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57話

黒き獣は確かに倒したが、先に放たれた分身である

狼達はそのままなのだ。


本体ほど強くはないが、それでも数がいれば脅威と

なる。


女神がはめていた指輪をはめるとルベライト自身が

薄く光った。


「ふざけんなっ!俺のを返せ!」

「断る。俺のは何故か壊れているようでな、転送

 されなかったんだ、理由を知っているか?」

「なっ、まさか平民の………」


一人の口から漏れた言葉に、ルベライトは即座に

気づいた。


平民のが壊れている事を知っている理由。

それはわざと壊れているのを知っている人物と

いう事になる。


「わざと壊したってことか……なら、自分達も

 同じ目に遭うべきだろう?」


ルベライトが彼らの腕輪をつけると、ルベライト

を認識したのか帰還までのカウントダウンが始ま

ったのだった。


「そうだったな、腕輪がないと危険でも即時帰還

 できないんだったんだな」


ぴくりと震える目の前の貴族にルベライトは勝ち

誇ったかのように言ってのけた。


この態度こそが本来のルベライト自身だろう。

傲慢で、平民を嫌うそんなルベライト。

だが、今は少し違う。


「俺は誰も差別しない、それが貴族であろうと平民

 であろうと、ましてや王族であろうとだ」


魔獣との戦闘になればカメラが作動する。

多分、彼らを救助に来る事だろう。


彼らが必死に身を守るのを眺めながら帰還を果たし

たのだった。


気丈に振る舞ってはいたが、まともに魔法を喰らっ

たせいか会場に帰還すると足がガクガクとして立っ

ていられなかった。


乱れた制服を治すでもなく座り込んだ。


「ルベライトっ!大丈夫か?」


すぐ側で聞こえるタンザナイト殿下の声に安心する

かのように身体を預けたのだった。



こうして無事進級試験が終了したのだった。

アカデミー側では一部平民の持っていた腕輪が即時

帰還ができないように細工されていた事に疑問を抱

いていたらしい。


ルベライトはあの後救護室へと運ばれると、気絶す

るようにぐっすり眠ってしまった。


側にはタンザナイト殿下がずっと付き添っていたと

後でシトリンが話してくれた。


実技試験は、主席と次席のシトリンとルベライトが

最高得点を取ったと持ちきりだった。


「あんな危ない戦いを教えた覚えはありませんが?」

「ですが、効率的で有効でした」

「言い訳はいいです、戦い方の基本は教えたつもり

 でしたけどね。なにも学んでなかったという事で

 すか?」

「いえ、そういうわけでは……」


アメトリンの側近騎士のインディゴライトからは

くどいほどの説教をされるはめになった。


その理由は、此度の戦い方の反省だった。

騎士科だけあって、ルベライトの剣技の荒さや、

悪い癖の修正指導や、敵との交戦の仕方など気配

の読み方など、色々教えてもらったのだ。


なのに、後ろから来ている気配にも気づかず、

ましてや魔法をまともに喰らった事が、気に入ら

なかったらしい。

油断は確かにしていた。


いつでも気を抜くなとあれほど言われたのにだ。

そのせいで昼休憩はずっとお小言を言われ続けて

いるのだ。


「聞いてますか?対人相手だと姑息な手を使って

 来る事もあるのです。魔法科と違って騎士の剣

 を持つならそれだけの覚悟をですね………」

「もう、いいじゃないか。ルベライトくんも反省

 しているようだし。それに見事に魔獣を倒した

 じゃないか」


アメトリンはにこやかに言うと、インディゴライト

を落ち着かせた。


「ですが、殿下……」

「君が教えたおかげかな」

「それは……まぁ」


褒められれば満更ではないらしい。

確かに、今回のルベライトの判断は悪かった。

もっと上手く立ち回っていればシトリンにも

危険な思いをさせずに済んだのだ。


「シトリン、ごめん。俺のせいで危険な目に合

 わせてしまった」

「ルベライト君のせいじゃないよ。それに貴族

 ってやっぱり平民を見下している人が多いの

 も事実だから。それなのにルベライト君は違

 った。僕の事を人として見てくれる、それだ

 けで僕は嬉しいよ」


やっぱり主人公は可愛いし、優しい子だ!

と心の中で思いながら不機嫌そうなタンザナイト

と目があったのだった。


タンザナイトはなにも話さないが、顔だけが不機嫌

である事を訴えていた。





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