなら協力してもらっても問題ないってことでしょうし……ぶっちゃけミーティちゃんが囮してくれるなら勝ち確よ」
「もちろん協力しよう」
「助かるわ。囮ごと打ち殺す作戦があったんだけど、ミーティちゃんなら死なないわよね?」
本体が無事なら分身は消滅しても体積が削れるだけで、パラメータは何事もなく本体に戻る。
うーん、囮として最適すぎるなぁミーティちゃん。
やっぱりスライムって育つと最強なんだよね。




