それぞれの戦い(エーゼル) 20
自らの時間を捧げた事で聖樹との繋がりを強めていたエーゼルは聖樹の力を利用して張られている探知結界からの状況を感じ取っていた。
(敵は少しずつ防護結界の外側に集まって来ているようだ)
だが、それが本当に正しいのかは分からない。
敵はどうにもエルフの防護や探知に詳しいみたいなのでそれが正しいと判断できない状態であった。
だからこそ、風の精霊の目を借りて確認していた。
エーゼルは左目の視界を精霊と直結させて精霊の見ている光景を見ていた。
既にその存在は露見しているので隠すつもりはないらしく、堂々と探知結界の中に留まっている。
空を漂う風の精霊の目を借りて、エーゼルは作業しながら監視をしていた。
獣道でゴドリックと出くわした事で散開して道なき道を行く事を余儀なくされた騎士達は集結を待っていた。
純粋な戦力で言えば騎士達の方が圧倒的に上だ。
だが、陣地に立てこもり防備を整えた集団を相手するには数が必要になる。
ゴドリックの攻撃によって騎士達は負傷の度合いによって機動力にも差が出た上に通る道も様々だった。
その結果、集結がかなり遅らされていた。
それに森というのは真っ直ぐ進めるものでは無い。
道を外れれば確実に回り道を余儀なくされる。
方向感覚に優れていなければ迷う者だって出て来る。
部隊を取り纏める部隊長は今の状況に静かな苛立ちを募らせていた。
人数が集まるのを待ってはいるが何人集まるか読めないからだ。
それに計画が狂わされっ放しだというのもある。
最初に、エルフの里に火を放つ予定だった部隊の半数が潰されて、強引に襲撃が決行されたのから始まり、北に潜んでいた部隊はやって来ず、潜伏していた地下空間から出てみたらエルフの集団と遭遇戦……
途中から参戦してきたハイエルフの少年に翻弄され、撤退を始めたハイエルフの少年を追い詰めたと思えば黒いオークからの襲撃。
現状、何一つとして上手く行っていない。
今すぐエルフの里に襲撃を仕掛けたい程であったが、人数が足りていない。
時間が経つほどにエルフ達は迎撃の準備を整えて行くと分かりながらも待たないといけないというジレンマを抱えていた。
そんな状態であれば苛立ちを感じずにはいられないだろう。
少しずつではあるが人数が増えている。
だが、まだ足りない。
攻城戦には敵の3倍以上の戦力が必要とされる。
まともに戦えるエルフは100人に満たない程度だ。
地力で言えば騎士達はエルフ達の数倍は強い。
あの防備を突破するには最低でも50人は欲しい。
現状集まっているのは30人満たない程度だ。
ゴドリックの襲撃はエルフ達に時間と言うアドバンテージを与えていた。
(黒いオークの追撃を防ぐ為に20と数人を残してきたが、どうなる事やら)
最悪全滅も有り得ると考えていた。
オークとしては全てが異様だった。
3mを超す巨躯、木々を障害としない圧倒的な膂力、所々知性を感じさせる戦い方、整い過ぎている装備。
一体どこから来たというのか。
目的も分からない。
(オークがエルフに協力するなど有り得るのか?)
殆どの種族から蛮族というかほぼ害獣として認識されている種族だ。
(変異種なのは見て分かるが、あの黒いオークは明らかに普通じゃない。こちらの目的を的確に妨害してきた。闘争こそ本能とでも言わんばかりの粗野な種族が知的に立ちまわっていた。それにあの弾ける槍も身に纏っていた鎧も明らかにあのオーク専用に調整されていた。更に言えば空間袋まで持っていた。あれらの出所はどこなんだ?)
全く以て訳が分からない。
何もかもおかしい。
所持品はどれ1つとしてオークが所持している様な品では無い。
(何より、あのオークは道具を使いこなしていた)
傍目から見たら粗野そのものに見えた。
だが、よく見れば棒の振り方が綺麗だったのだ。
武術の基礎を踏まえていた。
(どうなっているというのだ!?)
襲撃を仕掛ける為には待たないといけないというのに、黒いオークを仕留める為に残してきた面々が全滅した場合も考慮に入れると長々と待っている訳にはいかない。
そんなジレンマも抱えていた。




