4話
姿見を覗いみて、第一声が『誰だ…?』だった。
まさに、その通りなのだが。
鏡に映る自分の姿に全く見覚えがないからだった。
いきなりドアが開くと、そこには白髪の老人と茶色
の髪の青年が立っていた。
「ルベライト、お前はまたなんて事をしてくれたん
だぁ?あれほど揉め事を起こすなと言っていたと
いうのに」
「………」
「黙ってないで弁解でもしてみろ?父上の顔に何度
泥を塗れば気が済むんだ?この恥晒しがっ!」
黙って聞いていれば言いたい放題に言ってくるこの
青年は一体だれなのだろう?
「俺が何をしたっていうのですか?」
「何をって……お前ぇ〜………」
怒りを露わにする青年に、横から執事風の衣服を着
た老人が心配そうにしていた。
「ルベライト坊ちゃん、昨日は全身火傷が酷く皮膚
が焼け落ちもう助からないと思われたのですよ?
旦那様がお高い治療費を払われて治癒師を連れて
きてくださったので助かりましたが、このような
危ない事はなさらないで下さい」
記憶の奥底で一枚の絵が思い浮かんだ。
それはシトリンに悪戯半分で魔法を使ったら逆に
シトリンを護ろうとしたインペリアルトに逆に反
撃されて炎で焼かれたルベライトの姿だった。
「そうだ!俺はインペリアルト・パーズに……」
あの熱さと痛みは本物だった。
息ができなくなるくらいに熱くて、今も皮膚の焼け
た臭いがする気がした。
「学年首席を取られたのが悔しくて虐めたなんてみ
っともない」
「学年首席?……」
そういえば、八つ当たりでシトリンを虐めていた気
がする。
どうしてあんなに虐めてたんだっけ?
今思い返しても全く分からなかった。
そもそも、勝ち目のない事なのだ。
シトリンはこの物語の主人公で、成績優秀な平民と
いう設定だったはず……。
設定…………。
自分で思った事のはずが、どうにもしっくりこない。
兄のコーラル・ファールマンを無視すると考えに耽
ったのだった。
何かを思い出せそうであったが、後ちょっとという
ところで肝心な事が思い出せないのだった。
兄はガミガミと言って来ていたが、無視すれば問題
ない。
(なんだったかな〜、何か大事な事だったはずで…)
思考を巡らせながらふと、自分の顔をじっと眺めた。
そして、ふと思いつく。
(ここは小説の世界だ!そうだそうだ、確か出勤時に
呼んでたネット小説の舞台に似ているのだ)
挿し絵のルベライトやシトリン、攻略対象として出て
きたタンザナイト殿下とアメトリン殿下、その側近の
インディゴライト先輩とアレキ先輩。
そして主役の幼馴染みという設定のインペリアルトが
主な攻略者だったはずだ。
「まさか……そんな……」
(まさか、あの小説だよな……だったら最後まで……読
んでないぞ!)
出勤途中にいつも電車の中で読んでいた。
あの日もいつものように本を読んでいたはずだ。
それは突然襲ってきたのだった。
覚えている断片的な記憶は、いきなりの振動と、投げ
出された時に、咄嗟に受け身を取った事だった。
「あれ?だったら俺の身体はいったい…」
「おい、聞いてるのか?」
煩い兄からの言葉を無視し続けると物思いに
耽っていると急に痛みを感じた。
床に転がる自分にルベライトは、今兄のコーラルに殴
られたのだと自覚したのだった。
「どうして……」
「どうしてだと?自分がしでかした事をなんとも思わ
ないのか?首席で入学すると豪語しておいて、あの
ていたらく。その上、実力でも劣るとは…情けない」
「……」
「そんな愚弟を持つ僕は本当に不幸だよ。父上も苦労
するものだ。しかも、闇属性など……恥をこれ以上
晒すな!その魔法は人前で使うなど言われただろう」
やはり、この髪の色と目の色は魔法の属性を示して
いるようだった。
そして嫌になるほどこの世界での黒というのは闇の
魔力を言うらしかった。




