↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/74

秋川千鶴の場合17

 上手いこと丸め込まれた気がする。私は何も言い返せなかった。経費面を盾にされるとどうしもようもないのだ。笹原常務の言っていたこと。それ自体は理解できる。おそらく営業部に対して掲載先から打診があったのだろう。

『ウチの誌面広告に穴が空きました。半値で良いので載せませんか?』

 そんな感じの打診だ。魅力的な申し出だと思う。私だってもし営業部だったなら飛びつくかも知れない。(私なら広告掲載の場所に関して注文は付けるけれど)

 それにしても酷い気分だ。特の広報部の二人のあの顔がいけ好かなかった。勝ち誇ったような嫌や笑いが浮かんでいた。

『お前みたいに短絡的な考えでこちらは仕事をしていない』

 そう言われているような気がした。

『売り込みの世界に女が口を出すな』とも。

 なんで私の意見はことごとく通らないのだろう? 私は間違っていないはずだ。女性のために。それだけを願っただけなのに。

 女性下着メーカーなら女性の意思をもっと尊重すべきではないだろうか? 彼女たちが喜ぶことを追求し、嫌がることは避ける。それが普通なことではないだろうか?

 そんな質疑がぐるぐる回った。答えは出ている。全部男どもが悪い。あいつらが女性の権利を食い物にしているから悪いのだ。しかもただ食い物にするだけでは飽き足らず、女性解放の意思を踏みにじった。これは許すまじき行為だ。

 最高に気分が悪い。吐き気がする。

 私はそれからトイレの個室でしばらく突っ伏した。そして涙が零れる。嗚咽もする。

 なんで? なんで? なんで? 私の何が問題だったんだ。どうして、どうして。

 私は間違っていない。欠片も間違っていない。正義に基づいて動いた。なのにどうして……。そんな思いが口、そして喉から溢れかえってきた――。


 それから私はしばらく声を押し殺して泣いた。

 そしてトイレの扉が開く音が聞こえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。