それぞれの戦い(ゴドリック) 3
「まともに相手をするだけ無駄だな……全員、散開してあのガキを追え!」
バッ!
部隊長の指示に従って獣道の上に居た騎士達は藪に飛び込んで散り散りに走り出す。
(させん)
「グルォ!!」
ゴドリックは空間袋から見るからに錆びた槍を取り出して藪に向けて投擲する。
「こんな物!」
槍が飛んだ先に居た騎士は矢切の要領で槍を切り払う。
ガギンッ!
槍の穂先と騎士の振るう剣が当たる。
それと同時であった。
バンッ!!
槍の穂先が弾ける。
「な!?」
驚いていられたのも一瞬、何故なら次の瞬間には弾け飛んだ槍の欠片が全身に突き刺さったからだ。
「ギャアアアアッッ!!」
絶叫。
錆びた槍の中に仕込まれていたのは衝撃を受けると爆発する条件起動型の爆薬。
言うまでも無く、ティアリエ製の道具である。
魔力を使っていない爆薬なので魔力感知は不可能。
その辺りの爆薬の知識はシュラが詳しかったので、ティアリエとの共同開発品だ。
相手は何もないただの錆びた槍だと誤認するように仕向ける為の性格の悪い仕様である。
そして、敢えて錆びさせているのは破片を散り易くする為と、小さな傷だと思って放置した連中に破傷風を発症させる為である。
錆びた破片を受けたのは切り払った騎士だけではない。
爆発により放射状に散らされた破片は近くに居た騎士達にも当然突き刺さる。
「あの槍を受けるな!」
一度被害が出た事で槍の仕様を把握した誰かからの言葉。
それを耳にしても気にせずゴドリックは次の槍を投擲する。
ガッ!
ここは森の中、何かに当たらない訳が無い。
バンッ!!
木に当たった槍が弾けて破片を辺りに散らす。
どういうものかバレた所で問題無いので次々と槍を取り出してブン投げる。
それに槍を打ち払わないのであれば、手前の地面に当たる様に投げれば良いだけの話なのだ。
狙いが雑でも散弾なので当たりはする。
エルフ達の精密射撃とは真逆のやり方ではあるが、今回のような局面では非常に有効である。
移動する相手に精密射撃は技術が無いと難しい。
隠れている相手を炙り出すのにも無差別攻撃の方が楽というのもある。
「木を盾にしろ!」
錆び片の散弾なので威力はお察しだ。
当然、木を貫通できるだけの威力など無い。
騎士達が一斉に木の裏側に隠れて錆びた散弾をやり過ごす。
ゴドリックは適当に槍をばら撒きつつ移動を開始する。
当てる事が目的では無い。
足を止めさせるのが目的だ。
そして……
「ガァァァァァッッ!」
杖を片腕で振るう。
騎士が身を隠した木もろとも隠れた騎士を圧し折る。
「無茶苦茶だ!!」
その光景を見ていた誰かが喚く。
その中で騎士達はゴドリックが杖を振るう間に移動を再開する。
杖を振るっている間は槍の投擲は来ないからだ。
動き始めた騎士達に対してゴドリックは槍を飛ばす。
「チィッ!」
それを見た騎士達は素早く木の裏側に身を隠す。
が、退避が間に合わず、手足に破片を受けた騎士が出る。
「クソッタレが!一体、あのオークの変異種は何だってんだ!?」
想定すらしていなかった状況に誰かが愚痴をこぼす。
それは騎士達全員が抱いていた疑問であった。




