それぞれの戦い(ゴドリック) 11
愛用の武器を失ったゴドリックであったが、それについて取り乱すような様子は一切見られなかった。
間合いの内側に入り込まれ、手放した時点で再使用できる可能性は低いと想定していたからだ。
シュラとの訓練においてそれを嫌になるぐらい理解させられていたというのもある。
それに武器を失ったからといって戦えない訳では無い。
その術はシュラが、防具という形で補助はティアリエがしてくれている。
篭手と脛当この2つは防具ではあるが、武器でもある。
無手になったゴドリックに左右から挟み込む形で2人の騎士が同時に飛び込んでくる。
バッ!
ゴドリックはサッと反転しつつ跳ぶ。
そうして騎士達が交叉する挟撃を回避し、続けて背後にあった木の幹を蹴っていた。
その木の根元には丸太と木で挟み込まれて圧死した3つの死体が並んでいたが、その死体の頭上を飛び越える巨体に似合わない機敏な動きを見た2人の騎士達は驚愕する。
離れたと思った次の瞬間には向かって来ていたのだから。
空中で腰を捻りながら更に反転。
空手の三角跳び蹴りだ。
回転に乗せた蹴りがゴドリックから見て左側に居た騎士の背中を捉える。
ベキャ……!!
鎧がひしゃげ、腰骨が砕ける音と衝撃が脛当越しに伝わる。
海老反りになって蹴り飛ばされた騎士を反対側に居た騎士は咄嗟に屈んで回避した。
反射的に行ったそれは失敗だったと言わざるを得ない。
回避の為に足を止めたせいで、着地後も回転の勢いを殺すことなく更に威力の乗った下段の後ろ回し蹴りが顔面に突き刺さる事になったのだから。
ゴキャ……!!
鼻骨、顎骨が付き込まれた蹴りで粉々になり、その勢いを受けた首の骨も連鎖的に砕ける鈍い音がした。
シュラから空手を始めとする格闘技の技を叩き込まれたゴドリックの動きは正にキレッキレであった。
更に2人を戦闘不能に追いやったゴドリックだったが、息を吐く間もなく残りの4人が一斉に躍りかかる。
正面から2人、左右にそれぞれ1人ずつ。
正面を対応すれば左右が、左右を対応すれば正面が対応できないという状況だとゴドリックは瞬時に理解した。
騎士達のタイミングは完璧で回避できないものだ。
(負傷を避けられんな。ならば……)
ゴドリックは覚悟を決めた。
左右に拳を突き出して、ゴドリックの両サイドから迫っていた騎士2人の顔面に大きな拳を叩き込む。
そして、無防備となった腹に『ズブリ』と正面から突っ込んできた騎士2人の剣先が突き刺さる。
彼らが腹を狙ったのはゴドリックの装備していた胸甲を避けた結果だ。
篭手にアッサリと剣を砕かれたり、圧し折られる光景を見ていたので同じ材質であろう胸甲を避けるのは当然の選択であった。
このまま剣を押し込んで内臓をズタズタにすれば勝ちだと騎士達の表情には喜色が浮かんでいた。
だが、それも一瞬だった。
「「ッ!!?」」
腹に突き刺さった剣が10cm程突き進んだ段階で、全く進まなくなったのを感じたからだ。
違和感に気付き、咄嗟に剣を引き抜こうとしたがそれも出来なかった。
剣が突き刺さった瞬間にゴドリックは変異種としての特殊能力である『表皮硬質化』を発動させていた。
この『表皮硬質化』は内在魔力で皮膚を強化しつつ、圧迫して皮膚自体の密度を上げて硬化している。
剣が突き刺さった状態で『表皮硬質化』を発動すれば、剣は皮膚の圧縮の影響を受ける事になる。
特殊能力による皮膚の圧縮と力を入れる事で引き起こした筋肉の圧縮。
この2つの圧縮力を使って剣を咥え込んだのだ。
3mを超す巨体であるゴドリックは肉厚だ。
10cm程度では内臓にまで達しない。
側面は筋肉の強度に劣るので不安が残るから対処して、力の入れ易い正面からの攻撃を受ける事にした。
それがゴドリックの選択であった。




