9話
前日に見たルベライトをどうしても忘れられなかった。
インペリアルトは今日もファールマン子爵と昼から会
う約束をしていた。
その横には兄のコーラルが座っている。
「賠償の件ですが、本人であるルベライト殿がいる時
にするべきだと思うのです」
「何かね?君はルベライトがいないと罪をみとめない
とでもいうのかね?」
「いえ、そういう意味では……ただ、自分が犯した罪
を本人に謝罪しなければ家に帰れないのです」
「ほぉ〜それは困ったな〜。ルベライトはまだ実家に
帰ってきていなくてね。まずは謝罪の品を受け取っ
てから、話をしようではないかね?」
「それは……」
父から渡された謝罪の品はどれも一級品ばかりなのだ。
むざむざと渡すわけにはいかない。
もし、今渡せばその後に再び同等の物を要求される
かもしれないからだ。
謝罪の賠償とは、物品と謝罪を同時に行い、相手が
納得すればその場で魔法契約を発動させるのだ。
もう、これ以上請求して来ないように平等をきす為
でもあった。
だから、今ここで渡すのはよくない。
そのくらいはインペリアルトでも分かる事だった。
「では、本人が帰って来るまで待たせて貰っても構わ
ないだろうか?」
「……父上、同じ子爵家として抗議すべきです」
「いや、待て…コーラル。いいでしょう。ですが、あ
の放蕩息子はいつ帰って来るか分かりませんぞ?」
「いえ、すぐに帰って来ると思うので、待たせて貰い
ますよ」
自信満々で言うインペリアルトにファールマン子爵は
何やら苦虫を潰したような顔をした。
インペリアルトにはルベライトのいる場所が分かって
いる。
だから、こうやって余裕で構えていられた。
もし、本人を出そうにもあんな状態のルベライトでは
すぐに何をしていたかバレてしまう。
それは家の、子爵家の恥だろう。
では、彼らが取れる行動はたった一つだけなのだ。
ルベライトはあの牢から出して神殿に金を払って治療
を受けさせる事だ。
ただ、問題があるとすれば、ルベライトに回復魔法の
効き目があるかどうかだが………。
それは最近大きな怪我さえしていなければ問題ないは
ずだ。
治癒魔法は何度もは使えないからだ。
治癒を早めているだけで、あまりに無理な治癒はでき
ないのだ。
折れた腕を治す事は出来ても、ちぎれた腕は治せない。
時間をかけて治る事であれば、魔力を循環させて治し
てしまうのが治癒魔術なのだ。
それでも極限られた人間にしか使えないので、神殿で
はそういう貴重な人間を引き取って教育させて神官へ
と据えるのだ。
「これでルベライトは大丈夫なはずだ……多分……」
インペリアルトは感謝されこそすれ、恨まれる事はな
いだろうと考えていた。
ルベライトさえ許してくれれば、家に帰れるしシトリ
ンとも今までのように話せる。
最近はずっとルベライトにべったりでインペリアルト
の話は全く聞いてくれなかったからだ。




