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53話

どれほど待っただろう。

時間はそれほど経っていないのかもしれない。

剣を握る手が汗ばんてきていた。


隣にいるシトリンも緊張しているようだ。


魔獣を倒すなど実践は初めてに等しい。

そもそも、訓練で使われる訓練模型は魔獣であって

魔獣ではない。


当たった手応えもないし、近隣の森での実習も先生が

弱らせたものにとどめを刺すだけに過ぎなかった。


だから、自分たちで倒すという意味では初めての体験

と言える。

実際に戦闘をメインに授業で組み込まれるのは2年か

らがメインなのだ。

それも、夜戦とは最初にしては難易度が高い気がする

のだった。


「ルベライト君……僕でも戦えるのかな?」

「あぁ、しっかり練習してきただろ?攻撃魔法が苦手

 なだけで魔法自体は嫌いじゃないんだろ?」


ルベライトは声を顰めながら話した。


「うん、そうだね。僕は魔法で誰かを傷つけるのが怖

 いのかもしれない」


シトリンは頑なに攻撃魔法を使わないのには理由がある。

それは、初めて使った魔法で人に怪我をさせてしまっ

た事が原因だった。


それ以降はシトリンが使う魔法はサポート系のものが

多くなったのだった。


「大丈夫だ。俺がいるじゃないか」

「そうだね。ルベライト君がいるんだもん。僕も平気」


シトリンは震えていた手がいつの間にか止まっている

のに気がついた。


そんな時、地響きが起きたのだった。


「これは……」

「こっちに真っ直ぐ向かってきてるみたいだな」


ルベライトはしっかり偽装した罠を案じた。

すると、ガシャンッと大きな音が鳴り響くと、さっき

までは何もなかった場所に大きな巨体をした真っ黒な

獣が罠にかかって暴れていたのだった。


「シトリンッ!やるぞ」

「うん、任せて」


そういうと、シトリンが魔力を貯める。

彼に頼んだのは攻撃ではない。

ただ、同じ場所に一定の時間水を浮遊させる事だった。


これだけでは意味がわからないだろう。

だが、本当の目的は魔獣討伐なのだ。

実態のある魔獣なら水の中では生きられない。

なら、水の中に封じてしまえば問題ない。

それも身体を覆うほどの量はいらない。


ただ。頭部だけを閉じ込めれればいいのだ。


罠で動きを止めた黒き魔獣にルベライトは近づくと

罠にかかっていない方の足を狙って切り付ける。

もちろん、噛みつこうとするを避けると再び切り掛

かかった。


その間にもシトリンの魔法が魔獣の頭部を襲う。


「シトリンナイスだ。そのまま奴が動かなくなるま

 で頼むぞ」

「うん、分かってる」


魔獣も馬鹿ではない。

罠から抜け出そうともがくが、それ以上に息ができず

苦しくなってきたのか威嚇するように毛を逆立てた。


足元でちょこまかと切り掛かるルベライトをも鬱陶

しく思ってきているだろう。


空いている足の爪を何度もルベライトへと向けるが

避けられて傷すらつけられないでいた。

そのうちもう一つの足さえもガシャンッという音を

立てた罠へとかかったのだった。


「よし、これで動きは封じたな」


いよいよ窒息死が近いのだろう。

罠を強引に外そうとしていたのだった。





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