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それぞれの戦い(ゴドリック) 8

普段は全く使わない樵の生産補助スキル。


速くて便利ではあるのだが、ゴドリックのような品質に拘る職人から言わせれば仕事が雑なのだ。


家は下手をすれば一生ものどころか世代を越えて使われるものだ。


そんな大事な物を作るゴドリックとしては少しでも良い物を作るのが大工という職人としての矜持である。


納期に余裕がない状態でない限りまず使わないスキルだったりする。


だが、そんなスキルであっても戦闘用に丸太を仕立てる程度なら問題無く使えるのだ。


ゴドリックの向かう先に向けて風が流れ込む。


下級の風の魔術だ。


旋風(つむじかぜ)を発生させる。


ただそれだけの魔術なのだが、その効果は明確だった。


巻き起こされた旋風は煙草の煙の吸引機の如く巻き上げられた砂埃を吸い込んでいた。


みるみると視界が回復していく。


(同じ手は使えないな)


普人族の種族的な強みは突出した能力を持たない代わりに、明確に弱い部分も無い事にある。


当然魔術を扱える固体だって当然存在する。


残りは11人。


体勢を立て直してゴドリックを待ち構えている。


(手前の優位な点は膂力。それを最大限に生かす)


その為の丸太だ。


(重量と範囲(リーチ)で叩き潰し薙ぎ払う)


「ゴルルァァァッッ!!」


丸太を抱えたゴドリックは咆哮と共に全力で騎士達へと向かう。


「敵オーク変異種来ます!」


「絶対にヤツの攻撃を受けるな!防御諸共叩き潰されるぞ!」


これまで散々ゴドリックの猛威を見て来た騎士達の客観的な判断だ。


ゴドリックが抱えているのはただの丸太だ。


太い木というものは簡単に切れるものではない。


普通の剣では丸太に食い込んで絡め取られるか、重量に圧し折られるのがオチだ。


「散開しろ!固まっていては纏めて薙ぎ払われるぞ!」


『了解!』


騎士達は正面から3人、左右に4人ずつ分かれる形になる。


「グルォォッッ!!」


野獣の如き唸り声を上げながら、ゴドリックは丸太を振るう。


騎士達には到底当たらないような離れた位置でだ。


ゴドリックの丸太が地面を薙ぎ払う。


丸太の重量で遠心力が乗ったそれは地面を吹き飛ばして、土と石の散弾と化す。


その散弾は散開を始めた騎士達を襲う。


「ぐうッ……!!」


離れた位置からの攻撃だったので重傷を負わせるには到底及ばない。


だが、短い時であれ足を止めさせるには十分であった。


本格的に散開されては囲まれてしまう。


そうさせない為にゴドリックは思考を巡らせて動く。


丸太を横向きにして抱きかかえる形で突進。


正面から向かって来た3人は他に比べるとゴドリックに対する位置が近かった。


目に入った土を振り払っている間に腹に丸太が食い込んで足が地面から浮く。


ゴドリックはそのまま真っ直ぐ突き進み、丸太と木で騎士達を挟み込んで圧死させた。


(左右に動き始めた騎士達までは巻き込めなかったか……だが、包囲されるまえに強行突破できただけ上々であろう)


若干距離があった為に丸太の下を潜り抜けられる形で回避されていた。


振り返ったゴドリックの目に飛び込んできた光景は、剣を抜いて向かって来る8人の騎士達の姿。


(波状攻撃か。迎撃する)


丸太の端の方を持って、振り上げて斜め下に振り下ろす。


「散れ!」


ゴドリックの打ち込みを騎士達は必死に回避する。


当たれば即死確定の重量級の攻撃だ。


必死になって当然だ。


その威力に地面が激しく震えた。


「何であの威力で丸太が圧し折れないんだよ!?」


回避しつつも文句を飛ばす騎士もいた。


当然、ゴドリックの力で振るえば太い丸太であろうと簡単に圧し折れる。


だが、ゴドリックは丸太に魔力を通して耐久性を強化していた。


木は魔力による影響を受け易く、魔力的な強化を施すなら金属よりも木材の方が適しているのだ。


元々木材を多く扱う職に就いていたゴドリックの場合、木の性質というものを熟知している分効率が良い。


それが答えであった。

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