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天空のソフィア  作者: 髪白悠 (白村から変えました)
第一部 ソラの旅編
16/23

第十六話 文献

 ダンジョン災害から1週間経った。

 マリアーノは後始末に追われ、

 なかなかソラ達と会う事ができずにいる。


 ソラはと言えば、

 街中の噂となってしまって、

 現在絶賛引きこもり中。


 そして引きこもってる間、

 ずっと考え込んでいた。


 あの時……


 ………………………………


 ソラは崩壊するダンジョンを、

 出口へと向かい駆け抜ける。


 何度崩れ落ちる天井の下敷きになりかけたか分からない。

 時には瓦礫を蹴り飛ばし、時にはぶった斬り突き進む。


 ソラに襟首を掴まれているにゃん吉は見ていた。

 疾るソラの背後の崩壊を。


 崩壊は絶望的な速さでソラ達を飲み込もうと迫って来ている。


 にゃん吉「ソラ、も、もうダメじゃ」

 

 ソラ「ダメじゃない!あたしは父さん母さんに会いたい!!会いたいのお!!!」


 ≪ドクン≫


 強い願いがソラに力を貸してくれる。


 ソラ「見えた!」


 出口の光が見えた。

 行ける。

 そう思った瞬間だった。

 ダンジョン崩壊が一気に進み、ソラ達を飲み込み始めた。


 ソラ「くっ!あとちょっとなのに!」


 絶望するより先に身体が動いていた。

 ソラは夢中でにゃん吉を出口へと投げ飛ばす。


 崩れ行く天井の隙間から、

 一瞬だけ、にゃん吉が出口から飛び出して行くのが見えた。


 そして、その後ガラガラと音を立てて、

 瓦礫はソラを埋めていく。


 もぉだめ!潰される!


 ソラ「……ん!あ、あれ?!」


 潰されるのを覚悟して、

 硬く目を瞑っていたソラだったが、

 一向に潰される気配が無い。


 ソラ「あ、」


 ソラは自分の全身に力が入り強張っていたのに気が付いた。

 手や足は、迫り来る瓦礫を全力で拒否して押し退けていたのだ。


 崩壊が収まった今では、ピクリとも動かなくなっていた。


 ソラ「あ、あたしいつのまにかこんな事……」


 でも、いずれにしてもこのままでは死んでしまう。


 ソラ「どうしよっか……」


 ソラは特級ダンジョンでの事を思い出した。


 強力な雷魔法は、木を真っ二つに割り、

 魔物をも一撃で仕留める。


 しかし地面だけは、ちょっと焦げ目ができる程度で、抉れたりはしなかった。

 その事をにゃん吉爺ちゃんに聞いたら、


 にゃん吉「理由はわしにも分からん。じゃが方法はある」


 と言って、雷で地面をも抉る方法を教えて貰った。


 その方法とは、膨大な魔力を雷に纏わせる事で可能になるとの事だった。


 にゃん吉「ただし、そんな事をすればあっという間に魔力切れを起こす、だからやらん方がええ」


 とも言っていた。


 そしてソラ自身も、

 あの時、事故だったとは言え、雷を食らっても気を失っただけで無傷だった。


 ソラ「やってみる!」


 『メーテオーローローギアー、雷神トニトゥルスよ、汝の刃を我が元に、我が魂を糧に力を示せ!』


 ソラは魔力を目一杯込める。


 そして、


『超稲妻落とし!≪パーフェクトケラヴノス≫!!』


 ソラ「行けーーー!!」


 ソラは衝撃に備え身体を丸める。


 次の瞬間、今まで経験もした事ない衝撃がソラを襲う。

 目を硬く閉じてるにも関わらず、

 視界は真っ白になり、

 雷の電撃が熱い熱となって全身に走る。

 

 お願い!私の身体、堪えて!


 実際にはほんの一瞬の出来事だったが、

 ソラには途方もない時間に思えた。

 

 やがて衝撃が収まり、

 眩しい光も収まった。


 ソラは目を開けて上を見上げる。


 ほんの僅かだが、陽の光が差し込んでるのが見える。

 でも脱出するには遠すぎる。

 

 これほどの大魔法でも届かなかった。

 もう魔法を放つ力は残っていない。


 でも何故だろう、まだ何かできる気がする。

 身体から湧き上がるものを感じる。

 

 以前、特急ダンジョンで自分の雷を食らった時は意識を無くしたソラだったが、

 今回は何故か力を感じていた。

 身体はピリピリと帯電さえもしてるかのようだった。

 

 どうしてか分からないけど、行ける気がする。


 先ほどの大魔法で、ほぼ魔力を使い切ったソラ。

 ソラに残されたのは、剣技しかない。


 ソラ「神剣!火山雷!!」


 ……………………………………


 あの時の私は明らかに力が増してた……


 にゃん吉「暇じゃのぉ」


 ソラ「うん」


 にゃん吉「どうしたんじゃ?」


 ソラ「あたしってさぁ、人間なのかな?ってね」


 にゃん吉「またその事か」


 にゃん吉には、ダンジョン崩壊の後、

 どうやって脱出したのかを話していた。

 元より間近でにゃん吉は見ていたが、

 どう言う状況だったのかを詳しく話していたのだった。


 ソラ「だってさぁ、考えれば考えるほど、あたしは化け物みたいだなぁって思うんだもん」


 にゃん吉「確かに龍人は特別な存在じゃが、今こうして話してるソラは人間と何ら変わりは無い、お主はただ、特異体質なだけじゃ」


 トントン


 不意にドアがノックされた。

 珍しく訪問者が来たようだ。


 マリアーノ「私です、マリアーノです、ソラ殿はいますか?」


 ソラ「マリーさん!」


 ソラはマリアーノを部屋に招き入れ、

 思わずといった感じに抱きついた。


 マリアーノ「ソラ殿?如何なされた?」


 にゃん吉「ソラはまだ12の子供じゃ、察してやってくれんか」


 マリアーノ「!」


 マリアーノは、ハッとした。

 言われてみればそうだ。

 マリアーノは龍人化したソラに何度も救われている。

 そんなソラに、マリアーノは憧れさえも抱いていたが、中身はまだ12歳の少女なのだ。

 そんな少女が、目の前で村を焼かれ、力に目覚め、おかしな連中に狙われている。

 もし、自分がその立場なら、平然としていられるだろうか?

 マリアーノにはその自信は無かった。


 ソラに対する気持ちに、

 愛おしいと思う感情が溢れてきた。


 マリアーノ「ソラ殿、いや、ソラ…」


 マリアーノは抱きつくソラの頭に、

 優しく手を置いた。


 ソラ「あたし、人間なのかな……」

 

 マリアーノにとってソラのその言葉は意外なものだった。

 確かに、ダンジョンをあっという間に攻略し、

 その後の脱出劇はまさに前代未聞だったが、


 だけど、


 マリアーノ「ソラの強さは、確かに人間離れしてるかも知れない、でもね、誰かの為に戦うのは、人間だから。それに、心を痛められるのも、人間だからなんだよ」


 ソラ「…うん、そうだね……ありがと」


 "心を痛められるのも人間だから"

 

 この言葉は、思いの外ソラの心を楽にした。


 ソラ「うふふ」


 ソラはまだマリアーノに抱きついたまま、

 嬉しくてつい笑ってしまった。


 マリアーノ「どうかしましたか?」


 ソラ「マリーさんやっと呼び捨てにくれた」


 マリアーノ「あ、いや、それは」


 ちょっと照れたような、困ったようなマリアーノを見上げ、ソラは笑った。


 ソラ「あははは」


 にゃん吉(ソラに笑顔が戻ったな。気持ちの切り替えが早いのは、ソラの良いところじゃ)


ソラ「ところでマリーさん、要件はなに?」


 マリアーノ「ああ、そうでした、お二人を王城の書庫に案内しますよ。今回のダンジョン災害から人々を救った功績もあり、王が特別に許可してくれました」


 にゃん吉「元々書庫には案内してくれる予定じゃったろ?」


 マリアーノ「私が案内しようと思ってたのは一般の書庫です。許可して貰ったのはもっと古い文献などもある特別な書庫ですよ」


 にゃん吉「それは凄い!」


 ソラ「でもなぁダンジョン災害から救ったって言っても、被害は出てるんでしょ?」


 マリアーノ「とんでもない、ソラの活躍のお陰で死者は居ないんですよ。これは凄い事です。そもそもダンジョンをあっという間に攻略した事自体で、被害そのものも最小限なのです。もっと胸を張って良いんですよ」


 ソラ「死んだ人いないの?ソラはてっきりたくさんいたかと思ってた」


 にゃん吉「わしも思ってたわい」


 マリアーノ「報告が遅くなって申し訳なかった、怪我人はいますが、みな元気ですよ」


 ソラ「そうなんだ、良かった。そうだ、あのテイマーの3人組はどうなったの?」


 マリアーノ「彼等も一緒になって魔物を討伐してましたが、気がついたら姿を消してましたよ。」


 ソラ「そうなんだ」


 マリアーノ「彼等も魔物討伐に協力してましたからね、今度見つけたとしてもどう対応したら良いのか」


 ソラ「悪い人達じゃないみたいだよ。多分また会うと思うけど……」


 ソラはサキオを思い出し苦笑気味だ。


 マリアーノ「まぁ対応は考えますよ。では行きましょうか」


 ソラ「うん」


 ……………………………………


 ソラ達は王城の書庫に招かれた。

 

 来る途中に駄々っ子ハンターの噂を耳にしたが、

 ソラに気が付く者は居なかった。


 その噂も悪い物では無かったのが、

 ソラの救いだった。


 書庫の扉をマリアーノが開け中に入ると、

 本独特の匂いが鼻をつく。


 大きなホールのように広い書庫は、

 壁や床に本棚が並び、

 国中の本が並べられている。


 ソラ「うわぁ凄い本」


 マリアーノ「こっちです。」


 マリアーノが更に書庫の内部を案内してくれる。

 奥に進むと、いかにも古い文献が並んでいる場所があった。


 にゃん吉「古い文献が沢山じゃな。これは凄い」


 マリアーノ「貴重な資料なので、扱いには注意をお願いします」


 ソラ「はい、分かりました」


 ソラとにゃん吉は、それぞれに文献を探す。


 ソラ「歴史…歴史……うーん、どれだろう」


 にゃん吉「わしは白虎の事が知りたいんじゃがな」


 マリアーノ「ならばこの辺り、かな?」


 マリアーノが探し出してきたのは、

『歴史と神話』と言う本だった。


 マリアーノ「にゃん吉殿のお探しの本は、ここではないかもしれませんね。司書に聞いてきます」


 にゃん吉「すまぬ」


 ソラ「ありがとう」


 ソラは手渡された本を、

 設えてある読書コーナーで広げて見る。


 うーん、ちょっと難しいかなぁ。


 ソラが知りたいのは歴史ではなく、世界樹へのヒントだ。


 にゃん吉「どれどれ、ふむ……」


 横からにゃん吉が本を覗き込み読み出していく。

 器用に肉球で本を捲っていくにゃん吉。


 にゃん吉「たしかに、ソラにはちと難しいのぉ」


 ソラ「世界樹かぁ、ほんとにあるのかなぁ……」


 ソラは呟きながら上を見上げる。


 ん?


 ふと、本棚の上に、ポンと乗せてある本が目に入る。


 ソラは立ち上がり、

 椅子を踏み台にして本を手にした。


 それは、紙束を皮で挟んで紐で括ってある、本というよりは、手帳に近い物だった。

 それもかなり年季の入った物だ。


 ソラは無造作に開いて見る。

 かなり痛んでいて、

 読めなくなっている部分が多い。


 うわ、これ凄く古い。


 ゆっくり捲り、読めそうな箇所を探る。

 すると目に止まる一文があった。


 "私は龍人と出会った"


 えっ?!


 ソラは古い本を机に置き、

 読める箇所を読み進む。


 "噂に聞く龍人は、とても穏やかで……思ったが……結論として、お伽話とは全く違う……心優しい種族で……"


 !!


 ソラ「爺ちゃん、これ見て!」


 にゃん吉「ん?何じゃそれは、文献か?」


 ソラ「なんか日記?みたいな感じだけど、ここ読んでみて」


 にゃん吉「心穏やか……じゃと?こっちの文献には真逆の事が書いてある。どういう事じゃ?」


 ソラ「真逆?」


 にゃん吉「そうじゃ、伝えられているお伽話の通り、この文献に載っている神話にも龍人は恐ろしい種族とある。この日記というか、手記じゃな。どこにあった?」


 ソラ「棚の上に置いてあったよ」


 にゃん吉「ふむ、誰の手記か知らんがとりあえず仕舞っておけ」


 ソラ「え?!良いのかなぁ」


 にゃん吉「そもそも棚の上にあるという事は忘れられとるじゃろ」


 ソラ「うん、分かった」


 にゃん吉「その前に…」


 にゃん吉は手記の皮表紙の裏を見る。


 アベラ・ペリティアという名前が記されていた。


 にゃん吉「ふむ、仕舞うんじゃ」


 ソラは収納魔法に手記を入れた。


 間もなくしてマリアーノが戻って来た。


 マリアーノ「にゃん吉殿!ありましたぞ、ずばり"白虎"という本です!」


 にゃん吉「おお!それは僥倖じゃ!」


 マリアーノ「ソラはどうですか?良い情報はありましたか?」


 ソラ「あ、あぁ、まだ、この本難しくてね」


 にゃん吉「ソラよ、今開いているページを読むんじゃ。それは神話と歴史の関係を解いてる本じゃ。良い情報が載っている。マリアーノは書物探しに鼻が効くようじゃな」


 ……………………………………


 一通り読み終わり、

 今はマリアーノと宿に向かって歩いている。


 マリアーノ「ソラはいつ出発しますか?」


 ソラ「どうしようかな、明日にでも出ようと思うんだけど、マリーはまた巡回の旅?」


 マリアーノ「明日ですかぁ、私の巡回は終わりました。これからどこに所属するか辞令待ちになりますね。」


 にゃん吉「ところでお主、この短期間で見違えるほど力を付けたようじゃが、身体強化魔法を使ったのか?」


 マリアーノ「はい、その通りです。まだまだ慣れてはいないのですが、もっと力を付けたいと思ってます」


 マリアーノはソラを見ながら言った。


 ソラ「?」


 マリアーノ「ソラ、もう足手纏いにはなりませんよ」


 ソラ「あぁそうゆう事か」


 マリアーノ「騎士団長として、力不足だったと痛感しました」


 にゃん吉「いや、その若さで、女性でありながら騎士団長なのは大した物じゃよ」


 マリアーノ「まだまだです。せめてソラと互角にはなりたいですよ」


 ソラ「ソラの場合は、ほら、ズルしてるみたいなものだからさ」


 マリアーノは、身体強化魔法を使う事がズルみたいに思っていた自分を思い出し、苦笑した。


 マリアーノ「私も、魔法はズルだと思ったましたよ。でもそれも立派な実力だと、今は思ってます」


 そうこうしてるうちに、

 やがて宿に着いた。


 マリアーノ「ではソラ、私はしばらく領門の警備に当たります。明日はそこでお別れですね」


 ソラ「うん…」


 マリアーノ「そんな顔しないでください。また明日お会いしましょう」


 そう言ってマリアーノは去って行った。

 


 

【読者の皆さま】


いつも読んでいただきありがとうございます。



小心者の私に、


↓ の★★★★★を押して勇気を下さい。


よろしくお願いします!




白村しらむら


↓ 作品一覧はこちら ↓

https://mypage.syosetu.com/1555046/


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