43話
今日も授業を終え、シトリンと別れるといつもの様に
アカデミーの中庭に来ていた。
ここはタンザナイトのお気に入りの場所だった。
先に来ていたアメトリンがルベライトを見付けると
手招きしてきた。
「アメトリン殿下…どうしてこちらに?」
「少し、話がしたくてね。君に恥をかかせて喜ぶ人物に
心当たりはあるかい?」
確信をついてくる人だ。
ここで隠しても、意味はあまりないだろう。
「そうですね。多すぎて困りますね」
「君はまるで人が変わったみたいだよ。昔の君だったら
タンザナイト以外には噛み付く勢いで威嚇していただ
ろうね」
「その分、大人になったという事ですよ」
「いやはや、数年でね………、まぁそういう事にしてお
こうか」
「………あの、兄はどうなりましたか?」
ふと、思いついた事を口に出してみた。
確か父が兄のコーラルをアメトリン殿下の側に置くと
言っていたが、全く見かけたことがないのだ。
「気になるかい?」
「いえ、父は兄の事を優秀な人間だと言っていたので」
「優秀な………か。弟の失態を願うのが優秀な兄のや
ることかな?それなら、僕のそばにはいられないな」
アメトリンの言葉にはどこか棘がある気がした。
「兄の指示だと思っているのですか?」
「そうだね。あの日いたメイド達は僕の側にいる子達
だったんだ。タンザナイトの側にいるメイドだった
ら、君に害すれば自分の身が危険だと分かるはずだ
からね。でも、そうでない者もいたんだ」
アメトリンの言いたい事はなんとなく理解した。
「お金に困っていたという事ですか?」
ルベライトの言葉ににっこりと微笑むと、指をパチン
と鳴らした!
すると、後ろの控えていたインディゴライトの横には
あの時に見かけたメイドが拘束されて現れたのだった。
「彼女はあの時いた……」
「そうだったね。君のお茶に媚薬を混ぜた犯人だよ。
タンザナイトに任せておいたら、きっと処刑して
しまうかもしれないからね。こちらで拘束してお
いたのだよ」
「そう………ですか」
アメトリンの目が笑っていない。
笑顔に見えるのに、その目の中はあきらかに不機嫌
そうなのだ。
「さぁ、話をしようか?」
そういうアメトリンに怯えるメイドの女性。
拘束はそのままに口だけ自由にした。
「君はルベライト君に媚薬を仕込んだ。そうだね?」
「………はい」
「それを指示したのは誰か言えるね?」
「いつも屋敷に来ている紳士的な殿方です。私の事
もいつも気遣ってくれて、ブラウンの髪の赤いク
ラバットをよくしてらっしゃいました」
「赤いクラバットですか…兄がよく好んで付けてい
きますね」
彼女は兄のコーラルがアメトリンの屋敷に出入りし
ている時に出会ったのだという。
そして、いつも気にかけてくれて恋人気分でいたら
しい。
そして、いきなり頼まれた媚薬は自分の弟であるル
べライトへ使うようにと言われたらしい。
「しかし、身内に媚薬を盛れというのは流石におか
しいとは思わなかったのかい?」
「それは………性格に問題ありだから、殿下の側に
いられないようにしておかなければ取り返しのつ
かない事になると……」
「そうか、そうだろうね。ルベライト君の失態はひ
いてはタンザナイトにも……おや、来たかい?」
そこで言葉を途切らせると、アメトリンは振り返っ
たのだった。




