第三十五話 新たな仲間、そして出発
エルフの里に滞在して一週間が経つ。
サキオは2、3日で回復すると言われていたが、
翌日にはすっかり元気になっていた。
では何故一週間いたのか。
エルフ達がソラを歓迎して、
思わぬ居心地の良さに長居してしまったのだが、
もうひとつの理由として、
ハイエルフのティアともソラは仲良くなり、
長めの滞在となっていた。
その間一行は大広間で寝泊まりして過ごしていた。
テツ「まぁ何はともあれ、明日出発かぁ」
サキオ「いよいよでやんすね」
オト「それにしても、エルフの歓迎っぷりと来たらなかったな」
ソラ「ほんとだよぉ昔一族がキノッピーから助けられたって言うけど、助けたのソラじゃないもん」
にゃん吉「それにしても龍人が崇められる理由が、獣族と同じ理由じゃったとはのぉ」
ソラ「しかもそれいつの話よって感じ。」
にゃん吉「まだ龍人が地上にいる頃の話し、ほとんど神話じゃな。」
サキオ「ソラさん神格化されてるでやんすね」
テツ「龍人は龍神だったってか?はははは!」
ソラ「テツうるさい」
「ふふふ、みなさん楽しそうですね」
ソラ「あ!ティア!」
テツ「おお、こりゃハイエルフの嬢ちゃん」
ソラ「テツ!!」
サキオ「さすがに失礼でやんすよ」
テツ「あ、あぁ、つい、すまん」
ティア「ふふふ、良いですよ」
ソラ「どうしたの?わざわざ部屋から出てくるなんて」
ティア「みなさんにお願いがあって来ました」
にゃん吉「お願いとは?」
ティア「私も一緒に行きたいのです、必ずお役に立ちますよ」
ソラ「ほんと!?いーの??ソラは大歓迎だよ!」
サキオ「それは、大丈夫でやんすか?」
ソラ「何が?」
サキオ「だって、ハイエルフと言えば、ここの守り神的な存在とかじゃないでやんすか?」
ソラ「え?そうなの?」
ティア「いいえ、違いますよ。ただの居候です」
「「「「へ??」」」」
シロ「いそうろうとはなんだ?美味そうには思えんが」
……………………………………
ティア曰く。
ハイエルフは恐らく世界でも数人。
かなり希少種なのだそうだ。
なのでハイエルフの集落があるわけもなく、
行くところも無いので、
エルフ達の世話になっているとの事だった。
テツ「そんな理由なのに、随分大切にされてるんだな。希少種族だからか?」
ティア「それもありますが、私達ハイエルフはオドの流れを感じマナを操る、古代魔法が扱えるからです」
「「「「古代魔法?」」」」
ティア「お見せするのが早いですね」
そう言うとティアは右手を顔の高さまで上げて、
人差し指を立てた。
ポッと人差し指の先に小さな光が生まれる。
「「「「おお…」」」」
にゃん吉「無詠唱か…!!」
光の玉は大きく横に広がり、
直径5センチ程の円盤が出来た。
ティアは弾くように人差し指を前に倒した。
すると円盤は高速で移動し、
先にある木の枝をスパっと切ってしまった。
ソラ「凄〜い」
キノ「光魔法かい」
ティア「はい、そうです」
サキオ「そうか、ティアさんはハイエルフだから、光魔法が使えるでやんすね。たしかダークエルフが闇魔法使えるでやんすよね」
ティア「お詳しいのですね。その通りです。私は光の他に、時間逆行も扱えます。ただし制限もあるのですけどね。きっとお役に立ちます。どうか連れて行ってください」
テツ「理由聞いても良いか?」
ティア「お役に立ちたい。だけじゃダメですか?」
テツ「ダメってわけじゃないけど、下手したら命懸けになると思うぞ」
ティア「そうですね。正直に言いますと、退屈していたのです。毎日本を読んで過ごしたりしてましたが、日々退屈で仕方ありませんでした。それに私もアルカディアを見てみたい。長く生きてきて、それなりに物事を知ってはいますが、アルカディアの事を私は何も知りません。ですので、私は知りたい。あとはこれでしょうか」
ティアはアベラ・ペリティアの手帳を取り出した。
手帳の持ち主がティアの友人だったと聞いたソラが、
自分が持っていても仕方ないので、
友人であるティアが持ってた方が相応しいと、
そう言ってティアに譲っていたのだった。
ティア「この友人の手帳を譲って頂いたお礼もしたいですし、役に立ちたいと言うのも、嘘ではありませんよ」
にゃん吉「ふむ、わしに異論はないが……」
ソラ「もちろんだよ!」
サキオ「ソラさんに賛成でやんす」
シロ「我も我が番に従うぞ」
テツ「退屈って辛いよな。まぁ多数決成立だ!」
………………………………
翌朝、新たにティアを加えた一行は、
エルフ達との別れを済ませ、
聖域の中央、聖杯の形のモニュメントの前に来ていた。
ソラ「ここがもう世界樹なんでしょ?」
ティア「そうです」
テツ「木なんてどこにも無いけどなぁ」
キノ「どうやらこの遺跡の構造に仕掛けがあるみたいだねぇ」
ティア「ふふふ、さすが彼の国のお姫様ですね」
オト「!!おまっティアさん、知ってたのか?!」
ティア「ふふふ、分かりますよ。」
キノ「まぁいずれ話そうとは思ってるさね。今はその時じゃないねぇ」
サキオ「そうでやんすね、あっしらは姉さんに任せるでやんすよ」
シロ「ところで、いつ木は生えるのだ?」
ソラ「そうだよねぇ、上にアルカディアも無いし…」
ティア「アルカディアが見えなくても、行けるようになってますのよ。では、そろそろ行きますね」
ティアは聖杯のモニュメントに手を翳す。
ぽおっと手のひらから光が漏れる
するとどうだろう、
石のモニュメントが見る見る金色のモニュメントに変化し始めた。
ヒューッと風が舞う。
ティアの手の光がどんどん強くなる。
ついに石のモニュメントは、
黄金に輝く聖杯となった。
ティアの手から光が消え、
ティアは手を下ろした。
すると黄金の聖杯から光の柱が上空高く上がる
ソラ「凄い…」
ソラが思わず呟く。
光は上空だけではなく、
地面の溝にも、
聖杯を起点として光が走る。
光は遺跡の溝をどんどん駆け抜け、
全ての溝を埋め尽くした。
テツ「こいつぁ」
サキオ「でっかい魔法陣でやんすよ」
オト「気づかなかったぜ」
巨大な魔法陣は輝く。
そして次の段階が現れた。
半透明のガラスのような、ゼリーのような物が魔法陣から現れる。
それはキラキラと太陽の光を反射させ、
どんどん魔法陣から上空へと勢いよく伸びてゆく。
にゃん「こ、これは!?」
テツ「木だ!透明な木だ!!」
美しく光る半透明のそれは止まる事なく上空へと伸びてゆく。
それはまさに、
半透明の大木だった。
ソラ「これが…これが世界樹…」
やっと、見つけた。
これで父さん母さんの所に行ける。
ソフィア…
上をまっすぐに見つめるソラの目から、
一筋の涙が流れた。
半透明の大木は、永遠に続くかの如く、
長い時間伸び続けた。
そして、終わりの時が訪れる。
ゆっくりとゆっくりと動きを止めて、
頂上がとっくに見えなくなっている大木は、
完全に伸びる事を止めた。
聖杯の光、巨大魔法陣の光、
太陽の光、三つの光を浴びて、
その世界樹は美しく、神々しくそこにあった。
ティア「では、みなさん行きましょう」
ソラ「うん!行こう!アルカディアへ!」
第二部 エイワの大森林編 完




