それぞれの戦い(ゴドリック) 7
4人を戦闘不能に追いやったゴドリックであったが、当然止まらない。
体勢を立て直す前に減らせるだけ減らしておきたいのだから当然だ。
「フンッ!!」
真上から杖を全力で振り下ろす。
杖の届く範囲に居たのは3人。
2人は咄嗟に転がる様にして横に倒れ込み、巻き上げられる土砂と一緒に吹き飛ばされながらではあったがギリギリで回避した。
足の損傷が大きく飛び退く事も出来なかった1人が無情に叩き潰される。
全員を仕留めるには至らなかったが、その一撃で更に砂煙が舞い上がり、視界を一層悪くする。
『1対多においてはとにかく相手を自由にさせないようにしろ』
ゴドリックの戦闘における師匠であるシュラの言葉だ。
多数を相手取る場合、囲まれるのが一番怖い。
攻撃されてもダメージを全く受けない程に防御力がある場合は別だが、ゴドリックと相対する騎士達はゴドリックの防御力を貫いてダメージを通せるだけの実力を備えている。
油断できる相手ではない。
純粋なステータスも技量もゴドリックの方が上だ。
だが、人間の怖さはあらゆる手段を用いる事と集団戦を得意とする事にある。
それによって、人間という種族は自身よりも強大な相手を打ち倒してきたのだ。
相手の強みを発揮させないことは戦いの基本だ。
鼻の利くゴドリックは視界が利かなくても問題無く行動できる。
だから、常に土煙で視界が利かないように攻撃ついでに定期的に地面を強打している訳だ。
(炸裂槍は全て使い切った。範囲攻撃の手段はもう無い。敵が立て直す前に一気に仕掛ける!)
ガッ!
駆け出して、勢いが乗ったタイミングで杖の先端を地面に突き刺す。
ゴドリックの力で杖は大きくしなるが危機感を感じさせる音は一切しない。
風竜の骨……
背骨から作られた杖はしなやかさと頑丈さを併せ持つ。
ゴドリックは棒高跳びの要領で大ジャンプを決行する。
行き先はゴドリックが吹き飛ばした4人の反対側だ。
(敵は恐らく手前が右か左の近い方から攻めて来ると読んでいる筈だ。その裏をかく)
ゴドリックの勢いを受け止めた杖がバネの如く蓄えた力を一気に開放してゴドリックを高く高く跳ね上げる。
臭いを頼りにゴドリックは落下の勢いを乗せて全力で杖を振り下ろす。
ドッバァァンッッ!
その一撃は当たりを激震させ、これまでで一番大きな土砂を撒き散らした。
その一撃で更に5人が死亡する。
1人はゴドリックの杖が脳天から直撃して一瞬で肉塊となって土と共に四散した。
残り4人は強烈な一撃により生じた土と石の散弾を全身に受けて、手足が千切れた状態で土の中に埋まった。
ゴドリック並の巨体が跳ぶ等と微塵も思っていなかったようで、頭上を警戒していなかったのが運の尽きと言えた。
移動による振動を最小限に留めて位置を掴み難くした上で更に頭上からの奇襲はゴドリックの想像以上に上手くいった。
が、まだおおよそ半数を削っただけであり、油断はしていなかった。
(この匂いは……ポーションを使ったか)
ゴドリックが攻撃を仕掛けている間に全員がポーションを服用したようだと、匂いから察する。
(となれば、連中の傷は治ったと見るべきだな)
炸裂槍は範囲攻撃の出来る武器ではあるが決して威力が高い道具では無い。
騎士達相手であれば下級ポーションでも十分回復可能な範囲のダメージしか負わせられる程度でしかないとゴドリックは十分理解していた。
ゴドリックは振り返らずにそのまま真っ直ぐに駆ける。
一度、杖を背中に背負い、空間袋から長年愛用してきた斧を取り出す。
そして、走った先にあったゴドリックの上腕程の太さの木の前で立ち止まり、
(『伐採』)
樵時代に覚えた生産補助スキルを発動させて、斧を振るう。
その一振りで木は綺麗に切り倒される。
(『枝打ち』)
切り倒された木に対して更に樵職の生産補助スキルを発動させる。
スキルが発動して木から無駄な枝が取り払われ一瞬で丸太に姿を変える。
面倒でも手作業の方が綺麗に枝打ちできるので、丁寧な仕事を信条とするゴドリックとしては普段なら絶対に使わない類のスキルではあったが、今回は仕事ではなく戦闘なので速さを優先させていた。
(『速乾』)
そして、生木の丸太から水分を抜いて、乾燥材へと変えて強度を高める。
丸太を担いだゴドリックは反転して、再び騎士達の居る砂煙の中へと向かって駆けた。




