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それぞれの戦い(エーゼル) 23

エーゼルの援護により敵の防御術の効果は大きく低減させられ、魔力を込める事で貫通力を高められた矢が次々と騎士達へと突き刺さって行く。


いかんせんレベル差があるので急所に当たらない限り1~2発直撃した程度では落ちない。


「敵の防御は我が散らす!撃ち続けろ!」


『ハッ!』


エーゼルの指示通り、防衛を担うエルフの面々は矢も魔力も出し惜しみせずに放ち続ける。


(術者はどこだ……出来る事なら早い内に片付けたい)


エーゼルによって水と風の2重防御の効果は大きく低減させられてはいるが、効果が無いという訳では無い。


エルフの中で最大の火力を有するエーゼルを援護に回しているという点と、エーゼルの魔力消費を一気に早めているという点で実に有効な成果を上げている。


エーゼルの力なら防御術を突破する事は可能だ。


だが、面制圧ではとにかく手数が要るので、攻撃に回る訳にもいかないのだ。


エーゼルが一度に攻撃できる数よりも、防御を散らして他の面々の攻撃が通るようにした方が圧倒的に多いからだ。


術者を潰せば、エーゼルも攻勢に回れる。


だが、現状では索敵に力を入れるのも難しいという状態であった。


一応、風の精霊に周辺を探って貰っているが、発見には至っていない。


(あの騎士達の中には多分居ない。だが、連中の奥の方にもそれらしい人影は無い)


完全に風の精霊任せというだけではなく肉眼でもエーゼルは術者の位置を探っているのだが、それも成果は上がっていない。


「チッ……!」


もどかしい思いからエーゼルは舌打ちする。


敵の術によって思ったように騎士達の数を削れていない。


内心としては攻撃に回りたいからこその舌打ちでもあった。


そんな中でも……


いや、そんな中だからこそ事態というものは動く。


不意に魔力の気配を感じた。


しかも、かなり近くで。


「若様!!」


壁に空いた穴を埋める為に築いたバリケード。


その下の地面が泥沼となり、ズブズブとバリケードそのものが沈んでいく。


沈んだのはバリケードだけではない。


その周辺に設置していた仕掛け罠もだ。


(しまった、騎士達の部隊は囮か!)


姿の見えない術者は離れた位置から騎士達をフォローしながら接近していたのだ。


そして、周辺に泥沼を発生させたのだろう。


(エルフが森の中で接近に気付けなかっただと!?)


戦闘に意識が向けられていたとはいえ、森の中におけるエルフの感知能力は高い。


(直前まで魔力の流れも感じなかった。途轍もない隠密性だぞ!?)


エルフは魔力の扱いに優れる種族であるので、当然魔力の流れに関しても鋭敏な感覚を有する。


目の前で術を使われて、気配も魔力も感じられないというのは相当な事態なのだ。


(まさか、敵の術者は同族(エルフ)か!)


だとすれば、これまでの現象も理解できる。


森の中における隠密性は種族特性によるもの。


術の使用に発動まで魔力を感知できなかったのは精霊を介した精霊術だったからだろう。


精霊に対して事前に魔力を分け与えておけば、術が発動するまで魔力の活性化を感知できない。


魔術と違って本当に細かい緻密な制御が難しい代わりに精霊術は魔力さえあれば雑な指示で術を発動できる上に隠密性に優れる。


エーゼルには土属性の適性は無いので、土の精霊の声は聞き取れないのだ。


エルフは風属性の適性持ちが多いので同族であれば、風の精霊を利用した探査の手口を知られていても不思議では無い。


バリケードや罠が泥沼に完全に沈むと、泥沼は元の土に戻る。


騎士達が突っ込んでくる為の道を作られた。


それは実に不味い状況であった。


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