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それぞれの戦い(エーゼル) 13

「く……姿勢を低くして木の後ろに回れ!」


敵とて間抜けではない。


対応の一つぐらいは講じてくる。


「させるか!」


エーゼルは敵の動きに合わせて風向きを変えて森の木々を盾にする意味を無くしてやる。


コロコロと風向きが変わる中でも矢を中てられるのは熟練のエルフ達の成せる業である。


エルフ達の放つ矢は確実に敵部隊を削っているがその進捗はエーゼルの想定よりも大分悪いと言えた。


強風の中、首と目の辺りを両腕を使って致命傷を避けているのだ。


腕に矢が突き刺さっても当然即死はしない。


(くっ……敵の方が地力が上だから急所に中てねば大きなダメージは期待できん)


それに向こうの方が対人戦闘の経験が多いだけあって対応が早い。


「皆の者、足を狙え!」


『了解ッ!』


一撃必殺が難しいのであれば機動力を削ぎ落とす方面にエーゼルは切り替えた。


元よりこの戦闘は言うまでも無く遅滞戦闘だ。


追撃を遅らせるだけでも十分な成果を上げられる。


騎士達の無防備な足に次々と矢が突き刺さる。


膝や足首を射抜かれた騎士達の悲痛な叫びが森の中に響く。


「テメエら、ここは堪えろ!無理に突出しても的にしかならねえぞ!いずれ連中は矢を射尽くす!攻め時はそこからだ!」


敵もまた冷静であった。


エーゼル達エルフの陣営の抱えている問題を的確に見抜いていた。


順調なように見えて、刻一刻と期限が迫ってきているのだ。


更に言えば敵部隊は死体や重症で動けないであろう味方を引きずり上げて盾にした状態で密集し、矢を防ぎ始めたので被害が一気に軽減される。


「無駄撃ちを極力減らせ!手数よりも威力重視の攻撃に切り換えろ!死体ごと貫け!」


『応ッ!』


ギリリ……!


エーゼルの指示に応えたエルフ達の弓の弦が強く引かれる音がした。


そして、エルフ達は番えた矢に魔力を流し込み貫通力を強化する。


バシュシュッ!!


燐光を纏い放たれた矢の数々は、密集した騎士の一団の掲げた肉盾を貫き、その裏に居た者達の頭や心臓を正確に射抜いていた。


貫通力を強化しても敵の方が強い肉体を有しているが故に貫通できるのは肉盾のみで2~3人纏めて貫くような事は出来なかった。


元々、エルフというのは力に優れた種族ではないので、魔力で強化したとしても威力不足が浮き彫りになっていた。


エーゼルが同じ事をやれば2~3人纏めて貫く事も出来るのだが、現在足止めの為の強風による支援で手いっぱいなので無理であった。


風が弱まればあの騎士達は間違いなく殺到してくる。


それが分かっているからこそ、指揮を執りながら全力でそちらに集中しているのだ。


近付かれたら終わりという状況は前の戦闘と全く変わってないのである。


「チッ……!」


一瞬、魔力急激な消耗と風の制御によって頭痛がしたが、それを気合で振り払いながらまた1本魔力回復ポーションを飲み乾して、空き瓶を投げ捨てる。


(これだけの効果がありながら中毒症状が少ない。業腹だが、あの怪しい錬金術師、腕は確かなようだ)


ポーションは薬であるので無論使用限度というものがある。


基本的に効果が高い物程その限度量というのは少なくなる。


良く効く薬程、用法用量を守らねば毒ともなり得るというのは当然の事だ。


エーゼルが使用したポーション並の効果であれば、普通なら2本が限度というところであるが、ティアリエの手によって中毒を極限まで軽減されたそれはギリギリで4本までは連続使用できる一品であった。


これで3本目。


残りは2本。


エーゼルは最悪ポーション中毒になっても強制的な停滞を維持させるつもりだ。


少しでも長く時間を稼ぎ、一人でも多くの敵を削る。


この場に残った全員の総意である。


全員がその目的を果たすために懸命に行動していた。


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