第二十八話 ジャイアント
女性「ソイルジャイアント!止まりなさい!」
テツ「おいおい、まだ説得してんのかよ。喋ったとはいえ魔物だっつーの」
ソラに合流したテツが戦闘態勢で様子を見る。
ソイルジャイアント「侵入者、排除!」
ソイルジャイアントの拳が女性目掛けて迫る。
女性は後方に飛び退いた。
女性「やはりこの姿ではダメか…」
誰に言うともなく、小さな声で呟いた。
その声は誰にも聞こえる事はなかった。
テツ「で、どうする?」
ソラ「斬る!」
言うや否やソラが飛び出す
ソラ「とりゃあぁ!食らえ!豪剣爆雷!!」
手で受けようとしたソイルジャイアント。
しかしそれは甘く見すぎている。
ソラの上段からの一撃必殺技は、
ソイルジャイアントの右腕を切断した。
テツ「よっしゃ俺も!うおおお!飛剣!断頭斬!」
テツも技を放つが、その一方で、
ソイルジャイアントの腕の切断面から、
ボコボコと土の様なものが湧き出し、
右腕は再生してしまった。
次の瞬間、テツの技は再生した右腕で防がれてしまう。
テツ「あ!てめ、きたねーぞ!このやろー!」
ソラ「手が生えた!気持ち悪っ」
女性「あなた達真面目にやりなさい!死ぬわよ!」
テツ「あ!?てめーに言われたくねーぞ!」
ソラ「テツうるさい!」
テツ「えっおれ!?」
この化け物どうにかしなくちゃ、
切っても生えてくるなんて、
どうしたら良いんだろ。
ソフィア、どうしよ。
——大丈夫——
え?!
シロ「むっ後ろから何かくるぞ!」
「うがあああぁぁ!!」
にゃん吉「あれは!?」
突然やってきたそれは、後方に居たシロやキノ達の手前からソイルジャイアント目掛けて大きくジャンプした。
「がぁー!!」
ジャンプしたソレの足蹴を食らったソイルジャイアント。
顔の半分を砕かれ、堪らず倒れた。
女性「な!?フ、フレイムジャイアントだと!?」
「「「「フレイちゃん!!」」」」
女性「はぁ??フレイちゃん!?!?」
ソラ「フレイちゃん!」
ソラはソイルジャイアントに一撃を食らわせ、
仁王立ちしているフレイちゃんに近寄る。
ソラ「あたしも一緒に戦うよ」
フレイちゃん「…お前は、スカイドラゴンか」
ソラ「えっ!?」
フレイちゃん「必要ない、こいつ、俺より、弱い」
テツ「マジかよこいつ…」
女性「おい!そいつはフレイムジャイアントだぞ!」
ソラ「だから何!?そんな遠くから叫ばないで!」
女性「き、危険じゃないのか??敵だぞ!!」
ソラ「むかっ、敵な訳ないでしょ!!友達だよ!!バカ!!」
フレイちゃん「友達…」
ソラ「フレイちゃん、頼んで良いんだね」
フレイちゃん「問題、無い」
ソラ「分かった!お願い!」
テツ「頼んだぜ!フレイちゃん!」
そうこうしてるうちにソイルジャイアントの顔半分がもこもこと土のような物が湧き出て、見る見る元の顔に戻っていった。
ソラ「うわぁキモぉ」
テツ「おい離れるぞ」
女性「友達だと?危険はないのか?」
女性は独り言を言い、その後にフレイちゃんに話しかける。
女性「おい!フレイちゃんとやら、そいつの弱点は」
フレイちゃん「分かって、いる」
女性「そうか」
ソイルジャイアント「ぐるるる」
ソイルジャイアントは回復したのか、
ゆっくりと立ち上がる。
ソイルジャイアント「侵入者、許さない」
ソイルジャイアントはそう言うと、
おもむろに右掌をフレイちゃんに向けた。
掌から石の様な塊が覗いたと思うと、
それは銃弾の如き勢いでソイルジャイアントの掌から発射された。
フレイちゃんは避けずに食らう。
ソラ「フレイちゃん!」
フレイちゃん「問題、無い、俺、避けると、友達、危ない」
ソイルジャイアントは次々に石弾を打ち出す。
フレイちゃんはそれをことごとく受けた。
しかし、フレイちゃんにはダメージがある様には見えない。
サキオ「一体どうなってるでやんすか?こっちからだと状況が分からないでやんすね」
オト「いやよく見ろ、フレイの身体が燃えてるぞ」
フレイちゃんの身体はマグマの如き灼熱となっていた。
ソイルジャイアントの攻撃は全て体に吸収され溶けていたのだ。
フレイちゃんは攻撃を物ともせず、
ソイルジャイアントに近寄って行く。
そして石弾攻撃をしていた腕を掴み上げ、
右手でソイルジャイアントの首を鷲掴みにした。
ソイルジャイアント「ぐぐぐ…」
フレイちゃんの右手も、身体のそれと同じくマグマの様な灼熱へと変化する。
ソイルジャイアントの首から煙が上がる。
ソイルジャイアント「ぐぐっががっかっ……」
ぼきぼきと音を立てて、
フレイちゃんは首を握りつぶし、
ソイルジャイアントの首を落としてしまった。
しかしソイルジャイアントは倒れる事なく、
尚もフレイちゃんに抵抗するも、
石弾と同じく、ソイルジャイアントの拳も、
フレイちゃんの身体で溶かされ、
ダメージを与える事はできなかった。
そして、フレイちゃんは、
ソイルジャイアントの溝落ちの辺りに、
手刀の形で手を刺した。
ずごん!
という鈍い音がして、
次はその腕を引き抜くフレイちゃん
手は何かを握っているような形になっていた。
次の瞬間、
頭が無くなっても抵抗していたソイルジャイアントは、
その活動を終え、後ろに倒れた。
フレイちゃんはゆっくりと振り返る。
ソラ達は小走りにフレイちゃんの周りに集まってきた。
女性はその様子を見ている。
タマ「助けてくれてありがとう」
テツ「良くここが分かったなぁ」
シロ「この巨人は何者だ?」
ソラ「ああ、シロは初対面だったね」
シロ「しょたいめんとはなんだ?麺類の仲間か?」
にゃん吉「ちゃうわーい、初めて会った相手という意味じゃ!」
シロ「む、そうか、さすが我が番」
サキオ「フレイちゃん圧倒的でやんすね」
キノ「戦いの相性ってやつさね、フレイちゃんは水属性には弱いんじゃないかねぇ」
ソラ「それにしても、いきなり斬りつけてきてどういうつもりなんだか?」
ソラは女性に向かって言った。
女性「ここがどういう場所か知りもしないで、ズカズカと入り込む方が悪い。死人が出なかったのは奇跡だ」
サキオ「だからって、説明もなしに丸腰の子供を殺しにかかるのもどうかと思うでやんすよ!」
テツ「そうだそうだ!」
女性「ふんっこちらの事情も知らない癖に好き勝手言うな」
ソラ「それを言ったらあんただってそうでしょ!?それにあんたの場合は好き勝手に殺しに来るみたいだしね!うちらよりタチ悪いんじゃない?」
サキオ「そうでやんすよ!」
女性「くっ貴様…」
ソラ「なに?やるの!?ぶった斬るよ!」
テツ「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ二人ともその辺にしろよ」
ソラ「テツはうるさい!」
サキオ「やんすよ!うるさい!」
にゃん吉「ソラよ、その辺にするのじゃ、此奴には聞きたい事がいくつかあるでの」
キノ「そうさねぇ、先ずあんたは何者だい?」
女性「その前にお前達の目的はなんだ!遺跡を荒らしに来たのか!?」
テツ「俺たちはこのタマのとーちゃんかーちゃん
の病気を治すためにアローエを取りに来ただけだ」
女性「アローエ?」
にゃん吉「そうじゃ、わしらは特に遺跡に用は無いわい。アローエを手に入れたら直ぐに引き返さないといかんからの」
女性「くっ、さっきから良く喋る猫だな、何故猫が偉そうにしている!」
シロ「ほう、貴様我が番を馬鹿にするのか?」
シロからただならぬ殺気が溢れてくる
にゃん吉「これシロ待つんじゃ、事情を知らん奴から見たらそうなるじゃろ」
ソラ「ほんと、事情も知らない癖にって、誰かさんも言ってたよねぇ」
女性「くっ」
にゃん吉「ソラもやめよ!」
ソラ「だってさぁ…ふんっだ」
にゃん吉「やれやれじゃな。先ずはわしはいろいろあってこの姿に転生した者じゃ、一応年長者ではある。今はにゃん吉と呼ばれておる、そしてわしを抱いておるこの者はシロ、白虎の化身じゃ。そして膨れてるのがソラじゃ」
キノ「あたいがキノ、こっちがオトとサキオ」
テツ「俺はテツ、SSS冒険者だ。んでこのちっちゃこい獣人がタマだ」
サキオ「そんで、あのでっかいのがフレイちゃんでやんす」
フレイちゃんはいつのまにか足を抱えて座っていた。
にゃん吉「さぁ次はお主の番じゃ」
女性はふうぅっと自分を落ち着かれるように息を吐いた。
女性「私はレイラという、私もアローエに用事があって来たのだが、あのソイルジャイアントがいたのでどうするか考えていたのだ。そこへ獣人の子が入り込んだという訳だ」
ソラ「だからって子供に切り掛かるってどうなの?」
レイラ「脅すつもりだっただけだ、殺すつもりなどなかったわ。それより、何故お前は龍人に戻れる?ここは地上だぞ」
!!!
にゃん吉「戻れるとはどういう事じゃ!?」
ソラ「何か知ってるの!?」
テツ「なぁ取り込み中悪いけど、アローエ取りに行って良いか?」
にゃん吉「む」
ソラ「あ、そうか」
にゃん吉とソラはタマの顔を見た。
タマの顔には早く取りに行きたいと書いてあった。
………………………………
シロ「うむ、こんなもので良いだろ」
タマ「これで、とーちゃんかーちゃん元気になるのですね」
テツ「ああ、そうだぞ、あとは無事に戻るだけだ」
タマ「はい!」
レイラ「私もこんな物だな。おい、龍人!」
ソラ「は!?あたしはソラだよ!」
レイラ「ふんっ私はこれで失礼する」
にゃん吉「待て!まだ聞きたい事があるのじゃ!」
レイラ「私も暇ではないのでな。一つ聞きたいが、お前はアルカディアには行かないのか?」
ソラ「行くけど何か!?」
レイラ「念の為聞いておくが、聖域は知ってるのだろうな」
ソラ「せいいき??何それおいしいの!?」
サキオ「それシロさんでやんすよ」
シロ「我はシロサンではない、シロだ」
レイラ「ふふふ、行けると良いな。お前とはまた会うだろう、それではな」
ソラ「あ!待て!」
にゃん吉「待つんじゃ!あぁ行ってしもうた」
サキオ「ちょっ速でやんすね」
オト「なんだったんだあいつは」
キノ「なんだか妙に知った風だったねぇ」
サキオ「そうでやんすね、ソイルジャイアントの弱点も知ってた風でやんしたね」
にゃん吉「何者なんじゃ」
すると、今まで大人しく座っていたフレイちゃんがおもむろに立ち上がった。
フレイちゃん「俺も、行く」
キノ「あ、あんたも行っちまうのかい?」
ソラ「え?フレイちゃんも一緒に行くんじゃないの?」
フレイちゃん「俺、一緒には、居られない、お前達、友達、でも俺、行かねば、ならない」
キノ「行くって、どこへだい?」
フレイちゃんは無言のまま踵を返した。
ソラはフレイちゃんにスカイドラゴンと言われたのを忘れてしまったようです。




