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45話

タンザナイトに連れられて馬車に乗り込むが、さっき

まで普通に手足のあった女性の腕がいきなり千切れ落

ちたのだ。


それも目の前で、ぼとりと落ちたのだ。

それを見た瞬間、吐き気が込み上げてきたのだった。


まるで自分の腕を落とされたような気さえした。

自分の最期を思い出す。


最後まで暴れたルベライトは押さえつけられて、首

をはねられたのだ。


真っ赤に染まる視界の中で、自分の名を叫ぶタンザ

ナイトを必死に眺めていた。

そして、タンザナイトもまた動かぬ屍となったのだ。


それを思い出すだけで、震えが走った。


「大丈夫か?ルベライト……」

「……」


ただ、頷くだけで精一杯だった。

兄のコーラルはタンザナイトさえも追い落としたい

ようだった。


多分、父の指示だろう。

兄が一人でやるとは思えないからだ。


屋敷に着くと、いきなりふわっと持ち上げられる。

見ると、タンザナイトの腕の中に収まっていたの

だった。


「殿下っ、このような事は……」

「体調が悪いのだろう?少しは私を頼るがいい」


そう言うと、ルベライトを軽々と抱き上げて馬車

から降りると歩き出したのだった。


タンザナイトの執務室へと来るとソファーに降ろ

される。


「ここで少し待っていてくれ。暖かいものでも入

 れさせよう」

「まっ……」


さっきの場面がフラッシュバックして一人になり

たくなかった。

別にやましい事があるわけではない。

ただ、不安になっただけだ。


自分に言い聞かせると、タンザナイトの服を握って

しまっていた自分に気づく。


「あ……これは……」

「いいよ、私を頼ってくれていると思うと嬉しいよ。

 おいで」


そう言われると、身体ごと引き寄せられるとぎゅっと

抱きしめられる。

今はそれがどれだけ心強かったか…。

ただ、人の温もりを感じるだけで、緊張が解けていく

気がしたのだった。


昔のルベライトもそうだったのだろう。

タンザナイト殿下を誰にも渡したくなかったのかも

しれない。


ぽっと出の平民に取られるなんて許せなかったの

だろう。

でも、今は違う。


シトリンも、タンザナイトも幸せになってほしい。

最期に処刑など見たくはないのだ。


「殿下………聞いて欲しい事があります」


そう言うと、さっきまでの話をタンザナイトの前で

打ち明けたのだった。


これは、お家取り潰しにもなりかねない話だ。

もしかしたら、兄のコーラルも、ルベライト自身で

さえも。


そう思って言えなかったが、このままでは同じ事が

何度もで起こるだろう。

それだけは防がねばならない。

ましてや、タンザナイトに迷惑などかけるわけには

いかないのだ。


「俺は……殿下のお荷物にはなりたくありません」

「ルベライト……よく話してくれたね。でも、それは

 違うよ」


タンザナイトにとって、家を取り潰す事は造作もない

事なのだ。

だが、ルベライトだけは手放せない。

何があろうと、もし平民に落ちてしまったとしても。


「親の罪は子供に背負わせないようにするのは王族の

 特権だよ?なんとでもなるさ。それに、まだ今じゃ

 ない。そうだろう?」

「ですが……」

「分かっている。これ以上動かれないようにこちらで

 なんとかしよう」


タンザナイトは落ち着いて聞いてくれたし、今も平然

としていた。

あの時はどうしてあんなに怒っていたのだろう?


いつもルベライトの前では優しそうな笑みを浮かべて

くれているというのに……。








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