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それぞれの戦い(ゴドリック) 13

(ふむ、行ったか)


ゴドリックは偵察兵の存在に気付いていた。


自身が戦場に立っていない故に油断したのだろう、気配の隠蔽が甘く存在を察知出来た。


(アレを追えば本隊に辿り着く筈だ。連中がエーゼル達に追い付く前に仕掛けたいものだ)


臭いで居場所もバッチリ追える。


(手前達を見張っていた者があの薬の存在に気付いてくれれば良いが……手前にはそこまで分からんからな)


ゴドリックの傷を癒した薬は確かにエリクシルではあるが、正確に言えばティアリエの造ったエリクシルの劣化版であった。


『君がコレを持ってると相手に分かれば、君自身が騎士達を引き付けられる囮になれる筈だ』


ティアリエが飛び立った後、ゴドリックが森を爆走している最中に念話で道具袋に入っている物品の説明を受けていた時のティアリエの言葉だ。


『何でもエリクシルというものは世界中の王侯貴族が求めて止まない代物らしい』ゴドリックとしてはその程度の認識であった。


『その価値は非常に高く、それを所持していると分かればエルフを放置してでも追って来る可能性が高い』とまで言っていた。


無論、薬を残しておいたのもワザとだ。


同じ物をあと2本は所持しているが、相手にそれが分かる筈もないので視覚的に分かる様にしただけだ。


何がどう劣化しているのかと言われれば、作用時間にある。


『エリクシルは回復薬の最上位なんて言われているけど、正確に言えば回復薬に分類されない代物なんだよね。エリクシルは傷や病を癒しているんじゃなくて、服用者の肉体の状態を巻き戻しているだけの肉体限定の時間遡行薬なのさ。伝説に語られている完全版のエリクシルなら服用者の最盛期に肉体の時間を戻すけど、今回私が作った劣化版は戻す時間が限定的なものだね。この小瓶1本分で肉体を3時間前の状態に戻せる。戻せる時間は服用量で調整できるよ!注意して欲しいのはエリクシルは肉体を元の状態に戻すってだけって事だね。仮に3時間前の状態が酷い二日酔いだったとしよう、それで3時間前の状態に戻れば当然酷い二日酔いに戻るだけだからね』


良くも悪くも状態を戻すだけ。


使用するならばその時の自身の状態をきちんと把握しておかなければならないのが劣化版エリクシルという薬であった。


今回ゴドリックは1瓶の半分程を服用したので1時間半前の状態に戻していた。


ちなみに完全版のエリクシルであっても生まれた時から腕が無い、視力が無い等の生れ付きの障害に関しては効果が無い代物だったりする。


肉体を最善の状態に戻す薬であるので、元から無い物にはどうしようもないという一面が存在する。


『この薬に関しては取られても問題無いからどう扱っても良いよ。効果が『最大3時間前の状態に戻す』だけだからね。私や君のように実際に戦いの場に立つ者にとってはどんな重症も一瞬で治せる薬になり得るけど、エリクシルを本当の意味で求めるようなお偉い方々にとっては何の効果も発揮しない代物だし』


最大効果が3時間では持ち運びの時点で条件が厳しく、オークションに出したのならその時点で意味を失う。


使えても暗殺の備え、若しくは寿命での死期を3時間引き伸ばせる程度のものだ。


即死したら意味の無い代物なので間に合うかどうかは完全に運任せ。


高い金を支払って効果が無いと激昂される可能性だって大いに有り得る。


だが、それを売った者がどんな目に遭おうが知った事では無いティアリエらしい言葉であった。


その相手がカルディア傭兵国であるなら尚の事問題が無いというものでもあった。


『作用時間が限定的な劣化版なら割と現実的に入手できる程度の素材で済むんだよね。まあ、作用時間が伸びる程に求められる素材がえげつなくなっていくけど、私とシュラ君で手に入れられる範囲の素材となると最大でも作用時間1年ぐらいの劣化版エリクシルが限度かな?今回渡した時間単位のものなら、作業時間が地味に長いのと単純作業の繰り返しで手間が掛かるという面に目を瞑れば十分量産可能な代物だよ』


『だから、気にする必要は無い』とティアリエは言っていた。


劣化版であっても見た目はエルクシルそのものだし、作用時間が限定的であっても一瞬で重傷を消せるというものには変わりは無いので騙すのには十分とも言えた。


ゴドリックは地面に転がっていた杖を拾い上げて背負う。


(行くか)


自身と装備品の状態だけを確認して、ゴドリックは偵察兵の臭いを追って走り出す。


自らが守ると決めた者達の為に。


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