それぞれの戦い(エーゼル) 24
バリケードと外壁の外に仕掛けていた罠が軒並み排除された。
それだけでも大問題なのだが、更に状況は悪化する。
元の状態に戻った地面からズズズと土で成形された武骨な人型が20程せり上がる。
そして、その人型は緩慢ながらも動き出し、バリケードが無くなった外壁の穴から里に入ろうとするではないか。
「土の精霊を使った簡易ゴーレムか!」
土で人型を成形し、その中に土の精霊を込めれば精霊術による簡易ゴーレムの完成だ。
錬金術や魔術で作られるゴーレムよりも手軽に作り出せる上に操作は精霊が行うので雑な指示でも勝手に動いてくれる。
即座に用意できる増援だ。
欠点としては他の手段で作られたゴーレムよりも圧倒的に弱いという点と魔力の費用対効果が悪いというぐらい。
どれだけ弱かったとしても放置して良いものではない。
「警備部の者達でゴーレムを迎撃しろ!狩猟部は我と共に騎士共への攻撃を継続せよ!」
手数が減るのは痛いが、その前に里の内側から暴れられるのはもっとマズイ。
敵の術士はエルフ側が嫌がる行動を熟知していた。
騎士達をバレずに接近する為の囮としたが、飽くまでも本命は向こうなのだ。
接近して罠と障害を排除して道を確保したら即座に使い捨ての囮を召喚して、騎士達を迎撃する手数を削ぎに掛かって来た。
「エーゼル様!敵のゴーレムですが、倒しても倒しても次が湧いてきます!キリがありません!」
見れば、倒した数に等しいゴーレムが外壁の手前から出て来る。
中に入る精霊の数には限りがあるようで20体以上には増えないようだが、常に湧き続ける20体の戦力は厄介だと言わざるを得ない。
「泣き言言う暇があれば倒し続けろ!敵の魔力を削ぎ落とせるはずだ!無駄では無い!」
(これは本気で術士の居場所を炙り出さねばならないようだ)
「生産部に伝令!急ぎ油と接着剤を持って来させろ、ありったけだ!」
「了解です!」
エーゼルは迎撃の手を止めず、近くに居た若手に直接指示を出す。
1分も経たない間に伝令に出した若手が戻って来る。
「先に接着剤が来ます!油は農耕部の者達が運んで来ています!」
「警備部!接着剤はゴーレムにぶちまけて固めてしまえ!」
『了解!!』
届いた接着剤はガツンとゴーレムに壺ごとぶつけられる。
壺が割れて接着剤がぶちまけられてゴーレム達に付着する。
そして、警備部の者達はこれまでのようにゴーレムを粉砕するのではなく、ゴーレムとゴーレムがぶつかり合うように吹っ飛ばしていく。
ゴーレム達が一つの塊の様に押し込まれた段階で全方位から強い風が吹く。
土煙を含む風で乾燥を一気に早めているのだ。
「固めたゴーレムは放置!そのままバリケード代わりにしろ!」
倒しても補充されるなら倒さずに封じて、失った壁の材料にする。
それがエーゼルの判断であった。
土や埃によって関節部分までガチガチに固められたゴーレム達は身動き一つとれない状態となる。
依代を破壊された訳では無いので中に居るだろう土の精霊はゴーレムの中から抜け出せず追加戦力の補充も出来ない。
「油、来ました!」
「警備部は騎士共への迎撃を再開せよ!我は敵の術士を炙り出す!」
『了解!』
エーゼルは農耕部の者達から油を受け取ると、風を使って外壁の外に向けて油を細かい霧状にして広範囲に広げていく。
そして、十分に広げた段階で、
「皆の者、各自息を止め、障壁を展開せよ!」
と命を下す。
全員が指示に従ったのを確認して……
「着火!」
点火の魔術を発動させた。
広範囲に撒き散らされた霧状の油は瞬く間に燃えて閃光を巻き起こした。




