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それぞれの戦い(ゴドリック) 12

騎士達が戸惑いながらも剣を押し込もうとしていると、騎士達の後頭部を背後からガシリとゴドリックの手が掴む。


ゴドリックは両腕を抱き締めるような形で裏から交叉させていた。


異変に気付いた騎士達が後方に飛び退けないようにする為だ。


ゴドリックが正面からの攻撃を受ける事にしたのは、攻撃を受けた後に敵を逃がし難いからという理由もあった。


側面の攻撃を受けた場合、敵は腕の外側に居るので回避も容易だ。


だが、正面ならば腕の内側になるので体格差の関係で取り囲める。


騎士達の最大の失敗は異変に気付いた時点で剣を手放して離れなかった事だ。


その失敗に気付いた時点でもう手遅れであった。


「フッ……!」


ゴドリックが両手を握る力を強めると『グシャリ』と騎士達の頭はトマトでも握り潰すかのように軽々と潰れて、ゴドリックの両手の内側から噴き出した血が滴り落ちた。


(20人を相手するのでこれか……先が思いやられるな)


ゴドリックはそう思いはするものの、止まる気は一切なかった。



ゴドリックと騎士達の戦いを離れた位置から見ていた者がいた。


それは騎士隊の偵察兵だ。


結果がどうなるにせよ報告する者が必要のなる故の処置だ。


『遠視』のスキルを持つ偵察兵は樹上からその戦いを見ていた。


(全滅か。懸念事項が増えるとは頭が痛い)


そう思いながらもゴドリックの偵察を続けていた。


ゴドリックの動向を知る為に必要だからだ。


ゴドリックが無造作に頭を握り潰した騎士2人を捨てる様子も見ていた。


そして、背後に手を回して腰に巻いた道具袋から怪しい真っ赤な輝きを放つ液体の入った小瓶を取り出して、それを一口だけ飲む様子も見続けていた。


(あのオークの変異種は一体何なのだ?戦う様は狂戦士のそれなのに、戦い方に知性が窺える。それに装備が異様に整い過ぎている)


戦棍、篭手、脛当、胸甲どれをとっても間違いなく一級品と言える代物。


更に言えば希少な空間袋、使い捨てにしていた穂先が飛び散る槍……


どれ1つとして野蛮なオークが所持しているような代物ではない。


(あのオークの所持品全て売りに出せば、下手なエルフよりも高値で売れるのではないか?)


そう思える程だ。


空間袋は容量や付随の効果によって値段はピンキリなのだが、放った槍の数からして確実にそれなりの容量を有しているのは分かる。


偵察兵はそんな事を考えていたのだが、それは一瞬で吹き飛ぶ事になる。


怪しい薬を飲んだゴドリックだったが、服用した瞬間に腹に突き刺さった2本の剣が抜け落ちて完全に傷が塞がっていたからだ。


偵察兵はゴドリックの飲んだそれはただのポーションかと思っていたのだが、たとえ上級ポーションであっても腹に空いた穴を一瞬で塞げるような物ではないし、剣が刺さったまま服用すれば剣が刺さった状態で傷が癒えていくので抜け落ちるという事は起こらないのだ。


(赤い輝き、重傷をまるでその存在自体が無かったかのように治す。まさか、まさか、まさか……!)


古い物語においてその存在は幾度も語られており、実在する事も確認されてはいる。


古い遺跡に保存されていた物以外では深いダンジョンの奥地で極稀に出現する程度で、それ以外では殆ど見掛けられない伝説の存在。


あらゆる重症や病を一瞬にして完全に癒すと言われる霊薬……


その名をエリクシルという。


(もし、本物だとしたらこの地のエルフ全員よりも高値が付くぞ……!)


エリクシルはその効果からして、世界中の王族が求めるのだ。


競りに出せば恐ろしい値段になるのは確実。


小瓶にはまだ半分以上赤い輝きを放つ薬が残っていた。


それが本物なら何をしても手に入れるだけの価値がある代物だ。


仮にエリクシルでなかったとしてもあれだけの効果を持つ回復薬なら高値が付くのは間違いない。


(これは急いで報告しなければ……!)


幸いなことに薬はまだ残っていた。


それを道具袋に仕舞ったのも確認している。


(何故、オークがあのような代物を所持しているのか分からない。だが、これは絶対に報告しなければならない!)


偵察兵は本隊と合流すべく、その場を急いで離れた。


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