第三十四話 伝承
昔昔、はるか昔
神々と人々との境界が曖昧だっ頃のお話し。
神々は人間を寵愛し、
人々もまた神々を敬い、
畏怖し、
感謝し暮らしてました。
そんなある時、
龍の神が人間の娘に恋をします。
龍の神は許されぬ恋と知りながらも、
娘に想いを募らせていったのです。
娘もまた、時が経つにつれ、
次第に龍の神に惹かれていきました。
やがて2人は強く結ばれる事を願うようになります。
しかし、そんな2人を、
他の神に見咎められてしまいます。
神々は人と神が交わる事に反対します。
しかし愛し合う2人には、
そんな声は届きませんでした。
そしてとうとう神々が折れてしまいます。
ただし、神々は一つだけある条件を2人に約束させます。
龍の神が住んでいる地アルケアーディアとその周りのオウロス山脈、そこから今後、未来永劫出てはいけないと。
龍の神と娘はそれでお互いに結ばれるならばと、
固く誓いを立てるのでした。
やがて二人の間には5人の子供が産まれます。
子供達は上から、空、炎、風、土、氷と名付けられました。
龍の神と人との間に産まれたその者たちは人間とはかけ離れた力を持っていました。
人々は彼らを龍人と呼び、神々の次に神格化し、
敬い尊び崇めたのでした。
やがて時は流れ、
5人の龍人達にも子が授かるようになります。
5人はそれぞれに巣立ち、
スカイドラゴン家
フレアドラゴン家
ウインドドラゴン家
ソイルドラゴン家
アイスドラゴン家
と、それぞれに名乗り、子孫を増やしていく事になります。
長い長い年月が経ちました。
龍人達はオウロス山脈から外に出る事は硬く禁じられていましたが、
長い間に固く誓われた約束は、
遠い記憶、遠い伝承のような存在となっていました。
そしてその約束は、やがて破られる事になります。
ある時、とうとう外に出る龍人が現れてしまったのです。
フレアドラゴンとアイスドラゴンの系譜の者達でした。
他の系譜の者達は、それを止めようとしましたが、
一度欠壊した水が止まらぬように、
フレアドラゴン、アイスドラゴンの系譜の龍人達は、
次々と外に流れ出して行ったのです。
そしてその龍人達は、住む場所を求め、
ついには人間達を蹂躙しだしました。
その時の龍人達は、それはそれは恐ろしい者達でした。
龍人達は、人間が自分達よりも遥かに弱い種族だと知ると、更に周辺を脅かしました。
神々との約束を破ったばかりか、
神々が寵愛する人間を脅かす。
そんな存在となった龍人は、
当然神々の怒りを買います。
約束を守れなかった龍の神は永遠に封印され、
血筋関係なく、全ての龍人達には呪いがかけられました。
その呪いとは、
オウロスから出た龍人は、
人間と同じ姿、
同じ能力になるという呪いです。
神々はこれで良しとしました。
今後はこれで人間達は、
龍人にも負けない力で、
自ら太刀打ちできるだろうと考えたからです。
しかし、大地の神エザフォスだけは、それだけでは許しませんでした。
龍人達の住む、アルケアーディアとオウロスごと、大地から追放したのです。
『そんなに外に出たくば、出れば良い。但し二度と大地を踏めると思うな』
こうしてアルケアーディアとオウロスは、
それ以来大空を彷徨える大陸となってしまったのです。
しかし、慈悲深い神、空の神ウラノスは嘆きました。
ウラノスは龍人も大好きだったのです。
人間と龍人が仲良くできる事を、
密かに願っていたのです。
ウラノスはこっそりと木を植える事にしました。
いつか、人間と龍人の架け橋になるようにと、世界樹という木を植えたのでした。
そして、その後、
神々は第二の龍の神が現れるとも限らないと思うようになり、
人間達の側から離れ、見守る事にしました。
こうして龍人達から人々は救われる事になりましたが、
同時に神々との交流も無くなったのでした。
…………………………
ティア「これが、私が知る伝承です」
にゃん吉「何と…」
ソラ「じ、じゃぁさ、悪いのはフレアドラゴンとアイスドラゴンって事だよね?」
ティア「そう言う事になりますね」
ソラ「爺ちゃんこれ!」
ソラはアベラ・ペリティアの手帳を取り出し、
あるページを開く
"私は龍人と出会った"
"噂に聞く龍人は、とても穏やかで……思ったが……結論として、お伽話とは全く違う……心優しい種族で……"
ソラ「コレって、スカイドラゴン達って事だよね?」
にゃん吉「そうなるな」
ソラ「この人は、もしかしたらソラの父さん母さんと会ったのかな?」
ティア「それは?」
ソラ「王都の図書室にあった、アベラ・ペリティアって人の手帳です」
ティア「アペラ…懐かしい名前です」
ソラ「知ってるの!?」
ティア「はい、人間の、数少ない私の友人です。最後に会ったのは、もう150年くらい前ですね」
ソラ「えっ!?」
ティアの幼い見た目からは到底想像できない言葉だった。
ソラ「ティアはいくつなの?」
ティア「ふふふ、それを聞きますか?」
ソラ「あ、ごめん、つい…」
ティア「いえ、構いません。私1200年生きる、ハイエルフの末裔です」
ソラ「!!」
にゃん吉「!!」
ソラ「あ、あの、お若いですね」
……………………………………
にゃん吉「ぶわっははは!」
ソラ「そんなに笑う事ないじゃん、ぷう」
ソラ達は、ティアのいる大木ハウスから出て、
テツが伸びる大広間へと歩いている。
にゃん吉「笑うわい、お若いですねって、全くお主らしいわい」
パトリダ「ふふふ、全くですね。主様のあんなに楽しそうなお顔を初めて見ました。」
ソラ「パトリダさんまでぇ、もぉ恥ずかしいなぁ」
シロ「それにしても、我が番が人型になれて嬉しいぞ」
シロはにゃん吉オーズベルに寄り添って歩いている。
ソラ「良かったねシロ、コレで問題無く爺ちゃんと結婚出来るねー」
ソラが仕返しとばかりににゃん吉をからかうように話す。
にゃん吉「うむむむ」
シロ「ソラ、礼を言う」
大広間に戻り、テツを叩き起こし、
サキオがいる治療室まで戻る。
ソラ「サキオさんの具合はどう?」
サキオ「あ、ソラさんでやんす!」
サキオの目の下にはクマがあり、
お世辞にも顔色が良いとは言えないが、
とりあえず意識は戻ったようだ。
ソラ「良かったぁ」
キノ「心配かけたねぇ、そこのエルフさんが言うには、2、3日もすれば回復するそうさね」
オト「ほんとに人騒がせだぜ」
ソラ「そうなんだ、あー良かった」
エルフ「あ、あのこの度は、龍人様のお連れ様に…」
ソラ「あーもーそう言うのは良いから、こっちもいろいろごめんなさい」
オト「いつもの調子に戻ったな」
ソラ「へへへ、まぁね」
サキオ「どうかしたでやんすか?」
キノ「ソラはサキオがやられて、凄く不機嫌だったのさ」
サキオ「そんなんでやんすか?嬉しいでやんす」
ソラ「そりゃここまで来た仲間だし、当たり前だよ」
テツ「てかよ、さっきっから気になってたんだが、お前誰だ?まさかとは思うが…」
テツは人の姿になったにゃん吉を見て言った。
「「「あっ誰だ?」」」←気付かなかった人達
にゃん吉「そのまさかじゃよ。わしじゃ」
「「「「えーー!?にゃん吉!?」」」」
テツ「人になれるようになったんだな」
キノ「なかなか色男じゃないかい」
シロ「いろおとことは何だ?何かの色か?」
ソラ「あははは!シロ面白〜い」
、
サキオ「それにしてもソラさん上機嫌でやんすね」
ソラ「うん。怖がられてた龍人の正体が分かったんだ」
キノ「正体?」
にゃん吉「わしから話そう。」
にゃん吉は、ティアから聞いた伝承について語った。
人間を脅かしたのは、フレアドラゴン家とアイスドラゴン家であり、
全ての龍人が人間を脅かした存在ではなかったと。
サキオ「なるほどでやんすね。人間界に出て来たのが悪い龍人達だったから、龍人は恐ろしいって伝えられてたでやんすねぇ。」
オト「て事は、アルケアーディアから出てない龍人は、穏やかな龍人なんだな。」
「「「ふうん」」」
皆がソラを見つめた。
ソラ「え、そんなに見ないでよ」
テツ「短気な龍人もいるがな」
ゴチッ
テツ「痛っ」
テツはソラにゲンコツを貰ったのだった。
ソラ「ふんっ」
つづく




