9話
もう、タンザナイトの側にいる必要は無くなって
しまった。
理由をつけては側に居たはずだが、それももうお
しまいにしなければならない。
ルベライトは久しぶりに行く王立ジュエリーアカ
デミーに来ると教室へと無かった。
教室では、すでに先生が来ていた。
空いている席は最前列のど真ん中だけだ。
そして、そこにはもう一人先に座っている人物が
いたのだ。
「横……いいか?」
「うん…いいよ」
「この前は………悪かったな」
「うん、怪我は大丈夫だった?アルトが酷い事し
ちゃったから」
シトリンはインペリアルトがした事を『酷い事』
と表現した。
だが、実際はルベライトから手を出したので自業
自得といえる。
「あのさ……あんなことしておいてなんだけど、
友達にならないかな?」
「うん。勿論だよ。僕はシトリン、よろしくね」
「あぁ、ルベライトだ。」
短く話すと、授業に集中した。
昼のベルが鳴るとルベライトは第二皇子へと会
いに来たのだった。
「あぁ、ルベライトか。今日からか」
「はい」
「あの青年を連れて来い。話したい事がある」
「ご自分でお誘いください」
「は?………今なにを言ったんだ?」
「ですから、お誘いになるならご自分でなさって
くださいと申し上げました」
「ルベライト。自分の言っている事がわかってい
るのか?」
「わかってます、ですが…タンザナイト殿下はシ
トリンに嫌われたいのですか?」
珍しくハッキリと言葉にした。
タンザナイトの気持ちは分かる。
だからこそ、自分の口で伝えるべきなのだ。
「いっそ、お茶にお誘いすればいいかと」
「そうだな、それもいいな」
「では、練習をしましょう。僕をシトリンだと思
って何か話しかけて見てください」
「あぁ、今日はお前には手が出ないほどの高級な
茶葉を入れてやったぞ。平民には手が出ない味
だろう?しっかり味わって飲めよ」
「すとっぷ、すとーーーっぷ!」
一瞬目が点になった気分だった。
これでは空いてに喧嘩を売っているようだったか
らだ。
「まさか本気で言っているんですか?」
「本気とは?事実を述べているだけだが?」
ルベライトは頭を抱えると大きなため息を吐いた。
「普通ですね、お茶の席では高級とか関係ないんです
『貴方とお茶ができて嬉しい』とか。『貴方と一緒
に飲むとより一層美味しく感じる』とか言うんです」
「そんな当たり前の事は……」
「当たり前ならしっかり言葉で言ってください。あとは
その顔です!そんな堅っ苦しい顔で言わないで下さい
笑顔です、えがお!」
タンザナイトが引き攣った顔を向けるとルベライトは
大きく左右に首を振った。
「広角を上げて、しっかり目を緩めて、それでこうで
す。笑顔を向けるだけで相手も力が抜けます。余計
な言葉は言わず、ただ笑顔をずっと張り付けてくだ
さい」
「こうか?」
一緒ふわっと笑うと、絶世の美女とはこう言う事を
言うのかと思うほどいつもと真逆の笑顔だった。




