それぞれの戦い(ゴドリック) 6
「おいおいおいおい……そりゃねえだろ」
無傷で堂々と佇むゴドリックを見て、矢を放った騎士は呆れた様子を隠せない様子だった。
(敵の方が圧倒的に数が多い。無策で突っ込んでも囲まれて餌食になるだけであろう。ならば……)
「グルァァァッ!!!」
ズドン!!
ゴドリックは杖を全力で地面に叩き付ける。
その衝撃で土は爆ぜる様にして吹き飛び砂埃が大きく舞う。
『なっ……!!?』
その砂埃は濃密でゴドリックの巨体を簡単に覆い隠す。
「グゲッ……!」
砂煙が立ち上がったスグ後にくぐもった声。
離れた位置から聞こえたその声は先程矢を放った騎士のものだった。
恐らく殺られたと集結していた騎士達は判断していた。
「クソが!やってくれる」
「あまり声を荒立てるな……!音で位置を掴まれるぞ」
獣人を代表とする亜人種は何かしら普人種よりも優れた感覚を有している事が多い。
それを理解しているからこその注意が飛ばされる。
「(どこから来るか分からん。全員背中合わせで密集して全方位に警戒しつつ移動して襲撃に備えろ)」
『(了解)』
そして、声を可能な限り潜ませて、指示が出されて早々と行動に移される。
全員が背中合わせで円陣を組む事で前後左右を警戒していた。
「(土煙の動きをよく見ておけ。不自然な動きを見落とすなよ)」
緊張感漂う中出された指示を聞いて、全員がコクリと軽く頷く。
そして、音と地面の振動に対しても注意を向けていた。
ゴドリックの巨体では移動する時に生じる地面の振動を隠すのは難しいからだ。
その判断も対応も間違ってはいない。
だが、間違ってないからといってそれが正解とは限らないのだ。
サクッ。
何かが地面に刺さる軽い音がした。
その音がした方向は騎士達の造る円の中心。
『ッ!?』
その音に気付いて振り向いた瞬間。
バンッッ!!
森の中に轟く強烈な炸裂音。
それは先程嫌になる程聞いた音であった。
「ッ痛ァァァッ……!!」
「グゥゥゥッ……!」
そして、撒き散らされた破片に容赦なく傷を負われれた者達の苦痛の声。
ゴドリックは土煙を巻き上げた後、先ず手に持っていた穂先が破裂して柄だけになっていた槍を隠れ潜んでいた弓騎士に投擲して、喉を潰して窒息死させていた。
ゴドリックは優れた嗅覚を用いて臭いで狙いを定めていたので見えなくとも関係ない。
そして、奇襲を警戒して円陣を組んだ騎士達に対しては、炸裂槍を下投げで山なりにゆっくりと放る事で風切り音を立てないようにして中心に落としたのだ。
全員が正面と左右を警戒していたが頭上には注意が向いていなかったので槍の穂先が地面に刺さるまで気付けなかった。
ゴドリックはその場からは一歩として移動していなかったので地面からの振動は当然伝わらない。
低い位置で破裂したので騎士達は地面に近い部分ほど多くの傷を負わされていた。
運悪く踵付近の腱をズタズタにされて立ち上がれない者すらいた。
「マズイ!!来るぞ!」
大多数が苦痛に呻く中、騎士の誰かが注意を喚起する。
それとほぼ同時であった。
ガグシャッ……!!
最初にゴドリックが居た方向を向いていた中の4人が纏めて杖で薙ぎ払われて、叩き潰されたのは。
槍の穂先が破裂するのと同時にゴドリックは真っ直ぐに駆け出していた。
音に気を取られて背後を向いた瞬間の大きな隙を逃がすなど有り得ない事だ。
痛みに悶えていた4人が受け身など取れる訳も無く、文字通り鎧ごと肉体を叩き潰されていた。
ゴドリックが横薙ぎに振るった杖は1人目の頭を柘榴のように粉砕し、2人目の胸に当たり、鎧をべっこりと大きく凹ませて胸骨をバラバラに砕き、その後ろに居た3人目、4人目を巻き込んで横に跳ね飛ばす。
その時点では生きていた3人目と4人目だったが、吹っ飛んだ先に木があった。
4人目は背中を強く木に打ち付けて脊髄が粉砕され、2人目と4人目の間に居た3人目は前後の衝撃に挟まれて肺と心臓が破裂して死亡した。




