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それぞれの戦い(エーゼル) 29

先に放たれた左右にそれぞれ4本ずつ放たれた矢はレイシィの前の泥の塊を避ける軌道でレイシィに向かう。


そして、それに少しだけ遅れるタイミングで後に放たれた矢が続いている。


全ての矢に強い魔力が込められている。


それら全てが同じタイミングで殺到する。


「くっ……」


エーゼルの斉射にレイシィは顔を(しか)める。


対応しない訳にはいかないからだ。


先ずは飛び退いて回避しようとするのだが……


ズン!!


レイシィの上方から圧力が加わり、足に魔力を展開させて自らの発生させた泥沼の上に立っていたレイシィの足が泥に押し込まれて、膝下の辺りまで埋まって移動がままならなくなる。


田んぼで体験すると分かるが、足が脛の中程まで埋まると移動と言うのは物凄く困難になる。


無理に移動しようとすれば、倒れて泥の中へと更に押し込まれる展開が目に見えていたのでレイシィは下手に動こうとはしなかった。


泥沼を解除すればその展開は逃れられるが広域複合魔術である『深淵なる泥濘』を再展開するには長い時間を要する。


レイシィはその時間をエーゼルとの会話で稼いでいたが、再度展開させる程の時間をエーゼルが与えないのは明白だ。


上方からレイシィに向けて吹く風による加圧。


そんな単純な術でレイシィの作り出した状況さえもエーゼルは利用していた。


回避という選択を封じられて、レイシィは向かって来る多数の矢を睨みつける。


ビッ!


泥の塊から左右に向けて8本の触手が伸びる。


8本の矢は上下の間隔が広く取られていた。


無論、迎撃に余分な体積を使わせる為のエーゼルの策だ。


泥が矢を打ち払う為に接触した瞬間。


バァンッ!!


大きな破裂音。


泥の塊を避ける軌道で放たれた矢には極限までに高圧圧縮された破裂の魔力が込められていた。


会話中に戦闘の準備を進めていたのはレイシィだけではない。


エーゼルもまた密かに矢に魔力を込めていたのだ。


そして、それは戦闘が始まってからも継続されていた。


強烈な魔力の炸裂は延ばされた泥を散らして大きく吹き飛ばす。


先の矢の迎撃で体積を大きく減らした状態の泥の塊に対して、後の矢が殺到する。


ズバァンッ!!


手前の4本の矢が突き刺さって同時に破裂する。


様子見の段階で放ったそれとは比べ物にならない強さの衝撃が同時に4発。


それによって表層の粘性の高い泥が吹き飛ばされる。


そして、深層の硬質な泥の層が剥き出しとなる。


衝撃を吸収する役目の表層の泥が無くなった中に奥に待機していた3本の矢が1列縦隊で飛び込む。


ガガガガガッ!!


硬質な泥を削り取る音が響く。


矢には貫通よりも更に硬質な障壁を突破する為の魔力強化が施されていた。


矢の先端で高速回転する錐状の魔力と矢の後端で加速推進させる力を発生させる魔力が込められた強化。


穿孔の強化が施された矢がガリガリと泥を削りながら突き進む。


1本目の矢が突破できずに止まるが、2本目の矢が1本目の矢の上から突き刺さり、更に掘削を進めて行く。


ガガガガガガッ!!


エーゼルはレイシィが泥の塊にそうしていたように段階的に穿孔の強化を強めていた。


故に1本目よりも激しい音が鳴り響く。


2本目の矢は泥の壁を突破するまでには至らなかったが、矢の先端が出た。


そこに間髪入れずに3本目の矢が飛び込む。


その矢はアッサリと泥の壁を突破して、レイシィへと向けて突き進む。


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