それぞれの戦い(ゴドリック) 5
(術を使ったのは騎士達ではない)
ティアリエから師事を受けたゴドリックは魔力の流れというものをある程度ではあるが感じ取れるようになっていた。
ティアリエのように常識では考えも及ばないような隔絶した魔力操作技術を持っていれば別だが、少なくとも並大抵であれば十分に感知できる程度には感知能力を鍛えられていた。
それもティアリエもゴドリックも基礎を重要視してそれを疎かにするタイプではない故の成果だ。
「グルァッ!」
ゴドリックは槍を取り出して投げる。
部隊長達の方では無い、それよりもかなり後方の方向に向けてだ。
その槍は先程と同じように空中に現れた水の球に防がれてしまう。
だが、槍が爆発した勢いで散った水が何かに当たったかのように空中で不自然に落ちる。
『驚いた……隠れていたのに位置を掴まれるとは思わなかった』
すると、その場所から声だけが聞こえてきた。
女の声だと分かる。
(間違いない。姿は見えないがそこに居るのが術士だ)
ゴドリックは嗅覚でその何者かの位置を探り当てていた。
『あなたが何者なのか知らない。でも、あいつらにはまだ死なれる訳にはいかない』
「クソが!そんな事できるんなら初めからやれや!」
その声に対してどこからか騎士の文句が飛ぶ。
(確かに初めからそれをしていれば被害は軽減できた筈だ)
『エルフ達と戦うのに魔力は必要。無駄に消費は出来ない』
「チッ!」
その声の言葉は正しいようで舌打ちをする音だけが聞こえた。
(どうやら連中にも何やら事情があるらしい。ならば……)
ゴドリックは更に2本槍を取り出す。
1本は先程の姿の見えない術士に向けて、もう1本は現在進行形で逃走する部隊長達へと向けて立て続けに飛ばす。
『む……』
姿の見えない術士は再度水球を出現させて、ゴドリックの飛ばした槍を両方防ぐ。
(離れた位置に対して正確な座標で並列展開。しかも、ほぼノータイム無詠唱となるとかなり腕の立つ術士だ。油断はできん)
撃ち落とされるのも構わず次々と槍を投擲する。
『エルフ達と戦うのに魔力は必要。無駄に消費は出来ない』とその声は言っていた。
ならば、魔力を削る事で阻害を計れると判断したが故の行動だ。
『これは良くない。このままでは無駄に魔力を消耗させられる。こちらも退く』
部隊長達が槍の射程範囲から逃れたぐらいのタイミングで見えない術士の臭いが別方向に離れて行く。
(あの得体の知れない術士は気掛かりだが、今はそれよりも離脱した騎士達を追う)
姿の見えない術士よりも騎士達の方が追い易い。
それに数を減らしておくに越した事は無い。
ゴドリックは身体強化の魔術を発動させて、獣道を突っ走る。
獣道を抜けた先で20人程の騎士達がゴドリックを待ち構えていた。
森の中いえど多少開けた場所と言うのは存在する。
そこに騎士達が展開していた。
ゴドリックは当然炸裂槍を取り出す。
その取り出した瞬間であった。
カン!
槍の穂先に衝撃。
そして、『バン!!』と弾ける音と共に槍の破片が撒き散らされる。
横合いに1人騎士が隠れ潜んでおり、そいつから放たれた矢が穂先に当たって誘爆させられたのだ。
「さっきはよくもやってくれたな!」
「自分の武器で自爆してやがれ」
騎士達から笑い声が上がる。
だが、それもスグに止まる。
「おい、嘘だろ?」
至近距離で槍の破片を受けた筈のゴドリックは全くの無傷だったからだ。
『表皮硬質化』それがゴドリックの持つ変異種としての能力。
鋼鉄の如く皮膚を硬くできる。
ただそれだけの能力だ。
ゴドリックはそれを発動させており、槍の破片を間近で受けても完全に無傷だったという訳だ。
錆びた鉄の槍の破片はゴドリックに当たって、跳ね返されて砕け散っていた。
槍が錆びた鉄であるのは、散った破片でゴドリックが傷付かないようにする為の安全性への配慮という一面も含まれていた。




