第十八話 テイマー至上主義軍団
更新遅くて申し訳ありません。
時は遡り、ダンジョン災害の翌日。
キノ、オト、サキオの3人組はアジトに篭っていた。
オト「姉さん、まだ震えが止まらないんですかい?」
キノ「あ、あぁ、我ながら情けないねぇ、軍団に参加した時に覚悟決めたはずなのにねぇ」
オト「しょうがねぇです。俺だって、目の前で罪のねぇ子供が殺されるのは見たくねぇですから」
キノ「死人は居なかったのかねぇ」
サキオ「ソラさん……」
キノ「サキオ……」
サキオ「ソラさん、無事でやんすかねぇ、おいら心配で心配で……」
キノ「せめて見届けてやれば良かったねぇ」
オト「魔物がわいてこなくなった時点で、居た堪れなくて逃げて来ちまいましたからね」
サキオ「はあぁ……」
サキオは大きなため息をついた。
そこで部屋のドアが叩かれる。
ドンドン
ここはアジトだ。
そこに尋ねて来るとしたら組織の人間以外は考えられない。
サキオが無言で扉を開けた。
そこには以前、キノに特別製のテイマーの宝玉の杖を渡した男が立っていた。
男「いたか。新たな指令を伝えに来た。」
男は部屋に入り淡々とした口調で告げた。
3人組の失敗を、特に責める様子もない。
男「近々、ボス自らここ王都を襲撃する。それまで待機してまて」
キノ「ボス自らですか?」
男「そうだ。そこで役に立てば、今までの失敗は水に流すそうだ。最後のチャンスだと思え。」
キノ「ボスは、やっぱりここを滅ぼすつもりですか?」
男「そうだ。ここの王は我々、テイマー至上主義軍団の邪魔ばかりする敵だからな。お前達も良い加減役に立つところを見せろ」
男はそう言って何かのメモをオトに手渡し、そのまま立ち去ろうとしたが、キノが男を呼び止めた。
キノ「あの……」
男「なんだ?」
キノ「ここの王はどんな邪魔をしたのですか?」
男「さぁな、俺も詳しくは知らん。ボスが言っているんだから、王が邪魔なんだろ。まぁ理由はともかく、ここを滅ぼせばいよいよ我が軍団が世界にその名を轟かすのだ。精々頑張れよ」
男はそう言い残して去って行った。
キノ「頑張れったって、この有様じゃぁねぇ」
キノは苦笑しながら独り言のように呟いた。
オト「姉さん……」
サキオ「はぁ、ソラさん……」
サキオは遠くを見つめて呟いている。
キノ「ふ、ふふふ、あははは」
キノは突然笑い出した。
オト「姉さん?どうしたんですか?」
キノ「なんだか、こんなサキオを見てたら、テイマー至上主義とかどうでも良くなってきたねぇ」
オト「まぁ確かにそうですね」
キノ「お前達すまないね。今度こそ覚悟決めるよ。」
オト「どうするんで?」
キノ「中途半端な悪はやめにするのさ。」
オトは男に渡されたメモを見ながら言う。
オト「どこまでも着いて行きますよ。決行は一週間後です」
オトは言いながらメモをキノに手渡す。
キノはメモを一瞥して、くしゃくしゃと丸めて投げ捨てた。
キノ「ふん」
…………………………………………
そして時は戻り、領門の一室。
キノ「魔物が、魔物が攻めてくるのさ!」
マリアーノ「なんだと?!どう言う事だ?」
キノとオトは、代わる代わるに事の成り行きを説明した。
テイマーによる街の襲撃や、
ダンジョンコアの複製について、
包み隠さずに全てを打ち明けた。
マリアーノ「テイマー至上主義軍団?だと?」
ソラ「なーに?それ」
にゃん吉「くだらん」
マリアーノ「いつ攻めてくるんだ?」
キノ「多分、今日……」
マリアーノ「今日だと?!」
にゃん吉「なぜもっと早く知らせなかったんじゃ!」
と、外で半鐘の音が鳴り響き出した。
カンカンカンカン!
と乾いた金属音が部屋の中にも聞こえてくる。
部屋の扉が慌ただしく開かれ、
慌てた様子の騎士Aが血相を変えてやってきた。
騎士A「マリアーノ様!!」
キノ「まさか、もう?!」
……………………………………
領門は大騒ぎだった。
「な、なんだ?!あれは」
「あんな魔物見た事ないぞ!」
「急いで全員に知らせろ!!城の騎士団にも要請を!!」
領門の門兵達が見ているのは、
巨大な数体の魔物だった。
そこへマリアーノ達も出てきた。
マリアーノ「な、なんだあの魔物は?!」
にゃん吉「ジャイアントじゃと?!」
巨大な魔物ジャイアント4体が、大きな棍棒を持ち、
15メートルくらいありそうな巨体をゆすって、
のしのしと領門に迫って来ていた。
ソラ「大きいぃ」
にゃん吉「関心しとる場合か!まったくお主と言う奴は」
ソラ「だって、大きいだけで遅いし、あそこなら魔法でやっつけられるんじゃない?」
にゃん吉「それはそうじゃが、もっとこう、なんというかじゃな」
マリアーノ「にゃん吉殿、ソラの言う通りですよ。無駄に緊張する事はないようです。ありがとうソラ」
ソラ「え?う、うん」
ソラにはお礼を言われる理由が分からなかった。
マリアーノ「しかし魔法隊が到着するまで間に合うか……」
ソラ「ソラがやる!」
ソフィア、お願い!
ソラの雰囲気が変わる。
風が軽く舞い上がり、ソラを中心に渦をまく。
変化した美しい銀髪が舞い上がる。
マリアーノ「おお」
サキオ「す、すげー」
キノ、オト「!……」
ソラが龍人化する時、
変化するのは髪と瞳。
他の姿形が変化する訳ではないが、
龍人化したソラは美しく、周りを魅了する雰囲気を纏っている。
そのソラは、一歩前に進み刀を構え、詠唱を開始した。
「メーテオーローローギアー、雷神トニトゥルスよ、
汝の刃を我が元に、その稲妻で眼前に迫る敵を滅ぼせ」
のしのしと迫ってくるジャイアントの頭上に、
濃い暗雲が立ち込める。
ソラは少しでも威力が増すようにさらに魔力を込めた。
「稲妻落とし!≪エクスケラヴノス≫!」
凄まじい轟音と共に、6本の雷が伸びる。
ジャイアント4体に雷が落ち、他にも2箇所に雷が落ちた。
ジャイアントは悲鳴を上げるが、
その叫びはイカズチの音に掻き消され、
黒焦げになった4体が横たわる。
キノ「な、なんて威力の魔法だ。こんなの見た事ないねぇ」
オト「やったのか?」
マリアーノ「今、6カ所に落ちなかったか?」
にゃん吉「おそらくテイマーにも雷が落ちたのじゃろう」
サキオ「じゃぁボスもやっつけたでやんすか?」
キノ「簡単すぎやしないかい?」
にゃん吉「いや、待て」
ソラはまだ刀を構えたまま、倒れたジャイアント4体を見ている。
にゃん吉「ソラ、どうかしたか?」
ソラ「1体動くよ」
うぐおぉぉ……
唸り声を低く上げ、
1体のジャイアントが、ソラの言うように動き出した。
マリアーノ「しぶとい奴だ、トドメは騎士団に任せて貰おう」
にゃん吉「いや、待つんじゃ!様子がおかしい」
ジャイアントは周りに3体の仲間が倒れているのを見て、徐ろ(おもむろ)に1体の腕を掴み取った。
にゃん吉「な?!なんじゃと?!」
マリアーノや門兵達が見守る中、
生き残ったジャイアントは他の仲間の死体を食べ出していたのだ。
食べる度にみるみる傷が回復していく。
そればかりか更に大きくなっているようだ。
サキオ「ジャイアントって、仲間を食うでやんすか?」
オト「そんな訳ないだろ」
ソラ「爺ちゃん、もう一回魔法放ってみる?」
にゃん吉「さっきのでだいぶ魔力を使ったじゃろ。」
ソラ「うん、バレてた?」
にゃん吉「バレバレじゃよ」
ソラ「あれ倒せるかな?」
にゃん吉「お主が倒せなければ相当な被害が出るじゃろうな」
ソラ「そか、じゃぁ行くよ」
にゃん吉「うむ」
マリアーノ「お供します」
2人と1匹は生き残ったジャイアントに向かって行く。
その間、マリアーノは身体強化魔法を使い、身体能力を強化した。
ジャイアントは向かってくる気配を察知したのか、
食うのをやめて立ち上がった。
にゃん吉「でかい!ここまで大きくなるものなのか?!」
マリアーノは躊躇なくジャイアントに突っ込む。
狙いは足だ。
マリアーノ「おりゃぁー!!」
以前よりもはるかにレベルアップしているマリアーノだったが、
しかし、ジャイアントの足を切断するまでには至らない。
ソラはといえば、ジャイアントが近くに寄るとあまりに大きいので攻めあぐねていた。
ソラ「これどうしたらいいの?」
にゃん吉「今度はわしが魔法を放つ。詠唱の時間をかせげ」
ソラ「わかった」
ジャイアントは棍棒を振り回してるが、
動きはさほど速くはない、
ジャイアント自身も小さな標的に苦戦しているようだ。
にゃん吉「エニエール・エネール・エクリクス、闇と冥府の神ハーデスよ、
闇に灯る不滅の焔を我が手に……」
にゃん吉の詠唱が始まる。
その間、マリアーノとソラは連携をとりジャイアントを牽制する。
「うごおおお」
ジャイアントは苛立ちを覚えているようだ。
ちょこまかとヒットアンドウェイを繰り返す度に、
だんだん顔が赤くなっている。
にゃん吉「良いぞ!離れるんじゃ!」
にゃん吉の詠唱が終わったようだ。
ソラ「マリー!」
マリアーノ「分かった!」
ソラとマリアーノの二人は一旦ジャイアントと距離を取った。
そして、
にゃん吉『地獄の焔≪ケオ・イーンフェルヌス≫!』
青黒い焔にジャイアントが包まれる。
「ぐぎゃぁぁぁあああ!!」
焔は次第に大きくなりジャイアントの巨体を包んだ。
にゃん吉「どうじゃ?!やったか?!」
焔の中でジャイアントが暴れ出す。
苛立っていたジャイアントはどうしてこんな目に合わなければならないかと言わんばかりに、
雄たけびを上げて、八つ当たりのように地面を棍棒で叩く。
「がぁあああああ!!!」
怒り狂い地面を渾身の力で叩きつけるジャイアント。
抉られた地面は爆発でもしたかのようにはじけ飛んだ。
ソラ「うわ!」
弾けた地面が辺りに勢いよく飛び散り、
マリアーノやソラを襲う。
マリアーノ「うぐっ!」
拳ほどの石がマリアーノを直撃した。
ソラ「マリー!」
ジャイアントは暴れ狂い尚も地面を抉る。
動きの鈍ったマリアーノを弾けた土や石が襲う。
にゃん吉「なんて奴じゃ!一旦引くのじゃ!」
ソラ「でもマリーが!」
マリアーノ「これしきの事!大丈夫ですぞ!」
サキオ「うおおおお!氷の障壁≪アイスウオール≫!」
今まで戦闘を黙って見ていたサキオが、
氷の魔法でマリアーノとジャイアントの間に氷の壁を作って、
地面の礫からマリアーノを守った。
オト「炎の矢≪ファイヤアロー≫!」
続いてオトもジャイアントの攻撃に加わる。
にゃん吉「お前達!」
オト「俺たちも魔法使いの端くれ、少しでもなんとかしたいんだよ!」
キノ「一応、私も魔法剣士さね。お前達、やるよ!」
オト「おう!」
サキオ「へい!」
3人はジャイアントに向かって行く。
しかし、地獄の焔の効果が無くなり、
ジャイアントの身体からブスブスと煙は出ているものの、
今やジャイアントを脅かすものは消えていた。
四つん這いになってはあはあと息をしているジャイアントは、
3人組を睨みつけた。
「うぐぁあああ!」
キノ「なっ?!」
息を吹き返したジャイアントの棍棒がキノ達3人に迫る。
オト「あ、姉さん!」
オトがとっさにキノを庇う。
サキオも前に出て剣を構えた。
ジャイアントの棍棒が3人に届くその時、
ソラが棍棒と3人の間に割って入った。
ソラは無謀にも棍棒を両手で押すようなかっこうで受けた。
しかし、巨大な棍棒を受け止められるはずもなく、
ソラとキノ達は叩き飛ばされてしまった。
ソラ「きゃぁああ!」
キノ「うげ」
オト「うぐ」
サキオ「ぎゃ」
にゃん吉「ソラ!!!ばかな!」
マリアーノ「ソラーーー!!!」
ソラ「うう……」
ふらふらとしながらも、なんとかソラは立ち上がった。
にゃん吉「生きておったか」
マリアーノ「にゃん吉殿!早く治癒魔法を!」
「ぐるるるるあぁぁ」
にゃん吉も治癒魔法を行使したいと誰よりも強く思っていた。
しかし、そんな時間をこのジャイアントはくれそうもなかったのだった。
そして、さらに追い打ちをかけるように、
王都の半鐘がまた鳴り響いた。
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白村
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