50話
誰がなんと言ったか。
それは誰かもわからない。
ただ、忠実なるこのしもべが主様の為に参ります。
黒き闇よりいでし黒き魔獣。
それはひっそりと森の奥に。
奥深くに眠っていた。
ただ、残虐に、残酷に。
ひたすらに人を食べ、食い散らかし。
そして同族の魔獣さえも手にかける。
♦︎♦︎♦︎
ワープ先は、荒れた農村だった。
「ここは………」
「なんか懐かしいなぁ〜。あ、畑だ!」
シトリンは自分の住んでいた村を思い出したのだろう。
リスポンした場所からさほど離れていない村へと足を
向けた。
「誰かいるかも、行ってみよう?」
「そうだな……。ここにいても仕方ないしな」
ルベライトはシトリンの指差す方へと行く事にした。
村は荒れ果て、誰一人いなかった。
家のドアは鍵すらかかっておらず、不用心だ。
「誰もいないのか?」
「どうかな〜、すいませ〜ん。誰かいませんかー」
シトリンは一軒一軒声をかけるが返事はない。
村は転々とあるのか、裏手には大きな山根が続いている。
ところどころに黒い染みがある家の内部はどこも壊さ
れていた。
「盗賊とは思えないが……」
「ルベライト君、これ見て!」
「これは……爪の痕か」
「結構多いよね?」
「そうだな、でも、いくつかあるって事は数匹は必ず
いるというところか…いや、それ以上か」
想像しただけでも嫌になる。
そう言えば、ここでシトリンを虐めるのに失敗した
ルベライトは山の奥に駆け込んだ。
そして大きな岩に巻き付くしめ縄を切って何かの封印
を解いた気がする。
「あれってたしか、大きな犬?」
「犬がどうかしたの?」
シトリンにはわからなくて当然だ。
ルベライトが知っているのは本来のストーリーでの話
なのだ。
それも、ルベライトは最後まで内容を知らない。
「少し見回ってくるから。シトリンも気をつけてくれ」
「うん、僕もこの辺の家の中を見回ってくるよ」
「あぁ、何かあったら、すぐに呼べよ」
「大丈夫だよ。行ってらっしゃい」
「あぁ」
ルベライトはその場を離れると、まずは井戸を確認する。
上にあった桶を下に投げ入れる。
ぽちゃんと音がしてまだ水があるのがわかる。
そして次の井戸を探すと同じように桶を投げ入れた。
カラーンッ……コンコンッ……。
「ここか!」
ルベライトはすぐに桶のロープを伝って下へと降り
たのだった。
「結構暗いな……」
光る鉱石に魔力を込めるとほんのりと明るくなった。
魔力を流した分だけ光り続ける性質があるので、それ
を紐で縛ると首からかけた。
井戸の下に着くと上を見上げる。
結構高い事が伺える。
そして、横につながった道。
確か、ここを通って出てくるとあった気がする。
「早く奥へ進まないと…」
そう思うとルベライトは奥へと急いだ。
この奥に広い場所がある。
そこに繋がる道は2つあるのだ。
そのうちの一つが井戸に繋がっている。
だから、初めからそれを一つしかないようにしてし
まえばいいのだ。
村外れの洞窟からと、村の井戸からの両方から攻め
られては戦う方も難しいのだ。
ルベライトはそのまま奥の通路まで来ると、急いで
土魔法と水魔法を使って粘土状の土でセメントを作
る要領で塞いでいく。
あたかも初めからそこには通路がなかったかのよう
にするのだ。
「あとは、凸凹の岩肌をつければ完成だ」
見た目だけならただの一本道にしか見えなくなった。
さっききた道を戻ると、ロープを伝って上に這い出て
くる。
「くぅ〜……手が痺れるぜ」
古いロープだったから切れないか気が気じゃなかっ
たが、無事戻る事ができて一安心だ。
そんな時、村の入り口の方が騒がしくなっていた。
「シトリン?……まさか、何かあったのか?」
そう思うとルベライトはすぐにさっきシトリンと別
れた場所へと急いで戻ったのだった。




