それぞれの戦い(ティアリエ) 1
ミラフィアの家の前でシュラ達と別れて飛び立ったティアリエだったが、危機に曝されているミラフィアの捜索は困難を極めていた。
しばらくの間は次々と仕様される自身の作り出した逃走用アイテムから発される魔力で大体の位置は分かっていたのだが、それも長くは続かない。
ミラフィアにあげた道具が尽きたのだろうと察する事が出来た。
最後に使用された地点からは地味に距離が離れていて、直ぐには辿り着けない位置だ。
普通であればティアリエの探知スキルで多少距離が離れていようと問題は無いのだが、森の精霊達の力で森と気配を同化させられるミラフィアを察知するのはティアリエでも難しいと言わざるを得ないものであった。
(もっと大量にあげてれば良かった!)
後悔してしまうが、言っても仕方ない事なので取り敢えず最後に道具が使われた位置まで急いで飛ぶ。
現場に残った痕跡を追うしかない。
(ミラフィア君を追っているのは4人か……急がないと)
現地に残された足跡から状況の分析。
気配察知を総動員して、自身を中心とした周囲1kmの範囲の探知を行うと、ミラフィアを追っているであろう4人は1人、1人、2人と3方向にばらけているのが分かった。
(どうやら、ミラフィア君は上手く追手を一度撒いたみたいだね。だけど、肝心のミラフィア君の位置が掴めないな)
どうしたものかと少し考える。
(引き続きミラフィア君を捜索するか、取り敢えず先に追手を殲滅しておくか)
手っ取り早いのは後者の方なのだが、今は3手に別れている以上1つを潰している間にミラフィアに危機が及んでいないとも限らない。
(うん。ミラフィア君の発見を最優先にしよう)
そう決めた矢先であった。
既に察知している騎士の1つが何やら動き始めた。
その動きは他の2つとは違い何かを捜している動きではなく、何かを見付けて追っている動きだ。
他の2つもその1つが動き始めたのに気付いたのか、先行する1つを追うように動き始めた。
(これはマズイ!私の探知だと分からないけどミラフィア君が居るのは、一番先に動いた騎士の先っぽい!)
ダンッ!
ティアリエは飛び上がり、その騎士の居る方向へと向かう。
最初はミラフィアの位置が分からなかったのだが、森の上を飛んで近付いている間に分かるようになった。
ミラフィアが魔術を使って魔力を放出したからだ。
エルフは種族的に魔力の扱いに長けている種族ではあるが経験の乏しいミラフィアでは魔術を使用するのに無駄が多く魔力の放出を隠せない。
魔力や魔術の扱いに関して卓越した技術を持つティアリエならば、僅かであっても魔力の動きを察知できる。
それが知っている魔力の波動であれば恐ろしい精度で。
察知したミラフィアの魔力から使用した魔術が追い風による加速と身体強化の組み合わせだというのも理解していた。
実用できる範囲で現実的な魔術を選択している事に感心していたりもした。
(ナイスだ、ミラフィア君!これで君の位置が追える!)
「超高速移動術式構築。疑似真空管形成。隔離障壁展開」
ミラフィアの位置を掴んだティアリエは現状使える最速を出せる魔術を発動させる。
超高速移動術式と言っているが本来は攻撃用の魔術を移動に用いているだけだ。
本来の使用方は真空砲の原理を魔術的に再現した物理砲撃だ。
飛ばすのが弾ではなく自分と言うだけである。
自身を防護する完全密閉の隔離障壁の形成と維持だけでも容易ではない。
一般的な魔術士であれば正気を疑われる程の高難易度を誇る術式なのだが、ティアリエにとっては当たり前に使える術式の1つでしかない。
ミラフィアの位置を確認したティアリエは逸る心を抑えて確実に準備を進める。
「疑似真空管及び隔離障壁の強度共に良好。排気完了。射出準備完了!」
あとは疑似真空管の自身の背後の方の密閉を解除すれば発射される状態だ。
「ミラフィア君、今行くよ!超高速移動術式発動!」
方位と射出されるポイントを再度確認したティアリエは自身の背後の真空を開放して流入する空気の速度で一瞬にして加速を開始する。
隔離障壁と共に慣性を無効化する術式を使用していなければ一瞬で肉体が真っ平になる勢いで加速される。
幾重にも自身を保護する術式を展開しなければ、自滅確定の行いなのである。




