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錯綜する戦い 4

騎士達がやけくそ気味に士気を上げている中、ゴドリックは騎士たちにとって予想外の行動に出る。


『(治癒力増強・陣)』


その術の効果は『治癒力増強』の範囲版だ。


自身を中心とする半径10m以内において『治癒力増強』と同様の効果をもたらす。


『治癒力増強』とは別の魔術なので効果の重ね掛けが可能だったりする。


自然回復力が強化される代わりに体力の消耗も加速されるのだが、ST(スタミナ)の値が高いゴドリックは気にするほどでは無いという。


STに関して問題があるのはむしろ騎士達の方だ。


陣形を組み入れ替わりながら行動することで全体としての体力の消耗を押さえつつ火力を維持していた訳だが、『治癒力増強・陣』によって強制的にSTの消耗を強いられる形になった。


更に言えば、騎士達はエルフ達の抵抗によって既にかなりのSTを消耗している状態だ。


STを回復するどころか削られるというのはかなり大きな問題となる。


普通なら乱戦において範囲回復系統の術が使われる事は先ず無い。


敵まで回復してしまうからだ。


しかしながら、一撃で騎士達のHPを全損できるだけの攻撃力を保有するゴドリックからすれば敵が回復しようと一向に何の問題も無いという。


騎士達と違いゴドリックは長期戦上等の構えである。


既に2度も焼き打ちに遭った経験があり、巻き込まれても自身が生き残れる確信があるからだ。


その頑丈さと生存能力の高さがゴドリック最大の武器だ。


ゴドリックが騎士達を引き付けていればその分エーゼルの負担が減るし、エーゼルが時間を稼ぎたがっているというのを感じ取っていた故の行動でもある。


ゴドリックは武骨だが空気の読める男であった。


質の悪い事に全力で短期決戦を仕掛ければSTの消耗が更に早まるという辺りだろう。


押し切れなかった場合が地獄となる。


それが分かった上で騎士達は短期決戦を行わなければならないのだから、尚更質が悪いと言えよう。


だが、本質的な話をすればこれは一種の賭けでもある。


そもそもの話ゴドリックは回復魔術という札を切っていなかったとはいえ騎士達20人相手でも辛勝だったのだ。


その騎士達を倒した事で多少のレベルアップが成されたとはいえ、その倍以上の数を相手にして勝てる道理が無い。


回復魔術があってもそれは変わらない。


いずれ魔力切れで限界も訪れる。


時間の無い騎士達の攻めはより苛烈さを増すだろう。


それにゴドリックが耐えきれるかどうか。


そこが勝負所となる。


「包囲、突撃ィィッ!!」


ゴドリックを全方向から囲み、全力で助走をつけて殺到する。


「フンッ!!」


ドンッッ!!


騎士達が駆け出すのと同時にゴドリックは全力でただ踏み込んだ。


その衝撃で地面と言うか地下空間全体が一瞬揺れた。


その振動に騎士達は転倒こそしなかったが少しだけバランスを崩し、想定よりも速度を落とされた。


天井からパラパラと土や石の欠片が落ちて来る。


力に優れるゴドリックの踏み込みはそれだけの衝撃をもたらす。


出鼻から崩されて騎士達は顔を顰めた。


それでも尚突き進むのを止めなかった。


騎士達がゴドリックの手前2m辺りまで迫った辺りで先頭に居た騎士達の踏み出した足が突如沈み込んだ。


『!!?』


想定外の出来事に騎士達はたたらを踏む。


ゴドリックは踏み込むのと同時に魔術を発動させていた。


使ったのはゴドリックが畑を耕すのに使う土と風の複合魔術だ。


難しい術では無い上に普段から使い慣れたものなので詠唱は一切必要としない。


それで自身の足場を除く周囲2mの範囲の地面の中を耕してふかふかにしておいたのだ。


見た目は変わらない上に振動による動揺で騎士達はそれに気付けなかった為、見事に踏み抜いてしまったのだ。


勢いがあった上に後ろから来る者達に押されて先頭に居た騎士達は揃って転倒してしまう。


当然、速度は激減する。


「ガァァァァッッ!!」


その隙を逃がすゴドリックではない。


全力で杖を振るって全周を薙ぎ払う。


先頭の騎士達を踏み付けにして飛び掛かろうとしていた騎士達が揃って吹き飛ばされた。


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