第十九話 王都での戦い
ふらふらと立ち上がったソラ。
意識が朦朧とする中で、
どこか遠くに鐘の音が聞こえてる。
あたしどうしたんだろ……。
あぁそうか、棍棒で殴られたんだっけ……。
三人組は?
みんな気絶してるみたいだけど、
無事みたいだね。
ソラはジャイアントを見やる。
マリアーノと騎士団が必至に戦っている。
にゃん吉もなんとかジャイアントに対抗しうる魔法を行使してるようだが、
強力な魔法を放つには詠唱時間が足りない。
それでもジャイアントは少しづつダメージを蓄積してるようだけど、
倒すまでにはまだ当分かかるだろう。
あ、あたしも、戦わなくっちゃ……
あれ?腕が上がらない……
ソラは自分の腕を見る。
ソラ「えっ?!」
ソラの腕は両手ともおかしな方向に曲がっていて、
とても動かせる状況ではなかった。
そこで初めて、ぼうっとしていた意識がはっきりとする。
ソラ「うわぁあああ!」
カンカンカンカンカンカン!
今度ははっきりと半鐘が鳴り響いているのが聞こえる。
それが更にソラの絶望感を駆り立て、
ソラはその場に座り込んでしまった。
ソラ「痛い!どうしよう、ソフィア、あたし、痛い痛い!」
サキオ「ごほっソラさん、落ち着いて下さいでやんす」
倒れていたサキオが目を覚まし、
ソラに近寄ってきた。
しかしその姿もかなりのダメージを受けている。
サキオ「大丈夫でやんすか?」
ソラはサキオの姿を見て、
サキオも決して無事ではない事を理解した。
他人の心配してる場合ではないほどのダメージを負っているのは、
誰が見ても明らかだ。
ぼうっとして見た時はそんな事に気が付きもしなかった。
ソラ「あ、あなたこそ大丈夫じゃないじゃない……」
涙が溢れそうになる。
とその時。
『マーハーリークマーハーリータ、癒しの女神パーナーケイアよ、
汝の奇跡を我が手に宿し、その慈悲とわが魂を糧に彼の者を癒やせ』
ソラ「えっ?!」
ソラは声の主に振り向く。
詠唱をしているのはキノだった。
ソラ「無事だったんですか?」
キノ「あんた達全員であたいを庇ってくれたからねぇ、あたいが一番軽傷だよ。」
『完全回復≪パーフェクトクラーション≫』
ソラは淡い優しい光に包まれ、
傷がみるみる回復していく。
疲労も心労も全て癒されていくのがソラには分かった。
そして、このパーフェクトクラーションも、
普通の魔法使いに扱えるものではない事も分かっていた。
ソラ「あなたは何者ですか?」
キノ「あたいはキノだよ。あんたには世話になったからねぇ、あたいも全力で返すよ」
ソラ「うん!ありがとうおばさん!」
キノ「おば……」
言うなり、ソラは刀を抜き、全力でジャイアントに向かって行く。
力が溢れているのが自分でも分った。
ソラ「魔物成敗!!」
マリアーノ「ソラ!」
にゃん吉「ソラ!」
騎士ABC「ソラ殿!」
ソラはジャイアント目掛けてジャンプした。
ジャイアントは上を見上げるが、
太陽が目に入って一瞬だが目を閉じた。
偶然だが、ソラは太陽を背にしていたのだ。
ソラ「行けーーーー!! 豪剣爆雷!!」
上段からの渾身の一撃。
頭を割られたジャイアントは、巨体を倒しその活動を終了した。
にゃん吉「もう復活せんじゃろな?」
ソラ「ふう」
マリアーノ「ソラ!」
マリアーノが駆け寄ってくる。
ソラ「マリー!良かった!」
マリアーノ「ソラこそ、あれほどの傷を負ったのに……」
にゃん吉「そうじゃ!どうして復活したんじゃ?」
ソラ「あの人が、キノさんが直してくれたんだよ」
ソラはそう言ってキノを指さす。
三人組はキノの回復魔法でそれぞれ回復していた。
そしてキノがソラに向かって叫ぶ。
キノ「まだ終わってないよ!半鐘が鳴りやんでるけど、様子がおかしい!!」
マリアーノ「そうだ!新たに半鐘が鳴っていた」
にゃん吉「急ぐのじゃ!」
にゃん吉はソラの肩に乗った。
にゃん吉「行け!走りながらマリー達の回復をする!」
ソラ「はい!」
……………………………………
それなりに大きな街は領壁という壁で、外部から魔物などの危険が入り込まないように囲っている。
王都ももちろん例外ではなく、特に大きな領壁で囲まれている。
その領壁には幾つかの門があり、外からの出入りはこの領門から出入りしている。
領門はどこの街にも東西南北に四つの門があり、北領門、南領門、東領門、西領門とがある。
今回、ソラが出て行こうとしてたのは西領門だ。
半鐘が鳴っていたのはとなりの南領門。
ソラ達はその南領門に向かって走っていた。
マリアーノ「西領門に誰も応援が来ないのがおかしいと思ったのだ」
騎士A「囮だったのですね」
にゃん吉「そもそも何人のテイマーがいるんじゃ?」
キノ「さぁ、あたいも知らないんだよ、伝令を伝えにくる男だって、あたしゃ名前も知らされてないのさ」
ソラ「え~?なんで?」
サキオ「そういうもんだと思ってたでやんすよ」
にゃん吉「そんな組織によく参加してたもんじゃな」
マリアーノ「もうそろそろです!」
南領門に着くが、けっこうな時間が経っていた。
一同は門を見て愕然とする。
領門は破壊され、既に何者かが通った後だったのだ。
マリアーノ「これは?!何という事だ」
キノ「急がないと街の子供達が」
にゃん吉「待て、テイマーがいるはずじゃ。先ずはそ奴らを探し出さない事には終わらんじゃろ」
マリアーノ「このまま後を追えばテイマーの背後に出るだろう、静かに急ぐのだ」
門を潜り街に入る。
魔物が通った後が破壊されている。
そして破壊された先を見ると、
居る、ジャイアントのような巨大な魔物が、
300メートル程先で暴れているのが見えた。
ソラ達は瓦礫に隠れながら、
しかし急ぎ足で魔物供の背後に迫る。
王国の騎士団達が魔物と交戦してるのが良く見える位置まで近寄ろうとした時、
居た。
テイマー軍団だ。
5・6人のテイマーらしき男達に荷車までいる。
荷車にも何人も乗っているようだが、
にゃん吉「なにか様子が変じゃ」
キノ「なんて事してるんだい……」
荷車の様子を見てキノが言った。
荷車の後ろ部分には、女の子が何人も捕らわれていたのだ。
そして荷車の前の部分には、
ゴブリンが数体、首輪で繋がれている。
ゴブリン供は荷台の女の子達の方に向かって、
涎を垂らしてぎゃぁぎゃぁ騒いでいた。
マリアーノ「なんて卑劣な奴らだ、人質にするにしてもあれは……許さんぞ」
ソラ「どうして……」
マリアーノ「え?!」
ソラ「どうして強い力を何かに役立てようとしないの?どうしていつも子供達が可哀想な目に合うの?どうして……」
≪ドクンッ≫
既に龍人化していたソラだったが、
更に雰囲気が変化した。
そして今にも飛び出しそうなソラに声がかかる。
にゃん吉「ソラ!待つんじゃ!」
ソラ「なんで?!だって!あのままじゃ!」
にゃん吉「慌てるな。テイマー軍団は殺すな。苦しみを与えて罪を償わせるのじゃ、あとはお主の好きなようにすると良い」
マリアーノ「後始末は我ら騎士団にお任せあれ」
キノ「すまないねぇ、怪我をしたら直ぐに駆けつけるさね」
ソラ「分かった!行ってくる!」
ソラはそう言うなり飛び出して行った。
マリアーノ「我らも遅れるな!」
騎士ABC「「「おー!」」」
キノ「あたい達も行くよ!覚悟を決めな!」
騎士団を初めとする全員がソラの後に続き走り出す。
にゃん吉も、できる限りの事はやってやろうと動き出した。
ソラ「雷光石火!三閃!」
荷台でぎゃぁぎゃぁ騒ぐゴブリン供の首が飛んだ。
男「うわっ何だ貴様!ぐえっ」
テイマー軍団の男達は、
ソラによって次々と無力化されていく。
ゴブリンに怯え、泣いていた少女達は、
何が起きたか分からなかったが、
駆けつけたマリアーノ達によって事態を把握した。
女の子「騎士様、助けてくれたの?」
マリアーノに向かって人質となっていた少女が言った。
マリアーノ「君を助けたのはあの方だよ。良く見ておいてあげてくれ」
女の子「え?あの銀色の人?」
マリアーノ「そうだ。君達の味方、龍人ソフィア様だ」
女の子「ソフィア様……透き通るような優しくて綺麗なお名前……」
一方で、ソラは男に斬りかかる。
が、横から刀を受け止める人物がいた。
ガキーン
ソラ「な?!」
にゃん吉「なんじゃと?!竜人化したソラの剣を止めたじゃと!なんちゅう手練れじゃ」
男「ボス、今のうちです」
ボス「テツ、よくやった」
ボスと呼ばれた男は魔石を取り出す。
オト「あれは!」
サキオ「ダンジョンコアの複製でやんす!」
ソラ「くっ」
ソラは一旦距離を取った。
ソラは刀を峰打ちにして殺さないように手加減してテイマー達をぶちのめしていた。
しかし、手加減していたとはいえ、龍人化したソラの剣を受け止めたこのテツと呼ばれた男は、只者では無いとソラは感じていたのだった。
テツ「お前たち、何故こいつらと一緒にいる。裏切ったか」
ソラの剣を受け止めた男テツは、3人組に気付く。
オト「お前は!いつもクール気取りしやがって、もうお前の指図はうけねぇ」
テツ「ふふ、どうでも良い、ボスが次に出す魔物を見てもそう言えるかな?」
ボス「さぁ新たな魔物よ出て来い、我に従え!」
ボスはそう言うとダンジョンコアの複製を高く掲げて言った。
ダンジョンコアの複製からどす黒い物が溢れてきた。
霧のようでもあり塊のようでもあるそれは、
止めどなく溢れ続け、巨大な塊となり、
やがて形を作り巨大な魔物を誕生させた。
にゃん吉「な、なんじゃと?!これはまさか!!」
「ぐばぁああああ!!」
誕生した魔物は雄叫びを上げる。
その大きさは先程のジャイアントくらい大きく、
頭から炎を上げていた。
ボス「がははは!ついに出たぞ!最強種が一体、フレイムジャイアントだ!」
マリアーノ「なっ!?フレイムジャイアントだと?!貴様!それほどの力を持ちながら何故王都を狙う!」
ボス「ふんっ知れた事、テイマーこそ史上最強だと世界に知らしめる為だ。」
マリアーノ「そんなくだらない事の為に……」
ボス「ふんっ何とでも言え、俺は人を操る術も発見したのだ、ダンジョンコアと特別製の宝玉さえあれば何だってできるのだ。例えば……」
ボスは特別製のテイマーの宝玉を翳す。
ボス「来い娘共」
すると荷車に乗っていた少女達が一斉にボスの元に集まり、ボスを囲んでしまった。
マリアーノ「なっ?!」
≪ドクンッ≫
ボス「ふはははは!どうだ!これで俺に攻撃できまい!」
≪ドクンッ≫
ボス「男共はフレイムジャイアントの餌食にしてやる。女共はそうだな、ゴブリンの慰み物にして、先程殺された分を産んでもらうか。」
≪ドクンッ≫
サキオ「なんて奴だ、あっしら、こんなボスに従ってたでやんすか?」
オト「俺はもっと至高な目的があると……」
マリアーノ「何て卑劣な奴だ」
ソラ「させない……」
ボス「ん?何だ?何か言ったか?」
ソラ「そんな事させない!!」
ボス「テツ、やってしまえ!こいつは邪魔ばかりしてる奴だ、殺して構わん!」
テツ「承知した」
言われたテツはソラに向かって突進してきた。
ガキーンッと剣がぶつかり合う。
ソラ「あんたはぶった斬る!!」
テツ「やってみろ」
ソラとテツは激しくぶつかり合う。
が、明らかに先程までのソラとは違っていた。
テツ(なに?!これはどう言う事だ?先ほどより強い……)
そんなテツの心情を知らずにボスが動く。
ボス「ふふふ、フレイムジャイアント、皆殺しにしろ!」
ボスはフレイムジャイアントに命令した。
マリアーノを始めとする全員が身構えたが、
フレイムジャイアントは動かない。
ボス「どうした化物!薙ぎ払え!」
フレイムジャイアントは、徐ろにボスの方を向き、
そして、ボスの頭を摘んで持ち上げた。
ボス「なっ?!なにぃいいい!!」
ジタバタするボスは、宝玉もダンジョンコアも落としてしまった。
落ちた宝玉とダンジョンコアは、
衝撃で壊れてしまい、
娘達は正気に戻り騎士団の元に逃げて行く。
マリアーノ「一体何が……」
一同唖然とする中、
にゃん吉が言った。
にゃん吉「彼奴、いつの間に」
にゃん吉の目線の先、
そこにはテイマーの宝玉を構えたキノがいた。
キノ「あら、ボス、お初ですねぇ。知ってましたぁ?あたいもテイマーなんですよぉ」
オト、サキオ「「姉さん!」」
ボス「ききき!きさまー、テツ!おい!」
テツはソラに背を向けキノに向かって行く。
テツがキノに一撃を入れようとするが、
ソラがキノの前に入り込みテツの剣を止めた。
ギーンッ
ソラ「させない!」
テツ「くっ速い」
キノは余裕の表情を崩さずに言った。
キノ「ボスぅ長々と演説ありがとねぇ、おかげでフレイムジャイアントをテイムする時間があったねぇ」
ボス「お、おいやめろ!テツ何してる!役立たずめ!」
テツはソラに睨まれ何もできない状態になっていた。
怒り心頭になったソラにはただならぬ気配が漂っている。
マリアーノ「役立たずは貴様だ!ダンジョンコアも無ければ怪しげな宝玉ももう無いぞ、何も持たないと何も出来ない貴様はただの役立たずだ!」
キノ「騎士様、これどうします?今すぐ火炙りもできますがねぇ」
オト「姉さんやっちまえ!」
頭を摘まれて持ち上げられたボス、フレイムジャイアントは自分の顔の前に持ち上げてボスを眺めている。
ボスは首が痛いのか、フレイムジャイアントの指を両手で掴み、必死になってジタバタしている。
ボス「くそっ離せ!くそっ、こんな所で死んでたまるか、くそぉ」
その様子を見てテツは呟く。
テツ「終わったな」
そう言ってテツは剣を納めた。
ソラ「え?」
テツ「さらばだ」
一瞬の油断だった。
テツが剣を納めた事でソラは一瞬気を緩めてしまった。
テツはあっという間にその場から走り去ってしまった。
ソラ「あーー!!逃げたぁああ!!」
マリアーノ「なぬっ?!」
サキオ「ありゃりゃ」
ソラ「んもぉおっ!」
ソラはボスを見上げて睨みつけた。
怒りの矛先をボスに向けたのだが、
その時声がかかる。
にゃん吉「ソラ、其奴はもうただの無能じゃ。それよりまだ魔物が暴れとる、早く応援に行くのじゃ」
ソラ「分かった!行ってくる!」
そう言ってソラは前方で今だに暴れている魔物達と戦っている王国騎士団の応援に行くべく飛び出して行ってしまった。
キノ「モタモタしてられないねぇ」
キノはフレイムジャイアントにボスを降ろさせた。
ボスはマリアーノの騎士団によって取り押さえられる。
ボス「おのれー!離せ!くそぉ」
キノ「さぁお前達、あたいらも加勢に行くよ!」
オト「がってんでさ」
サキオ「行くでやんすよ!」
マリアーノ「私も向かうぞ。お前たちはそのお嬢さん達を護衛しろ!」
騎士ABC「「「はっ」」」
こうしてまたさらなる王都の魔物討伐が始まった。
【読者の皆さま】
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小心者の私に、
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白村
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