第三十八話 複雑な思い
ソイルドラゴンと名乗ったレイラ。
レイラは一行の間を進み、
ラヒトの前まで来るとソラ達と向き合った。
テツと対峙する形となる。
ラヒト「レ、レイラ様…」
レイラ「私の部下が失礼をした詫びよう」
テツ「仲間が傷付けられたんだ、それ相応の報いは受けてもらうぜ」
レイラ「まぁ待て、スカイドラゴン様は生きている。そこのソラの両親かはわからんがな」
ソラ「え」
ソラが顔を上げる。
テツ「生きてる?そっちの野郎が滅んだって言ったばかりじゃねぇか」
ラヒト「生きておられる?」
レイラ「この者たちにも話してなかったのだ、どこから情報が洩れるか分からんからな。現にペラペラと考えなしに喋ったお陰で、お前たちの怒りを買っている始末だしな」
レイラはそう言いながらラヒトを睨む。
ラヒト「ひっすいません」
レイラ「そして我々は、フレアドラゴン家の支配からアルカディアを奪還する事を目的にしている。その為にスカイドラゴン様達をお守りもしている。これは一部しか知らない事だ。」
ソラ「ど、どこに居るんですか?」
レイラ「とある土地にて、龍人ではなく、天空人として暮らしておられる」
ソラ「そ、そうなんだ。父さん母さんだと、いいな…」
レイラ「ソラ殿、その節は失礼した。改めてスカイドラゴン様とお見受けするが、何か証拠というか、所縁所縁の物はお持ちか?」
テツ「ソラ殿?随分態度が変わったな」
レイラ「当然だ、スカイドラゴン家は序列一位、我がソイルドラゴン家は序列四位だからな。地上では、その、引っ込みがつかなくなった。すまん!」
テツ「すまんて…」
サキオ「ずこーって感じでやんすね」
レイラ「して?ソラ殿、何かお持ちか?」
ソラ「所縁の物か…」
にゃん吉「ソラ、腕輪を出すのじゃ」
ソラ「あ、そっか」
ソラは腕輪を取り出してレイラに渡した。
レイラ「これは、」
にゃん吉「アルカディアから落ちてきた時に、ソラが身につけていたの物じゃ」
レイラ「この紋章は、半分擦れてしまってるが、この紋章はスカイドラゴン家の物のようで間違いなさそうだ。しかし、持ち主の名前が違うぞ」
ソラ「あ、それあたしの名前なんです。ほんとはっていうか、龍人の時はソフィアっていいます。あ、今は龍人か、へへ」
にゃん吉「わしがソラと名付け、育てたのじゃ」
レイラ「そうか、ところでお主は?」
にゃん吉「あぁ、そうじゃったな、わしもお主とはあの時に会っておる、あの時の猫がわしじゃ」
レイラ「猫が!?」
ソラ「爺ちゃんは白虎なんです。やっと変化出来るようになって…」
………………………………
ソラ達は、レイラの案内の元、
スカイドラゴン達が隠れ住んでいると言う集落に向かっていた。
レイラとソラは、
フードの付いた外套を纏って、
フードを深く被り、龍人の特徴的な髪を隠して歩いている。
ソラ「なんか、ドキドキしてきたね」
ティア「ふふふ、ご両親だと良いですね」
サキオ「お、お父様とお母様に会ったら、な、なんて挨拶したら良いでやんすかね?」
オト「わはは!お前そりゃ妄想が暴走してるぞ」
テツ「ははは!うまい事言うな」
サキオ「うるさいでやんすよ!」
にゃん吉「まだ両親と決まった訳ではないぞ」
シロ「我が番よ」
にゃん吉「ん?」
シロ「もうそうとは何だ?何かの草か?」
レイラ「お前達はいつもこんな風にふざけているのか?」
サキオ「ふざけてないでやんすよ!」
ソラ「あっははは!」
ティア「ふふふふ」
夜。廃墟を利用して野営する事にした一行。
テツ、オト、キノ、ティアは既に休んでいる。
残った者達は火を囲み静かに話しをしていた。
サキオ「ソラさん、もしお父様お母様に会えたら、どうするでやんすか?」
ソラは両親に会う為にここまでやって来た。
田舎村から旅立ち、
街を行き、
王都を経て、大森林を渡り、
やっと辿り着いたアルカディア。
それもこれも全て両親に会う為。
両親に会う。
ではその先どうするのか?
ソラにはそんな考えは無かった。
ソラ「そっか、そうだよね、ソラ考えてなかったよ、どうしよ」
にゃん吉「アルカディアを出るも良し、ここで暮らすも良し、と、思っとったが、今のアルカディアの現場を考えるとじゃなぁ」
レイラ「ソラ殿、出来れば我々と行動を共にしてもらいたい」
にゃん吉「それはつまり、一緒に戦うという事じゃろ。こんな年端も行かぬ子供に何を求めておる」
レイラ「それは…」
サキオ「あっしはずっとソラさんと居たいでやんすけど、多分無理でやんすよね…へへへ」
サキオは、照れたような困ったような表情で笑った。
ソラ「ソラ分かんないよ。これから会う人がお父さんお母さんかどうか分からないけど、そうだとしても、会って何話したら良いかも分かんないし、ここが大変なのも分かるけどさ、ソラがどうこう出来るもんじゃないしさ」
レイラ「これから会ってもらうスカイドラゴン様達は、スカイドラゴン家の最後の生き残りなのです。もちろんソラ殿もその一人なのですが、我らの悲願は、スカイドラゴン家が再びアルカディアの頂点に立って頂く事なのです。」
サキオ「それは、序列が関係してるからでやんすか?」
レイラ「そうだ」
サキオ「あっしらは、悪いでやんすけど、そんなのはどうでも良いでやんす」
レイラ「なんだと!!貴様!!この10年我々がどんな想いで来たか知らぬ癖に…!!」
にゃん吉「ではお主はソラが10年間、どんな気持ちじゃったか分かるのか!」
レイラ「うっそれは…」
サキオ「あっしが言いたかったのは、スカイドラゴンがどうとか、序列がどうとかじゃなくて、レイラさん、あんたが統治したら良いんじゃないでやんすか?って事でやんすよ。序列に拘る意味がわかんねぇでやんす」
ソラ「ソラも序列なんて分かんないな。出来る人がやれば良いじゃんって思う」
レイラ「そ、そんな簡単に行けばこんな苦労は…」
ティア「よろしいですか?」
ソラ「あ、ティア。起きちゃったの?」
ティア「ふふふ、もともと睡眠は長く取らなくて大丈夫なのです」
レイラ「あなたは、その、ハイエルフ…」
ティア「そうです、私はハイエルフのティア」
ソラ「ティアはさぁ、どう思う?」
ティア「さぁ?分かりません、ふふ。でも、先ずは会ってみないとですね。ソラの両親だったら、一緒に暮らしたいと思うでしょうし、違っていたらまた探せば良い。それだけです」
レイラ「しかしそれでは…」
ティア「あなたの希望は叶えられないですか?私はそうは思いません。これから先、選択肢はいくらでもあります。先ずは行動して選択する。その繰り返しです。今ここで決められる事ではないですよね。」
ティアは優しく微笑んだ。
ソラ「それもそっか。あー早く会いたいなぁ」
サキオ「さすがはティアさんでやんすね」
レイラ「……」
ティア「ふふふ、私は何もしてないですよ」
夜は更けていく……




