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8話

ロックボアに突撃されて無事なわけはなかった。


タンザナイトを庇うようにして飛び出したルベライ

トは必死の思いで闇魔法の即死を使った。


だが。直前の攻撃に吹き飛ばされると近くの木に激

突したのだった。


「ルベライトー!」


駆け寄ってくるタンザナイトを視界にとらえたあと、

ゆっくりと意識が遠ざかっていったのだった。




     ♦︎♦︎♦︎




タンザナイトが治癒師を手配してくれたおかげで傷

が残ることはなかった。


「ルベライト。もう起きられるかい?」

「タンザナイト殿下!すみません、こんな狭い部屋

 で……」

「いや、構わない。ルベライトが無事で本当によか

 った。もう、前に出てはいけないよ。それに……

 使ってしまったようだね?」


何がとは言わなかった。

誰が見ているか分からない場所で危険な言葉は避け

るのがタンザナイトの性格だった。


「すみません………タンザナイト殿下が危ないと思

 ってつい……で過ぎた行いでした」


深く頭を下げると今更ながらに震えてきた。

さっきまではいっぱいいっぱいだったが、10歳そこ

そこの子供がロックボアに立ち向かうのだから怖く

ないわけがないのだ。

それでも身を挺して護る姿はまるで騎士のようだ。


「ルベライト、お前は騎士じゃないんだ。危ない事

 はもうしないでくれ」

「はい……タンザナイト殿下に怪我がなくて…」


それだけ言うと泣き出してしまった。

治療を終えてからは、すぐに屋敷へと帰った。

この事件が兄弟の仲をより険悪にさせる事となった。


ルベライトの闇魔法を見た者はいなかったが、街の

中で使っていい魔法ではなかった。


もし見られていれば、どうなっていたことか。

それ以来、ルベライトは闇魔法を使う事はなくなっ

たのだった。


それからはタンザナイトの一番の信頼を得て、常に

側に居られる地位を得たように見えた。


15歳になって王立ジュエリーアカデミーに入る

までは……。


常に自分に向いていたタンザナイトの興味がシトリ

ンという平民へと向かったのだ。

それが、許せるはずもなくルベライトは問題を起こ

してしまったのだった。

インペリアルト・パーズが割入ってきたからいいも

のの、もし闇魔法の形跡がバレれば、ルベライトは

ただでは済まなかっただろう。


見舞いに来たタンザナイトはルベライトを前に

ただ睨みつけるだけだった。


「ルベライト、余計な事はするな!分かったか?」

「……はい」

「アカデミーは明日まで休むのだろう?しっかり

 養生しなさい」

「はい……タンザナイト殿下……」


笑いもしないタンザナイトを見送ると、ルベライト

はベッドに寝転がる。


「はぁ〜、顔はいいのにおっかねーな。それもそう

 か………気になる子を傷つけようとしたんだもん

 なぁ〜」


今のルベライトはこの先に起こるであろう事を全部

思い出している。

だからか、今からでもタンザナイトとは距離を置く

べきだとは思うのだった。


先ほど、父上の書斎に呼び出された時にも言われた

事でもあった。





「ルベライト、お前はタンザナイト殿下に従うのは

 やめなさい。最近ではいい噂は聞かないからな。

 第一皇子派の筆頭である我が家の息子が兄は第一

 皇子に、弟は第二皇子の側に居てはなにかと問題

 があるのだ。そんな事も分からぬ愚息ではあるまい」


いわゆる、そろそろどちらの派閥につくかを決めねば

ならぬので、第一皇子派につくと言っているのだ。


昔だったら、兄弟を両方の皇子の側に居させて有利性

を見ていたが、もう決めたと言う事だろう。


「この間の問題もある、お前はおとなしくしておれ」

「はい」

「分かったなら部屋から出るな。いいな?」

「はい、父上」





こうして、ファールマン子爵家はアメトリン殿下を

支持すると表明する事になるのだった。









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