それぞれの戦い(シュラ) 5
地中10mまでを探査したが生命反応は無し。
どうやら無事に全滅させていたらしい。
「だが、念には念を入れておくか」
『内部保存』しておいた道具を取り出す。
ティアリエから貰った爆弾の数々。
それらを一団が存在していた辺りの地面に軽く埋める形で規則的に並べておく。
最後に起爆用の魔力波動を飛ばして一斉爆破。
ティアリエ特製の指向性爆弾。
爆発の衝撃が下方向に向かうように埋めた爆弾が一面を吹き飛ばす。
爆発の衝撃で地中を強く圧迫しておいた。
仮に俺に感知できないレベルの隠形が使えるヤツが地面に潜っていたとしても、圧殺する為に。
「ここまでやって生きてたら素直に称賛しよう。さて、次の仕事に向かうとするか」
ここでの用事を終えた俺は『形状操作』でまたカ○チスに姿を変えて、空へと飛び立つ。
ティアリエの要求は殲滅だ。
であるならば、先程の一団を乗せて来た船も潰しに行くのは当然である。
あれだけの人員を運べるだけの規模の船となると絶対に管理者が残って居る筈だ。
それも含めて全て消しに行く。
扇状の陥没が残る平原を飛び立って、海岸へと向かう。
つい先程まで行軍が行われていたので足跡を辿るのは非常に容易い。
低空飛行で数多くの足跡が残る平原を突き進んだ先に海が見えてきて、停泊している大きな船も見えて来た。
さて、仕事だ。
(このまま突っ込んで船を沈めても良いんだが、確実性に欠けるよな。重要なのは情報が伝わらないようにする事な訳で……少しばかり段階を踏んでやってみるか)
少し高度を上げつつ、『形状操作』でドローンに姿を変える。
そして、船の直上を通る最中に、『内部保存』からこれまたティアリエに貰った道具を取り出して船上へと投下する。
ボロボロと落とされた球体状のそれらは濃い灰色の煙を濛々と噴き出して甲板を覆っていく。
船の中で休んでいたであろう船員達も数分もしない間にその異常に気が付いたようで甲板へと出て来るが、それが致命的な結果を招く事になる。
煙に包まれてそれを吸った船員達の体が指先から順に段々と石になっていく。
俺が甲板にばら撒いたのはティアリエ特製の石化煙幕弾。
生物のみを石化させる煙は見事に効果を発揮していた。
流石、ティアリエ製の危険物だけあって効果が高い。
『多少、石化耐性がある程度ならどうにもならないレベルの強力な石化を撒き散らす自信作だよ!』と豪語していただけある。
この煙は空気より比重が重いので、開け放たれた扉から煙が入り込み船内を埋め尽くしていく。
あとはしばらく放置して船内に居る船員達の石化を待つのみだ。
何となくだけどバ○サン焚いてる気分になる。
まあ、やってる事は似たようなものだ。
数分が経過して船内から生体反応が感じられなくなった。
全員が石化したのだろう。
「次の工程に移行だな」
わざわざ石化させるという工程を踏んだのには勿論意味がある。
俺の『内部保存』スキルなのだが、生物は保存できないと説明文には書いてあったが、石化や完全凍結等の状態であれば放り込める仕様だったりする。
意識が無く、体が変質して動けない状態であれば生物認定されないという事なのだろうか?
まあ、詳しい判定基準は分からないのだが、重要なのはそれが出来るという事である。
ゆっくり戦場に降りて、鎧姿に戻る。
そして、船の甲板に高純度グラナイト結晶の杭を突き立てて魔力を流し込む、グラナイト結晶の特性である『重力遮断』が船全体を対象に発動する。
最後に重力遮断されて重量が減じた状態の船を石化した船員も含めて俺の中に『内部保存』した。
一瞬で大型船が丸ごと俺の中へと消える。
これだけの大型船を手に入れられる機会は少ないだろうし、鹵獲しておいた方が何かと使い道があるのではないかと思い至った訳だ。
ティアリエに引き渡せばきっと自重を知らない魔改造を施すに違いない。
まあ、それには俺も協力するんだろうがそれはそれで楽しそうだなので良い。
船員達に関しても石化して内部保存しておけば取り溢しも無くて済むし、一石二鳥と言えよう。
海に飛び込む者がいないか確認する為にドローンに姿を変えて監視していた訳だが、それを行う前に全員が石化したので石化を逃れた者はいないと断言できる。
仮に居たとすれば船を『内部保存』した瞬間に『生物は内部保存出来ない』という仕様上、炙り出されてそのまま海に放り出される事になる。
そうなった者が居なかったという事はつまり、そういう事という訳だ。
それに石化した船員達もティアリエの解除薬で石化を解除すればまた動けるようにはなるので、持ち帰っておけば何か情報を得られるかもしれないしな。
(良し、一先ず俺のノルマは終了だな。待ってろよゴドリック、今から全速力で加勢に向かうからな)
船と言う足場を失って落ちる最中に俺はカー○スに姿を変えて着水し、そのまま海上を走って空へと浮かび、来た道を戻るようにして森の方へ向かうのだった。




