錯綜する戦い 5
敵の行動を誘導して罠に嵌める。
戦闘訓練においてゴドリックがシュラにこれでもかと仕込まれた部分である。
気性が真っ直ぐで真面目過ぎるゴドリックには難しいものがあったが、『生き残りを賭けた戦いにおいてやれる事は全部やって当然。『卑怯』、『汚い』なんてのは敗者の戯言』と口を酸っぱくして言われた。
ゴドリックの攻撃で5人が即死。
3人が死亡秒読みレベルの瀕死の重傷、残りはHPの2~5割損失したものの中級ポーションで戦闘復帰可能といった具合だ。
騎士達が吹き飛ばされてポーションを服用して復帰している間にもゴドリックの範囲回復の効果でSTの減少は止まらない。
更に言えば、ゴドリックはその間に先頭に居て転倒し、味方に踏み台にされた結果内部を耕された地面に埋もれた騎士達を踏み付けたり、杖を振り下ろしたりして命を刈り取っていた。
即席の畑の中で6人の騎士達の命が収穫される事となった。
ゴドリックの罠によって10人以上があっという間に死亡した。
元の総数の3割減といったところだ。
一気に数を減らせたが、それでもゴドリックが勝てると言える人数には遠い。
同じ手は確実に通用しない。
騎士達はゴドリックが土属性の魔術を使えるものとして行動するのは明らかだ。
ゴドリックの拙い魔術では足場を弄るのが精々だ。
ゴドリックの種族がオークであり、回復魔術を扱えると分かった後でも無意識に騎士達が他の魔術は扱えないと思い込んでしまった結果成功した不意討ちだ。
逆を言えばそれだけ魔術を扱えるオークは少ないという証左である。
土属性魔術で足場に干渉するのは使い方としては実にポピュラーなものだ。
故に対策も当然充実しているものなのだ。
多少手を変えた所で同じ事だ。
そして、騎士達にとって最悪なのは人数が減った状態でも状況は全く変わっていないという辺りだ。
それでいて先程の突撃で全速力のダッシュ、ゴドリックの攻撃により強制的にキャンセルさせられた戦技、ポーション使用による急速な傷を回復等で騎士達全員が大きくSTを削られている。
その状態でST強制消費状態の継続。
地下に居るので分かり難いが里は炎に呑まれようとしている。
短期決戦以外の道が無い状態だ。
その中でもしっかりと体勢を立て直す事を優先した辺り、騎士達は場慣れしていた。
ゴドリックの全周を再度取り囲む。
「敵は土属性魔術を使う!確実に『空歩』で対応しろ!油断するなよ、行くぞォッ!!」
再度武器を構えて特攻してくる騎士達。
『(特殊スキル『表皮硬質化』、補助魔術『身体強化』、防護魔術『装着型魔力障壁』)』
その中でゴドリックは黙々と防備を固める。
流石に無傷では乗り切れないと判断しての事だ。
その間にも騎士達はゴドリックへと迫る。
『(回復魔術『小さき癒しの領域』)』
騎士達が目前まで迫った瞬間、『小さき癒しの光』範囲版と言える回復魔術を発動させる。
ゴドリックを中心とする半径5m以内に『小さき癒しの光』と同様の効果がもたらされる。
中級ポーションで回復しきれなかった騎士達の傷が癒え全快する。
それと同時に全員のSTの3割が一瞬にして失われる。
「なッ……!?」
残存STが3割以下だった者達は揃ってガクリと膝から崩れ落ちる。
3割以上STを残していた面々に関しても戦技を発動しようとしてST不足により強制キャンセルさせられた者達もいた。
だが、それでも全員が行動不能となった訳では無い。
ギュッと身を小さく屈めてゴドリックは騎士達の繰り出した攻撃を受ける。
太腿や上腕、脇腹といった鎧に覆われていない部分に次々と剣が突き刺さる。
戦技を発動出来た10数人の攻撃だけが通った。
ST不足で戦技をキャンセルされた者達の攻撃はゴドリックの硬質化した皮膚に弾き返されていた。
全体の半数以下の攻撃しか通らなかった。
しかも、防御をしっかりと固めていたゴドリックはきっちり全ての攻撃に対して急所を外すように動いていた。
「グオオオオオッッ!!!!」
その結果、ゴドリックは見事に健在であった。
騎士達の攻撃を受けきったゴドリックが防御姿勢を解除して大きく吠えた。




