錯綜する戦い 6
筋肉を締め付けてゴドリックは自らの体に刺さった武器が抜けない様にしつつ、杖で薙ぎ払う。
「くっ……!」
ゴドリックが動き出してからの騎士達の行動は早かった。
武器を諦めて即座に回避行動に移っていた。
武器に拘れば一撃で粉砕される未来しか見えなかったからだ。
辛うじてではあるが、動ける面々の全員が回避に成功した。
が、騎士達にとって状況は最悪となった。
戦技を用いてダメージを与える事に成功した者達はメインの武器を失い。
武器を持っている者達はST不足で戦技をキャンセルさせられて攻撃を弾かれた者達のみ。
ST切れで動けなくなった騎士達は、『治癒力増強・陣』の効果で強制的にST消費を強いられて胸を押さえ悶え苦しむ。
STが尽きた状態でのST消費は生命力を消費する事となり、強烈な飢餓状態を引き起こす。
そんな満身創痍な状態だ。
この状態が続けば当然最終的には死に至る。
(ティアリエ殿は『治癒魔術で傷を治すのにはそれ相応の体力が持っていかれる』、『不慮の事故扱いで全力で殺しに行くような人も出る』と言っていた)
完全にそれを悪用した戦い方だ。
ゴドリックは彼女からの教えを悪用してしまったことに罪悪感を感じてはいたが、生き残りを賭けた戦いである以上そうも言ってられない事を理解しているので割り切っている。
ST切れで崩れ落ちた騎士達は膝立ちすらできない状態で倒れ伏してしまっている。
手足の痙攣や意識の低下等、既に軽度とは言い難いハンガーノックの症状が出ていた。
(あいつらはもう無理だな。回復するには時間が掛かり過ぎる)
ハンガーノックの厄介な所は重度になると回復が難しい事にある。
時間の無い現状では回復する頃には里は火の海に包まれる事になる。
退避に成功した騎士達は倒れ伏した者達に関しては既に諦めていた。
ゴドリックは動けなくなった騎士達に対して、確実に止めを刺している。
それは苦痛を長引かせないというゴドリックなりの慈悲だ。
個人的な恨みを抱える敵であれ、命のやり取りをする相手に対しては……
命のやり取りをする相手だからこそゴドリックは誠意を以て臨む。
傍目から見れば圧倒的にゴドリックが優勢という状況だ。
だが、実情としてはそうとも言えなかった。
何故かと言えば、ゴドリックの魔力(MP)は尽きかけているからだ。
回復魔術は他の魔術と比較して消費魔力が重いのだ。
単体対象の初級レベルのものでさえ他の属性魔術で言えば中級クラスの魔力を消費してしまう。
それの範囲版ともなれば、下手をすれば上級クラスの魔力を消費する。
種族的に保有魔力が多くないゴドリックでは何度も使えば魔力が切れて当然なのだ。
これが種族的に保有魔力が多く、魔術に対する適性の高いミラフィアやエーゼルのようなエルフやティアリエのような翠翼種であれば違っただろう。
ゴドリックはオークとしては異様なレベルで魔術に対する適性が高いと言える。
それでも元々からして適性の高い種族には全く及ばないのだ。
それは彼がどれだけ努力しようと変わらない無情な現実だ。
『所詮はオーク』、『魔力量はそう多くはない』という騎士の言葉は実に正しい。
ここまでやってようやく実状的には戦力としては五分五分といった具合だ。
騎士達にとって運が悪かったのはエーゼル達エルフとの戦闘や追走で体力回復効果のあるポーションを既に使い切ってしまっていた点だ。
HPと違い普通に休んでいればそう長くない時間で自然回復するSTは優先度が高いとは言えない。
緊急時の備えとして1~2本携帯することはあっても、そう多くは所持しないものなのだ。
その分、食料やらHPやMPを回復できるポーションを多めに入れるのが普通であり、当然騎士達はそうしていた。
それが今の現状を招いていた。
(さぁ、来るなら来い!カルディアの騎士達よ。手前の持てる全てを以て戦おう)
息を荒くして肩を上下させている騎士達を睥睨して、ゴドリックは気合を入れてただ杖を構える。
必死で向かって来るであろう騎士達を迎え撃つ気満々であった。




