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それぞれの戦い(ゴドリック) 1

エーゼルと別れた後、ゴドリックは少しだけ大回りしてエーゼルの後を追っていた。


エーゼルをそのまま追って行くと、彼の……


エルフ達の背後から迫る形となり、その結果彼らの注意を引き付けてしまうと考えたからだ。


エルフ達からすればゴドリックは得体の知れない存在であり、警戒して当然の相手となる事を理解していた。


前にカルディア傭兵国の騎士、後ろにゴドリックという状況になって注意が散漫になってしまってはその隙を突かれる可能性があるので、ゴドリックはその辺りを配慮して騎士達の側面若しくは背後に回り込んで襲撃を仕掛ける腹積もりであった。


到着が多少遅くなってしまうが、そこはもう仕方ないと割り切っている。


ゴドリックが走っていると、少し先にエルフの集団が見えた。


その一団は鮮血熊と遭遇して睨み合いをしていた。


若い男のエルフ達が先頭に立って、後ろに居る女子供が多い集団を守っているようだが、明らかに腰が引けている。


鮮血熊の強さを理解しているからであろう事が察せられる。


恐怖を感じながらも決死の覚悟を決めているのが遠目でも分かった。


(覚悟は立派だが、あの者達では勝てんな。鮮血熊が動けば蹂躙が始まってしまう)


シュラに鍛えられたゴドリックはある程度ではあるが、鑑定系のスキルに頼らずともおおよその強さを感じ取れるようになっていた。


(勇気ある若者達や女子供が虐げられる姿は見たくはない。あの鮮血熊は手前が片付ける!)


そう決めたゴドリックは大きく息を吸って、


「ゴオオオォォォォォォォッッッ!!!」


盛大に殺気を放ちながら雄叫びをあげた。


鮮血熊とエルフの集団全ての意識と視線がゴドリックに向く。


(野生の世界で生きている魔物は脅威に敏感だ。今ので確実にエルフ達の集団よりも迫り来る手前の方が圧倒的な脅威だと本能的に理解した筈である)


勝てない相手だと悟り逃げようと、殺気に反応してこちらに向かって来ようとゴドリックとしては問題無いと言えた。


鮮血熊の選んだ選択は後者であり、一直線にゴドリックへと向かって来た。


ゴドリックは自身の顔面目掛けて振るわれる鮮血熊の腕を速度が乗る前に自らの腕を割り込ませて払い飛ばし、逆の手で鮮血熊の鼻面を殴った。


鮮血熊が頑丈とは言っても強度が弱い個所や痛みを感じやすい個所は当然存在する。


鼻はその1つだ。


ゴドリックの膂力で弱所をぶん殴られた鮮血熊は反射的に仰け反ってしまい、拳の勢いに押されて仰向けに転倒する。


痛みに悶えながらもくるりと俯せに反転して鮮血熊が4つ足で立ち上がると、その間に杖を抜いて既に頭上に振り上げているゴドリックの姿があった。


基本に忠実に腕を絞られて振り下ろされたその一撃は鮮血熊の頭蓋骨を易々と粉砕する。


(うむ。流石、シュラ殿の拵えた杖だ。頑丈である)


シュラがゴドリックにあげた訓練杖は、軽く振り回しても鉄製の剣をポキポキと小枝の如く圧し折ってしまうゴドリックが全力を出して振るっても軋む音一つとして上げない程に頑丈であった。


鮮血熊を苦も無く一蹴したゴドリックはエルフ達を見る。


すると、明らかに全員が怯えた様子でビクリと肩を震わせていた。


(ふむ、見たところ怪我人は誰もいないようだ)


それが分かったゴドリックは再度走り出し、その場を離れる。


エーゼルを手伝いに行かなければならないので、彼らに構っている余裕が無いからであった。


(待っていてくれエーゼル。手前が行くまでどうか持ち堪えてくれ)


それだけを願ってゴドリックは森の中を全力で突っ走った。


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