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6話

地下牢に繋がれたままのルベライトは、わずかに差

し込む光で目を覚ました。


全身が痛みで軋み、動く事もままならない。

昨夜吊るされていた身体は今床に転がされていた。


肌のいたるところには血が滲み、みみず腫れにな

っている。


擦れるだけで痛みが走り、起き上がることさえで

きない。

食事を持ってきたメイドは薄い白湯と硬いパンを

置いて出て行った。


ここにはルベライトの居場所など始めからなかっ

たのだろう。

母親はあまり家に居つかず、父は方々に賄賂を流

して貴族の中の基盤を整える人だった。

王族に取り入る。

その為だけに必死になっている。


領内の民の税金は今年も上がったという。

これではつい反乱が起きてもおかしくはないだ

ろう。


「うぅっ……んっ…」


手を伸ばしてパンを掴むと横になったまま噛みし

める。

硬くて食べれたもんじゃなかった。

タンザナイト殿下と一緒にいた時は、いつも豪華

な食事が出て来ていた。


いつでも、食べる時は殿下が一緒にいてくれて、

一人になる時は寝る時くらいだった。


家では誰もルベライトを見ようとはしないし、こ

んな姿のルベライトを見ても、誰も庇う事はない。


「あーぁ。何してるんだろう」


薄暗い室内に自分の呟きだけが響く。


『家族だから大丈夫。』


タンザナイトに言った台詞だ。

今思えば、家族に何を期待していたのだろう。

闇属性と分かった途端に、冷たくなった家族の態度。

産んだ母親は、ルベライトの存在をはっきりと否定

したのだ。


『こんな子、私の子じゃないわ。きっと悪魔に子供

 を連れて行かれたのよ!私の子はあなただけよ、

 愛しいコーラル。たった一人の愛しい息子』


自分の属性が分かった日の出来事だった。

神殿でこっそりと鑑定したので、周りにも漏れる事は

なかった。

が、確かに親の態度が変わった瞬間だった。





     ♦︎♦︎♦︎





インペリアルトは屋敷の歪さになんとなくおかしさを

感じていた。

自分を嫌っているルベライトがいの1番に駆けつけ嫌味

でも言ってくるものだと思っていた。


しかし、全く姿すら見ていない。

使用人もなぜか活気がなく、ただ唯々諾々と仕事をこな

しているだけのように見えた。


「すみません、白湯を貰ってもいいですか?」

「はい……こんな時間にですか?」

「はい、喉が渇いてしまって……」

「あぁ、はい。分かりました。部屋にお持ちします」

「はい、ありがとうございます」

「はぁ〜………」


使用人は客の前だというのに、普通にため息を吐いた。

これは質が悪いというより、あきらかに躾がなっていない。


同じ子爵家でも、ここまで違うものなのかと不思議でな

らなかった。


インペリアルトはバルコニーに出ると、ふと下を歩く

メイドが目に入った。


何か食器を持ってどこかに向かっている。

それもこんな夜更けにだ。

あまりに怪しすぎる。


インペリアルトはすぐに2階のバルコニーから飛び降りる

と静かに後をつける事にした。


メイドは常に周りを気にしながらキョロキョロと確認し

てから、離れの奥に消えていった。


数分後、メイドは気が晴れたような顔で帰っていく。

手に持っていたお盆は別の食器を入れて戻ってきていた。


インペリアルトは訝しむと、こっそりと中を覗く。

中は暗く、誰も気配もしなかった。


客人として泊めてもらっている手前、ここで問題を起を

起こしてしまえば、もう弁解のしようもない。


だが、好奇心には勝てなかった。

そのまま中を見てから帰ろうと決意すると、奥へと向か

ったのだった。

中は下へと降ると、地下牢が両サイドに続いていた。


奥にはうっすらと光が漏れており、ジャララッと鎖の

音はときおり響く。


「誰かいるのか?」


静かな牢には今は誰もいないように見えた。

だが、さっきのメイドは確実に何かを届けに来ていた。

となれば、誰かが投獄されているという事だろう。


誰かが気になるインペリアルトはそのまま奥へと歩き

出したのだった。

そして一番奥に牢の中には痛々しい姿の青年が鎖に繋

がれたまま床に倒れていたのだった。

手前には先ほどメイドが運んできた食事が置かれている。


それはあまりに質素な、ものだった。

まるで物乞いにでも恵んでやるような食事だった。


使用人でも、もっとましなものを食べているだろう。


「おい、大丈夫か!君は一体……」

「……うぅ……」


全裸のまま身体中に鞭の痕が刻まれた青年は薄暗い

闇の中で微かにうめき声を上げた。


「おい、お前は……」


インペリアルト暗い手元を明るくする為に炎を灯し

たのだった。

そこに浮かび上がる黒髪の青年の顔を見て、絶句

する事になる。


その青年こそが、この屋敷の次男であるルベライト

本人にそっくりだったからだ。


貴族の次男がこんなところに繋がれているはずも

あり得ない事だが、食事も、この仕打ちも普通で

はなかった。


威張り散らしていたルベライトしか知らなかった

だけに、表の顔とのギャップが違い過ぎるのだった。


「………」


インペリアルトは即座に引き返すと部屋に戻ってきた。

部屋にはさっきメイドが来ていたのだろう。

水差しが置いてあった。


コップに水を汲むと一気に喉に流し込んだのだった。








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