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天空のソフィア  作者: 髪白悠
第一部 ソラの旅編
27/39

第二十七話 オロス大秘境

 相変わらず巨大な木々が上空を覆い、

 薄暗い道なき道を一行は進んだ。

 倒木を超え、魔物を倒しながら進み、

 4日目の夜。


 一行は焚き火を囲んでいる。

 食事を終え、タマは既に寝息を立てていた。


 オト「やけに静かじゃねぇかテツ」


 テツ「ん?あぁ、タマを見てて、ちょいと昔を思い出してね」


 サキオ「そういや、テツは今幾つでやんすか?」


 テツ「ん?俺か?俺ゃもう30すぎたぜ」


「「「「ほぅ」」」」


 ソラ「そんな歳には見えないけど、ちょっと落ち着いら良いのに」


 サキオ「そうでやんすよね」


 テツ「ぬかせ」


 キノ「あんたは何で強くなりたいのさ、その歳なら世帯もって落い付いててもいいだろうにさ」


 テツ「持ってたさ」


「「「「え?!」」」」


 テツ「俺ぁ田舎で、自分で言うのもアレだが、立派に世帯もって、子供も女の子と男の子の双子と、女房の腹には三人目がいた、……」


 シンと静まり、パチパチと音を立てて燃える、

 焚き火の音だけが静かに聞こえている。

 テツは続けた。


 テツ「もう10年も前の事だ、ある日上空にあいつが来て、珍しいもんだから見てたんだ、そしたら何かが落ちてきてよ」


 ソラ「え?」

 にゃん吉「ん?」


 ソラとにゃん吉が反応する。

 まさにソラが、あのアルカディアから落ちてきたからだ。


 テツ「あっという間さ、何だか知らねーが、男が一人現れて村人みんなやられちまった。俺の家族もな」


 サキオ「そんな過去があったでやんすね」


 テツ「そうさ、だから俺はアイツを許さねぇ…」


 テツの握る拳が小刻みに震えていた。


 テツ「アイツ、めちゃくちゃ強かった。悔しいけどよ、手も足も出なかった。だから俺は強くなって、いつかアイツを殺してやるって誓ったんだ。その為には手段は選ばねぇってな。」


 空気が重く、誰も話しだそうとしなかった。


 テツ「なんてなー!本気にしたか??」


 突然そんな重い空気を、テツ自ら能天気な声で破った。


 オト「あ?嘘だったのか?!」


 テツ「騙されてやんの、あははは!」


 サキオ「なんて奴でやんす」


 テツ「ところでよ、薬草取って帰ったらその後どうするんだ?」


 にゃん吉「ん?言ってなかったか?」


 ソラ「あ、そう言えば」


 実はエイジャタウンの集合場所で話すはずだったソラとにゃん吉だが、

 そこに予期しないテツが参加してきた為、

 話す機会を逃し、その後話す事を忘れていたのだった。


 シロ「我が番よ、我と正式に番になるのでないのか?」


 にゃん吉「いやちゃうわーい!」


 キノ「ソラ、あたい達も知りたいねぇ、着いてくって決めたからには、ちゃんと知っておきたいしねぇ」


 ソラ「うん。でも一つだけ、あたしはテツの仇とは違うからね」


 テツ「ん?そんなの当たり前だろ?アイツは男だったし、アイツの顔は忘れねぇ」


 サキオ「おや?冗談じゃなかったでやんすか?」


 サキオがにやっとしながらテツにツッコむ。


 テツ「う、そ、そうだったな」


 キノ「ウソがつけない男だねぇ」


 テツ「くっ、す、すまん、続けてくれ」

 

 ソラ「ふふ、爺ちゃん」


 にゃん吉「うむ、実はソラもアルカディアから落ちてきた子供じゃったんじゃ」


 テツ「な、なんだと!?」


 テツは思わず立ち上がった。

 ソラの、あたしは仇ではないという言葉の意味を理解した。

 そして思わず剣を抜こうという衝動に駆られたが、グッと堪えた。

 先ずは話を最後まで聞くのが先決だ。

 そう自分に言い聞かせた。


 立ち上がったテツが落ち着いて座るのを確認したにゃん吉は話出す。


 子供が落ちてきた事、

 そこから子供にソラと名付け育てた事、

 ソラが龍人ソフィアである事、

 全てを話した。

 そして、アルカディアに居るであろう両親に会う為に、

 先ずは世界樹を目指している事を。


 キノ「これは驚いたねぇ」


 サキオ「だからあんなに綺麗でやんすね、普段も素敵でやんすけど」


 オト「それであの強さか、納得いったぜ」


 テツ「……」


 にゃん吉「テツよ、思う所はあるかもしれんが、ソラはお主の仇とは関係ないじゃろ」


 テツ「そ、そうだな、狼狽えて悪かった。あ!でもよ、アルカディアに行くんだよな!」


 ソラ「うん、そうだよ」


 テツ「やっぱりお前らに着いてきて正解だぜ!俺の目的も果たせるってもんだ!」


 にゃん吉「して?お主達はどうする?」


 にゃん吉はキノ達3人に向かって言った。


 オト「どうするもこうするも…なぁ」


 サキオ「やんすねぇ」


 キノ「あたいらの腹は決まってるよ、言うまでもないさね」


 ソラ「そかぁ」


 テツ「んじゃ、改めてよろしく頼むぜ!」

 


 ………………………………


 そして翌日、

 一行は転移門を潜った。


 テツ「うおっ眩しいな」


 ソラ「なんか空が広いねぇ」


 潜った先に見えたのは、

 まばらになった木々の広く開けた葉の間からのぞく青い空だった。


 一行はそのまま進む。

 木々は段々と無くなり、

 最後であろう木を超えた辺りで、

 前方に少し見上げるほどの小高い丘が見えた。


 テツ「おいオト!サキオ!」


 オト、サキオ「「ん?」」


 テツ「誰が先に丘のてっぺんに行くか勝負しよーぜ」


 サキオ「嫌でやんすよ」


 テツ「なんだよノリが悪りぃなぁ、オトはまさか逃げねぇよなぁ」


 挑戦的なテツの顔に、オトが明らかにイラッとしていた。


 オト「やってやろうじゃねーか、吠えずらかくなよ!」


 言うが否や、オトは何も言わずに丘の頂上目掛けて走り出した。

 テツは出遅れた。


 テツ「あ、てめー汚ねぇぞ!まて!!」


 にゃん吉「やれやれ」


 キノ「まったくいつまで経っても子供さねぇ」


 タマ「うふふ、面白いですね」


 頂上にはほぼ同時についたようだが、

 様子がおかしい。

 二人は前方を見て微動だにしなかった。


 二人に追い付き、サキオがはじめに声をかける。


 サキオ「二人ともどうしたでやん…す……か??」


 サキオも声をかけながら前方を見て固まる。

 ソラ、キノ、にゃん吉、タマも、

 丘の頂上から見る景色に言葉を失っていた。

 

 剥き出しになった地面は土だけではなく、

 岩や建造物が壊れた跡が見てとれた。

 それも相当に古そうだ。

 遠くを見渡しても木々は無く、

 起伏の激しい地面が分かる。

 

 中央部分には対岸が僅かに霞んで見えるくらいの広い湖が、巨大な穴を埋めるようにそこに横たわり、周辺の山々や遺跡と相まって、

 まさに壮大としか言いようのない景色となっていた。


 オト「これは…」


 にゃん吉「なんと…」


 ソラ「シロ、ここが?」


 シロ「そうだ、ここがオロスだ」


 キノ「オロス。こんなに美しい景色がこの世にあるのかい」

 タマ「こんな所があるなんて…」


 サキオ「なんかこう、抉り取られたみたいな印象うけるでやんすね」


 テツ「ん?どうやって抉るんだ?何かが落ちたんじゃないのか?」


 サキオ「何か落ちたなら、綺麗な丸になるでやんす」


 にゃん吉「ふむ、お伽話によると、ここがかつてアルカディア文明が栄えた場所、つまりアルカディアの跡地になるのかの、今のアルカディアは、大地の神エザフォスの怒りをかい、大地から追放されて浮遊大陸になったんじゃ」


 テツ「えっ!?そうなのか?!すげー!」


 オト「って事は、つまり」


 サキオ「ほんとに抉られたって事でやんすか?」


 シロ「流石は我が番だ。よく知っておるな」


 ソラ「凄ーい」


 にゃん吉「ソラや、ほんとに凄いと思ってないじゃろ」


 ソラ「あははは、バレたか。それよりさ、早く薬草探そうよ、なんだっけ、アローハだっけ」


 にゃん吉「アローエじゃ!アローエ!まったくお主は。まぁ言う通りじゃな。早いところアローエを探し出して、里に持ち帰ろう」


 一行は丘を下り、薬草アローエを探す。


 ソラ「どの辺りに生えてるかなぉ、ここ広いよー」


 シロ「あの石達の辺りや平坦な日当たりの良い所に生えていたと記憶しているぞ」


 ソラ「石達?あー遺跡のことか。じゃぁ遺跡の方にいってみよー」


 サキオ「行くでやんすぅ」


テツ「遺跡ってのは不思議だよな。これ昔はちゃんと人が作った物で、ちゃんと建物だったんだよな」


 オト「そんなの当たり前だろ」


 テツ「そうだけどよう、いったいどんな年月過ごしたら、こんな瓦礫になっちまうんだ?不思議だろ?」


 オト「俺にはよく分からねぇな」


 ソラ「……」


 テツ「お、あっちにけっこう建物として残ってる所あるぜ!行ってみよう」


 キノ「ちょいとあんた、目的忘れてやしないかい?」


 テツ「アローなんとかだろ?ちゃんと探してるって」


 にゃん吉「アローエじゃ!アローエ!」


 テツ「おっと、なんだこの絵は?すげー、絵が残ってるぞ!」


 にゃん吉「む、これは…」


 サキオ「これ、なんか剣を構えてる絵でやんすね」


 キノ「これは壁画だねぇ」


 ソラ「こっちにも壁画あるよ。でもコレって、刀?」


 ソラが発見した壁画は、所々ヒビや掠れがあるものの、

 何か剣の様なものを作っている工程を表してるのが見て取れる。

 そして、最後は武人らしき人物が剣を持っている姿が描かれていた。

 剣は細く曲がっていて、爺ちゃんの刀の様に見える。


 ソラは思わず刀を収納魔法から取り出し、

 見比べて見た。


 サキオ「これは、確かに似てるでやんすねぇ」


 ソラ「爺ちゃん、この刀って…」


 にゃん吉「昔、たまたま手に入れたものじゃ」


 テツ「おーいこっち来てみろよ!あっちに何かたくさん生えてるぞ!」


 ソラ「シロ、あれは?」


 シロ「うむ、おそらくアローエだ」


 タマ「あれが!」


 タマはアローエに向かって走り出した。

 それは無理もない事だった。

 両親を助けたい一心で案内役を務め、

 やっと辿り着いた場所。

 その目の前に両親を助けられる鍵があったのだから。


「待て!!その先に行くな!!」


「「「「!!」」」」


 いきなり現れた影。

 影はタマに向かって剣を持って猛然と突進する。


 テツ「なんだ!?タマあぶねー!!」


 タマ「きゃー!」

 

 キーーンッ


 刃物と刃物がぶつかり合う乾いた金属音が響いた。


 ソラ「なにすんだ!」


 寸前のところで剣撃を防いだのはソラだった。

 ソラは見る見る龍人化していく。


「お、お前は…!」


 オト「お、女?」


 タマを襲った女性は、ソラの変化に驚き後ずさる


 にゃん吉「あの剣は!?」


 キノ「なんだい何事だい!?」


 サキオ「あ、ソラさんと同じ剣でやんす、刀、でやんすよね」


 女性は焦茶色のややウェーブがかった長い髪に、

 冒険者風ではあるが、

 ちょっと変わったデザインの服装をしていた。

 手には刀が握られている。


 ソラ「いきなり何!?」


 女性「お前達は入ってはいけない所に踏み込んだ!あれを見ろ!」


 女性が指差す方向、

 大きな石像があった。


 にゃん吉「ジャイアントの様な石像だが、あれがなんだと言うんじゃ」


 サキオ「よ、よく見るでやんすよ!」


 石像の表面にヒビが入り、

 ぼろぼろと表面が崩れていく。

 身体の正面を向いていた首が、ソラ達に向いた。


 ソラ「う、動いた!?」


 女性「くっ」


 石像は見る見る動きだし、

 ドシンドシンとソラ達に向かい歩き出す。

 ぼろぼろと崩れた表面からは、

 新しく黄土色の表皮が現れ、

 目だけが不気味に赤茶色に染まっていた。


 シロ「あれは、もしや」


 女性「ソイルジャイアントだ!厄介なものを目覚めさせてくれたな!」

 

 にゃん吉「なんと!ソイルジャイアントじゃと!?」


 女性はソイルジャイアントに向かって進み叫んだ。


 女性「ソイルジャイアント!止まれ!」


 テツ「止まれって言って止まるもんかよ!相手は最強種の化け物だぞ!」


 ソイルジャイアント「お前達、侵入者、排除する」


「「「「喋った!?」」」」


 ソラ「タマちゃん!離れて!!」


 タマ「はい、あ、あの、ごめんなさい」


 タマはそう言うと遠目にいるキノ達の所に走って行った。


 謎の女性の正体は分からないが、

 このままでは全員ソイルジャイアントに襲われるのは必至。


 ソラはソイルジャイアントに対して攻撃態勢をとる



 それにしてもあの女の人は何者?

 刀持ってるし。

 ソイルジャイアント倒したらいっぱい文句言ってやるんだから!

  

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