7話
弱々しく床に横たわるルベライトを見て、インペ
リアルトは何もせずに逃げ出して来てしまった。
「違い過ぎるだろ……あんなのあいつじゃ……ない」
何度否定してもさっきの顔はルベライトで間違い
ない。
では、双子の兄弟という可能性は?
とも考えたが、そんな話は聞いたことがない。
真っ黒な髪に少し違和感を覚えた。
彼はあんな真っ黒な髪だっただろうか?
焦茶で、確かに黒っぽくはあったが、あそこまで
真っ黒には見えなかった。
「暗いから見間違えたとか?そんなはずは……」
いくら考えても答えは出なかった。
明日、またファールマン子爵に聞いてみる事に
して今日は休む事にしたのだった。
♦︎♦︎♦︎
真夜中になると、父親であるファールマン子爵が
ルベライトを訪ねに来ていた。
全身鞭打たれた身体は痛々しい痕が残っていた。
「やり過ぎるなと言ったんだがな……ルベライト。
話くらいはできるだろう?おい、起こせ!」
「はっ!」
兵士は牢を開けると気絶するように眠るルベライ
トを強引に叩き起こした。
無理矢理覚醒させられたルベライトは自力では起
きていられないほど衰弱していた。
「ルベライト、聞こえているな?お前に客が来て
いる。インペリアルト・パーズ子爵だと名乗っ
ていたな。お前も少しは役にたったようだ。
さて、ここからが本題だがアメトリン殿下に
手紙をかけ」
「………」
「朝まで待ってやろう、兄のコーラルを推薦
するんだ。いいな?」
父はそれだけ言うと紙と書くものを置いていった。
一方的な強制。
どんな言葉を言っても、聞き入れない姿勢。
この家では、何も自由にならない。
そう、改めて思い知らされた気分だった。
昨日、鞭打たれて痛みで意識が朦朧としている時に
誰かに話しかけられた気がする。
それが一体誰のものだったかははっきり覚えてい
ない。
「早く………戻りたい……」
こんな冷たく、硬い床ではなく。
ふかふかのベッドに、朝になったらタンザナイト
の声が起こしてくれて。
食事は一緒に食べて……。
いつしか当たり前になってしまった日常が恋しいと
思うようになってしまっていたのだ。
手紙など、書けるわけがない。
アメトリンは、策略が嫌いな方なのだ。
父のように賄賂で成り上がるのも、兄のように人を
見下して罠に嵌める行為をする人が好まれるわけが
ないのだ。
きっと、もう調べがついていたのだろう。
だから、兄のコーラルは人事から外されたのだ。
分かっている。
知っているからこそ、手紙なんて出せない。
出したとしても、きっとルベライトの信用が無く
なるだけなのだ。
別にアメトリンの信用なんてどうでもいい。
ただ、タンザナイト殿下に知られたくない。
アメトリンに取り入ろうとしたという行為が、タン
ザナイトを傷つけるのではないかと思うからだ。
「殿下………殿下………会いたい……です」
これまでどんなことがあっても泣かないと決めてい
たのに。
今は、涙が止まらなかった。
ただ、ひたすら会いたい。
その気持ちだけが、今のルベライトを突き動かして
いたのだった。




