55話
通年ならリタイヤ組みと、クリア組みが試験会場
を出てきている時間だった。
会場の上には大きなモニターが映し出され、そこ
には中で戦っている様子が映し出されていた。
魔獣討伐といっても狼のような形の魔獣で速さは
あるが一定の位置にある安全ゾーンには入ってこ
られない様な仕組みになっている。
それが村々の中央広場にある女神像だ。
魔獣が近づくと薄く光り、まわりに薄い膜をはる。
そこにいれば安全に討伐出来る仕組みになっていた。
ヒット&ウエイの戦い方がここでは最も有効な戦法
であった。
だが、それは生徒たちには話していない。
なぜなら、それを見つけることさえも試験のうち
だからだ。
ルベライトも女神像を動かそうとはしたが全く動
かせなかったので、諦めて破壊してきた。
そこで女神像が指に嵌めていた指輪を回収してきて
いた。
「あと少しだ!シトリン、もう少し頑張ってくれ!」
「分かった。大丈夫だよ、まだ魔力に余裕があるから」
そう言ってきたシトリンは常に作った球体の維持に
魔力を注いだ。
少しでも油断すると、窒息死させる前に水で作った
球体が解けてしまうからだ。
生きているモノには、誰にでも有効な手段なのだ。
前足をどちらも封じるとそのまま風魔法と土魔法
で周りを固め動けなくしてから、大きな岩を錬成し
ていく。
鋭く、もっと鋭く。
この黒き獣の身体を貫けるだけの硬さと破壊力を。
大きくなった岩を一気に突き刺したのだった。
大きな咆哮を上げると、地面に縫い止められ黒き
獣はそのまま動かなくなった。
ポイントはまだ入らない。
僅かながら生きているのだろう。
「まだ生きているな……」
「ルベライト君は、本当にすごいよ!いつのまにか
土魔法以外の風魔法も使えるようになったの?」
「まぁ〜な。」
これはシトリンが使えるようになる魔法なんだが…。
そう思いながらも、今は言葉を濁す事にした。
「さて、あとは首を落とせば終わりだ」
「あんな大きな魔獣を一人で倒せるなんて思わなか
ったよ」
「二人だろ?シトリンが奴の動きをずっと封じてた
からあいつはずっと動きが鈍かったんだ。そうじゃ
なかったら俺も危なかったんだ」
「そんな事は……」
照れるシトリンはやっぱり可愛い。
主人公だからだろう。
あぁ、こんな子を虐めるなんてどうかしてる。
そう思いながらかつてのルベライトを思い返して
いた。
止めを刺すと、腕輪にポイントが表示された。
1匹の討伐で規定ポイントに達したようだ。
あとは転送を待つだけだった。
カウントダウンが始まると、シトリンの腕輪のカ
ウントがいきなり止まったのだった。
「あれ?カウントが止まっちゃった」
「ん?俺のは動いてるが……。ちょっと貸して」
「いいけど、壊れちゃたのならどうしよう?」
不安そうなシトリンにルベライトは自分の腕輪を
渡した。
「止まっても大丈夫だろ。それに……」
言いかけた言葉はすぐに掻き消えた。
バチバチッと音がすると、身体が痺れて地面に倒れ
ていたのだった。
横でシトリンも同じように倒れている。
「!?」
いきなりでなにが起きたか判断できなかった。
すっかり忘れていたが、この昇級試験ではシトリン
が同学年の貴族から辱められるというエピソードが
盛り込まれていたのだ。
黒き獣を倒して喜ぶ時に、後ろから雷魔法で気絶さ
せられると、実は相方だった平民が裏切っていて、
シトリンを残し転送される。
そしてシトリンは不意打ちしてきた貴族によって…。
おいおい嘘だろ……このタイミングかよ…。
最悪のタイミングといえたのだった。




