52話
さっきの逃げていった生徒が向かった先は物語りで
いうところのルベライトが封印を解いた場所だった。
彼がルベライトの代わりに封印を解いてそのまま食
べられる生徒だろう。
「本当に危険になったら転送されるんだな〜」
「さっきの人は……」
「転送されてったかな。多分無事だよ」
「そっか……よかった」
こんな状況でも、自分に危害を加えた人間の心配を
するなんて。
本当に主人公はお人好し過ぎる。
「そうだ!ルベライト君、僕分かったんだ!あのね」
そう言い出すと、シトリンはこの村が襲われた時間
が夜である事や、どの家でもテーブルを囲んで食事
をしている時間に襲われたのだと言った。
「そうだな、今度襲ってくるのも夕食時って事だな」
「そう!だから、そこで待ち伏せして……罠とか」
「いい考えだ。早速準備するか」
「うん」
夜になるとどこからとも無く襲ってくるようになる。
その場所が村外れの井戸から湧き出してくるのだ。
そして途中からは村の中央の井戸からも出てくる。
それに加えて、山奥の方から大きな黒い獣が来るは
ずなのだ。
それを知っているせいか、ルベライトは先に一つの
井戸を潰した。
そしてもう一つの最初に沸いてくる井戸に並々と水
を張ったのだった。
これで、来るとしたら、山側から洞窟一択になった。
「さぁ、罠を作るか!もう、日暮れまでに時間がな
いからな」
「そうだね。そういえばあそこの納屋に色々あったよ」
先程まで一軒づつ見ていたので、シトリンはある程度
何がどこにあるか知っているのだった。
縄や鎌、トラバサミを奥から取り出して来ると村の入
り口の方に仕掛けた。
「このままだと、バレバレかな……」
「そういう時はこうすればいい」
ルベライトは土魔法でぽこぽこと地面を凸凹にした。
歩きにくくはなるが、それは魔獣にとっても一緒だ。
暗い中で凸凹があれば罠とは思わないだろう。
あとは、近くで炭で藁を焼く。
「ルベライト君、どうして藁を焼くの?」
「あぁ、野獣は金属の匂いに敏感だろ?罠に気づかれ
ないように臭いを消しておかないとな」
「そっか、凄いよ!ルベライト君」
「さぁ、いつ来るかわからないから油断するなよ」
「うんっ!」
辺りも薄暗くなると、本当に視界が見えにくくなる。
ところどころに松明を置くと、シトリンとルベライト
は物陰に隠れた。
辺りには藁を焼いた炭の匂いが充満していた。
真っ暗になった頃、どことも無く獣の鳴き声がした。
まるで今から狩りに出るとでも言っているかのような
そんな鳴き声だった。
腹の底から出すその声は聞く者を恐れさせ、恐怖を撒
き散らすかのようだった。
闇よりも暗く、夜よりも黒い。
それは体長2mどころではない。
もっと大きく、凶悪な牙を持った魔獣だった。




