第三十二話 和解
一行はエルフの里に来た。
エルフの里は地面ではなく、
大森林の巨木を利用した、
地上からおよそ50メートルくらいの位置に存在していた。
蔓を張り巡らせたり、吊り橋をかけてあったり、
高低差があったりもするが
人が行き来するのに不便がないように工夫された作りになっている。
木をくり抜いたり、
枝を組み合わたり、
大きな木の実のような物をくり抜いた住居があちこちにあった。
何人居るのかはわからないが、
この"上空村"は、かなり広い範囲に広がっていた。
毒にやられたサキオを治療する為、
治癒者がいる場所に向かっている。
襲撃者達に先導されて里の中を行くが、
里のエルフ達はただ見てるだけで、
誰も声をかけようとはしなかった。
いつものソラなら、こんな木の上に来たら、
凄〜いと口癖のように言ってただろう。
いつもうるさいテツも、
今は誰も口を開こうとしない。
襲撃者のエルフ達も、
どう話して良いものか分からずにいる。
エルフ「あ、あの…」
ソラ「何!?」 キッと睨むソラ
エルフ達はしょんぼりしていた。
ソラは思う。
ソラがたまたま龍人だっただけで、
龍人じゃなかったらきっと皆殺し、
良くても相当な被害を受けてたはずだ。
話し合いも持たずにいきなり攻撃してくる相手に、
どうして心が開けるだろうか。
——逆にあたしがいきなり斬り付けたらどう思うんだよ。
サキオさん死なずに済んだけど、
怪我させた事に変わりはないんだから!——
エルフ「早く運び込め」
治癒師がいるらしい場所へ、「」
襲撃者のエルフ達によってサキオが運び込まれる。
それに付き添い、キノとオトが着いていく。
テツ「おいお前ら、妙なマネしやがったら叩っ斬るからな!俺達の仲間を死なすんじゃねぇぞ」
エルフ「こ、心得ています」
テツ「ふんっ」
と、そこへ、数人引き連れた杖を持った老エルフが現れた。
民族衣装的な衣装に身を包み、
宗教的な首飾りを下げ、
一見するとシャーマンのように見える。
老エルフの従者らしきエルフが、
襲撃者のエルフに言う。
「この者たちがそうか?」
「はい、この方達が龍人様とその御一行です」
襲撃者のエルフの一人が、
老エルフの前でひざまづいて答えた。
「しかし、これは…」
従者らしき、また別のエルフが言う。
「白虎が2体、どうして従っている?どんな方法で?」
ザワッ
「「ぬっ」」
従者らしきエルフ達が身構え、
腰の剣に手をかける。
ソラからただならぬ殺気と威圧が漏れていた。
テツもまた剣に手をかけ、戦闘体制に入る。
にゃん吉「ソラ落ち着くのじゃ、テツもじゃ!この者達はただ知らぬだけじゃ」
ソラ「だって…爺ちゃん家族なのに…」
ソラは俯き、怒りを抑えているようだった。
テツ「そうだせ、それにコイツらの態度も気に入らねー、俺達は被害を受けた側だぜ。何様だてめーら」
老エルフは静かに答える。
老エルフ「これは失礼した。これお前達、控えよ」
従者たちは身構えるのをやめ、
胸に手を当て一歩下がった。
老エルフ「私はこの里の長の、パトリダ・ゲネティラという者です」
テツは戦闘体制を解かない。
テツ「んで?」
にゃん吉「これテツ、お前も控えんか」
テツ「ふんっ嫌だね。こちとら目の前でサキオがやられてんだ。ムカついんのは嬢ちゃんだけじゃねぇんだぜ」
パトリダ「我ら一族の者が大変失礼した。代表者として詫びをしよう。すまん」
パトリダは胸に手を当て、頭頭を垂れた。
「「「長!それは!」」」
従者や他の襲撃者のエルフ達が動揺する。
パトリダはそんなエルフ達に言う。
パトリダ「お前達、我らエルフの使命もあろうが、この方達の事情もある。互いに知らずしてなんとするか」
にゃん吉「ふむ、ソラ、テツ、落ち着くのじゃ。長よ今の言葉は痛み入る。お互い話し合いが必要じゃな」
パトリダ「白虎殿、そなたは白虎の気配とは違うようなのだが、私の気のせいかな。隣の白虎殿は私の知る白虎のようなのだが」
にゃん吉「わしはオーズベルト・ライデンシャフトという。訳あって白虎に転生した人間じゃ」
テツ「は?オーズベルト?」
シロ「それは誰だ?我が番か?」
にゃん吉「わしの本名じゃ。名乗るのは初めてじゃったか」
テツ「にゃん吉が本名じゃなかったのか?」
にゃん吉「いやそんな訳あるかーい」
……………………………………
キノ、オトは解毒中のサキオに付き添い、
ソラ、にゃん吉を始めとする他の面々は、
パトリダ達の案内で広い部屋へと案内された。
そこは板張りの床があり、50人くらい入れそうな空間だった。
上を見上げれば蔓や枝が蜘蛛の巣のように組まれ、
その上には幾重にも大きな葉が敷き詰められて屋根を形成していた。
中にいると、とても地上高く作られた空間とは思えなかった。
その部屋の奥には、仰々しく飾られた椅子がある。
おそらくそこは長の椅子なのだろう。
しかし、パトリダはそこには座らず、
その手間で胡座をかいて座っていた。
従者達はそんなパトリダの後ろに、
同じように座っている。
ソラ、テツ、にゃん吉、シロは、
パトリダと向かい合う位置に、
それぞれ思い思いに座っている。
にゃん吉「それで長よ、こちらから質問して良いかな」
パトリダ「もちろん。誤解のないようになんでも答えよう」
にゃん吉「ではまず、何故襲ってきた。我らは遺跡を探索していただけなのじゃが」
パトリダ「探索?報告では聖域の木を汚されたと聞いてますが」
にゃん吉「汚された?わしらはそんな事はしておらん」
テツ「あ」
にゃん吉「なんだ?テツ、何かあるのか?」
テツ「あ、いや、そのう…なんて言うか……た、大変申し訳なかった!!」
テツは深々と頭を垂れた。
にゃん吉「な!?どうした!何があったんじゃ!?」
テツ「えっと、生理現象っつーか、我慢出来なかったっつーか……てへ」
ソラ「てーーーつーーーー……」
ソラは見る見る龍人化する
テツ「わわわ、待て、話せば分かる!な!な!」
………………………………
にゃん吉「長よ、わしらの仲間がとんでもない事を、あいすまんかった」
そう言うにゃん吉の横で、
頭に大きな大きなタンコブを作ったテツが伸びていた。
ソラの龍人化は解かれている
そして先ほどまでの、
『口も聞きたくない』というような態度ではなくなっていた。
ソラ「でも確かにテツも悪いけど、いきなり殺しに来るのもどうかと思うけど!」
パトリダ「龍人様の言う通りですね。だが一つ言い訳をさせていただきたい」
ソラ「どうぞ」
パトリダ「ではありがたく言わせていただきます。我ら一族は、聖域が現れてから以来、そこをずっと守ってきたのです。聖域とそのまわりの森には、特別な思い入れがあります。それは龍人様が仲間を傷つけられ、周りが見えなくなるのと同じと思って頂けたら、分かって貰えるかと」
ソラ「……」
にゃん吉「そうであったか。それはすまん事をした」
パトリダ「ふふふ、しかし龍人様が当の本人を伸してしまった。それに、我らもあなた方の大切な仲間を傷つけてしまった。先ずは矢で射るのではなく話すべきでした。改めてすまんかった。」
にゃん吉「ソラ、もう良いな」
ソラ「うん、ごめんなさい」
つづく




