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それぞれの戦い(エーゼル) 19

エーゼルが西側の外壁付近に向かうと現場は困惑している様子だった。


それは当然であった。


聖樹が急に成長して、聖樹から自らに流れ込む力が大きくなっているのだ。


敵が向かって来ている事に気付けない程に戸惑っている様子だった。


「皆の者、落ち着け!!」


エーゼルが声を張り上げると現場に居た全員の視線がエーゼルに集中する。


そして、全員が唖然とした様子で驚いた顔を見せる。


「エルアルト……?」


狩猟部の長がエーゼルの顔を見てポツリと零した名は、エーゼルの父親の名であった。


(どうやら、今の我の姿は父にそっくりらしい)


鏡など見ていなかったのでエーゼルとしては今明らかになった事実であった。


血の繋がった親子なので似ていても不思議ではない。


「悪いが、我は父では無い」


「若様なのか……?」


「ああ。色々と戸惑う事が多いかもしれないが、今は気にしている時間は無い。敵が向かって来ている。襲撃に備えを進めろ、手を止めるな!」


『り、了解!』


エーゼルの言葉で現実に引き戻された彼らは作業を再開する。


「……若様、大分無茶をされましたな。何年聖樹に未来の時間を捧げたのですか?」


エーゼルの姿を見て、何をしたのか察した狩猟部の長は聞く。


「知るか。一応聖樹には戦える程度の時間を残すようには頼んではいる」


感覚的にではあるが、エーゼル9割以上の時間を聖樹に提供したと感じていた。


長い寿命を持つハイエルフだからこそ9割を超える時間を捧げても100年以上残る。


だから、ここで戦う分ぐらいであれば問題無いのだ。


もし仮に普人が同じ事をすれば、戦うどころか立ち上がれるかさえも怪しい。


「済まん。俺達が不甲斐ないばかりに……」


堂々と振る舞うエーゼルの姿を見て、一人の大人としてここまでエーゼルに頼り切りな状況に心底悔いていた。


「気にする必要は無い。どちらにせよここで負ければ未来の時間など意味を成さない。ならば、使えるものは使える内に使うべきだ」


それが自分の命であれエーゼルは使えるものは使う。


「成すべきことを成す。我々に出来るのはそれだけだ」


そう言ってエーゼルは騎士達の迎撃の準備に加わった。


その背中を眺めていた狩猟部の長は、


「エルアルト、お前の息子はお前に似て立派に育ったよ。……立派過ぎてこっちが情けなくなるぐらいに」


かつての教え子の息子の大きな姿に嬉しさと悲しさが混じり合ったような複雑な表情を浮かべていた。


「さて、俺も俺の出来る事で頑張る若人を支えてやらんとな。老骨としては情けない姿ばかり見せてもいられないからな」


自身に出来る全力を尽くすエーゼルの姿は自然とその場に居る者達を奮い立たせた。


立場ではなくその気高さがそうさせていた。


(さて、我が出来る事は全てやった。だが、それでも勝てるかどうかは正直怪しいな)


聖樹が成長、活性化したことでエルフ全体として強化は成された。


だが、相手は元からして現状の強化された状態のエルフ達より強いのだ。


先の戦いではとにかく近付けない様に足止めして遠距離攻撃で攻め続けたからどうにかなっていただけに過ぎない。


真正面からぶつかっては蹴散らされるという事情は全く変わっていない。


その例外にエーゼルが1人増えたというだけだ。


1対1なら真正面からぶつかってもエーゼルが勝てるぐらいには強くなったが、相手が3人になったら押し切られる程度であった。


エルフという種族は元より肉体的に頑丈な種族ではないので大幅な強化が成されても接近戦で無双できる訳では無いのだ。


その技術に関しても乏しい。


能力的に勝っていても敵である騎士達の方がその手の技術は間違いなく上である。


状況は変わらないのだが、能力値が上がればそれだけ戦術にも幅が出る。


先程まで出来なかった事も出来るのだ。


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