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それぞれの戦い(エーゼル) 12

エーゼルが先に行かせたエルフ達を目視で視認出来る位置まで来たとき、状況は正にギリギリだった。


狩猟部と警備部の全員で協力して矢の弾幕を張る事で何とか敵を近付けないようにしていたが、集団戦の練度と敵対する騎士達の強さによって突破されるのも時間の問題……


というか、今まさに突破されようとしている瞬間であった。


「チッ!」


(間に合え!)


前の戦闘で矢を撃ち尽くしてしまったので魔力で矢を形成して光り輝く風の矢を放つ。


効率は悪いと言わざるを得ないのだが、矢を回収する時間は無かったので仕方ないと言えた。


光の矢は空中で分裂して、突破しようとしていた騎士達に降り注ぐ。


出鼻を挫かれた騎士達は意固地にならず、足並みを整える為に盾を正面と頭上に掲げて一度後退する。


「おお!この魔力は……!」


「エーゼル様!!」


その間にエーゼルは最前線で戦う狩猟部と警備部の面々と合流する。


「エーゼル様!無事でしたか!」


「今は再会を喜んでいられる状況では無い、状況を簡潔に頼む」


「里の南側に現在交戦中の一団が地面に穴を掘って潜んでいたのです」


(成程、地下に潜んでいたから風の精霊の探知を逃れていたという訳か。となると先程殲滅した部隊は囮でこちらが本命か。やはり、敵はエルフに詳しいようだ)


風の流れ難い地下は風の精霊での探知が難しい場所だ。


敵はそれを知っていたのだろうと判断するには十分な情報だった。


「こちらは避難民を多く抱えており逃走は不可能と判断し、こうして交戦しております。状況は不利と言わざるを得ないでしょう」


「状況は理解した。戦えぬ者達は西に移動せよ!北西に居た一団は我が殲滅した故に挟撃の心配は無い!交戦中の敵部隊は戦える者達で足止めし、一人でも多くの者が生き残れるよう全力を尽くせ」


敵部隊の展開する南側の突破は無理だとエーゼルは判断し、指示を出す。


足手まといを後ろに抱えていては大胆な行動は出来ない故の指示だ。


無論、逃げた先で魔物に襲われる危険性はあるが、今目の前にいる騎士達にぶつかるよりは遥かにマシだ。


エルフ達はエーゼルの指示に従い迅速に行動を開始する。


「エーゼル様、これを」


生産部に所属する男が移動を開始する前に矢筒を2つエーゼルに手渡す。


「助かる。里長達を頼む」


「エーゼル様もご武運を」


エーゼルが矢筒を受け取ると男はそう言って移動を開始した。


その場に残ったのは狩猟部と警備部の面々とエーゼル。


合わせて70人弱だけだ。


「済まんね、若様。本当なら若様にも撤退して欲しいんですがね」


残った全員で矢を放ちながら撤退を支援していると、エーゼルに対し狩猟部の長に申し訳なさそうにそう言った。


「我が居なければ足止めすらままなるまい。致し方ないというものだ。里の者を守るのが我らの役目だ。気にするな」


「それともう一つ謝りたい。勝手ながら撤退する面々には狩猟部(ウチ)と警備部の若い衆を付けました」


向こうの方が人数が多い現状では撤退の時間を稼ぐために一人でも多くの人員が居た方が良いのは確か故の謝罪であった。


「構わん。向こうも危険が無いなどとは言えん。適切な判断だ。それに向こうが逃げ切っても男が居ないのでは種の存続もままならんからな。それより、お前達は良いのか?」


ここに残るからには高い確率で死ぬ事になる。


口には出さなかったがエーゼルはそれについて聞いていた。


「俺達は十分以上に長く生きましたし、子供(ガキ)もとっくの昔に独り立ちしているんで。ここで果てようと問題ねぇってモンですわ。向こうに付けたのは未婚か幼い子供の居る連中なんで、ここに居るのは全員、雄として自らの役目を果たした連中ですんで若様も気にしねぇで下さいや」


「では、我らは我らの役目を果たすとしよう。この場に残りし誇り高き勇敢なる者達よ、最後の最後まで死力を尽くせ!」


『応ッ!!』


エルフの男達の声が響く。


「風の精霊達よ!我が魔力を糧に猛き奔流と成せ!」


それを聞いていたエーゼルは支援を開始することにした。


ゴウッ!!


強い風が森の中を吹き抜ける。


そこに風の刃などは無く、純粋に強いだけの風だ。


ただの強風ではあるが、強い風の流れは立っている事どころか目を開けている事すら困難な状況を騎士達にもたらした。


それ自体には殺傷力の無いものではあったが、騎士達の移動を阻害し、手に持っていた盾は風の影響を受けて引き剥がされる。


そして、騎士達の盾が風に吹き飛ばされて宙を舞う中、エルフ達から放たれる矢は強風に乗って加速されて、騎士達の一団へと突き刺さる。


先程は1人だったから使えなかった手ではあるが、集団戦である現在では大きな効力を発揮していた。


「我でもこの風を長く維持する事は難しい!この状態を保てる間に1人でも多く削れ!!」


『応ッ!!』


精霊との交信と弓の扱いに長けたエルフだからこそ、風の精霊の起こす風の流れを読み、矢を風に乗せるという芸当が出来る。


エーゼルは魔力が底尽きる前に、道具入れからゴドリックに貰った魔力回復ポーションを取り出して一気に呷る。


ゴドリックは複数のポーションをエーゼルに渡していた。


エーゼルの魔力を回復させるには1本で十分だったので余りを道具入れにしまっておいたのだ。


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