↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/331

それぞれの戦い(エーゼル) 18

聖樹には森を生み出す能力……


命を育む能力が備わっている。


それは普通なら植物限定で作用する能力なのだが、聖樹との親和性を有する種族であるエルフは例外であった。


だが、自然では無い強引に引き起こした無理矢理過ぎる成長は拷問にも等しい苦痛をもたらす。


エーゼルは泣き言一つ漏らさず、それに耐えきった。


エーゼルとしては実際どのくらいの時間が経ったのか認識できない程に急成長のもたらした激痛は辛い物だった。


実際には短かったのかもしれないが、全身が内側から引き裂かれるような痛みはとんでもなく長い時間に感じさせられていた。


そんな痛みに耐えきったエーゼルは20歳前後ぐらいの姿まで成長していた。


手足が大きく伸びて、スラリと高い長身となっていた。


元々細身であるエルフなので、服がはち切れるという事態にはなっていなかったが明らかにサイズが合っていないので色々な個所が窮屈に感じられた。


元々からして鍛えていたエーゼルは細身ではあるが、なよなよとした印象は皆無であった。


その引き締まった体はまるで芸術品のようでありながら、強い意思の宿った瞳から弱さは感じられない。


「これは一度、家に戻った方が良いな……」


息を整えながら、エーゼルは一人呟く。


エーゼルは聖樹に向かい一礼して、聖樹の下を離れてもう一度自宅へと向かった。


そして、遺品として残してあった父親の装備品を身に纏った。


父親の衣服はまるで合わせたかのように成長したエーゼルにピッタリのサイズだった。


(我が無意識にイメージした戦う大人の姿が父だったというのも関係しているのかもしれない)


父親の装備をその身に着けたエーゼルはそんな事を思った。


エーゼルにとって一番身近な大人は当然、自らの父親であった。


そして、一番尊敬していた大人もまた父親であった。


父親が愛用していた大きな弓に弦を張る。


今までは使えもしなかった固く強い弦を張った。


聖樹が成長したことで聖樹から受けられる恩恵の力が大きくなっているので、それぐらいしなければ逆に装備の方が持たないという事態になりかねないからであった。


調子を確かめる為に弓を握って弦を引く。


問題無く引ける。


空射ちはしない。


弓に悪影響が出易いから当然だ。


ゆっくりと腕を使って弦を戻す。


父親の使っていた弓は思った以上にしっくりと来た。


弓に魔力を流し込んで浸透させることで強度を高めておく。


基礎ステータスが上昇したことに加え、強い弦を張った事で普通に使用しては弓の耐久値がガンガン減って壊れてしまうので当然の処置だ。


エーゼルとしても思い入れのある弓なので壊したくはないという思いがあった。


弓に対してしっかりと強化を施すと、エーゼルは家を出て軽く体を動かして、感覚を確かめる。


頭身が急に上がった事で今までとはバランスが大分違うのでそれを確かめていた。


(……これは感覚を掴むまでにしばらく時間が掛かりそうだ)


それもまた当然であった。


体のサイズが変わっただけだったなら対応するのも簡単だっただろう。


だが、今は聖樹の成長と活性化によって能力値全てにブーストが掛かっている状態なのだ。


大きな力はというものは扱いが難しくなるものなのだ。


少しずつ段階的に強さを身に着けていくのならそれは問題にはならないが、今回の様に一気に力を強めた場合は特にそうだ。


何せ元々自らが扱ったことのない領域に一足飛びに踏み入るのだから、難しくて当たり前と言えた。


(だが、感覚を掌握できるまでなどと悠長にしてもいられないようだ)


里の西側に残してきた風の精霊から敵の一団の接近が知らされた。


「仕方ない、感覚は実戦で掴むしかないか」


そう言ってエーゼルは軽やかに走り出し、風の様に駆け抜けていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。